4日間かけて7時間・574カットの試合シーンを撮影 ――試合のシーンに関して横浜さん、窪田さんのエピソードを教えていただけますか?「4日間かけて7時間、574カットで試合シーンを撮影しました(制作調べ)。プロボクシングだ…
画像ギャラリー井上尚弥選手の勝利の興奮が冷めやらない日本のボクシング界。日本映画の世界も今、ボクシングで盛り上がっています。8月25日公開の映画『春に散る』は、主人公のボクサー黒木翔吾役を演じる横浜流星さんが作品の撮影をきっかけに競技にのめりこみ、プロボクシングライセンス(C級)を取得するなど公開前から話題です。
元世界王者など超豪華メンバーが撮影に参加!
同作品では元世界王者の内山高志さん、帝拳ジムの田中繊大トレーナーがボクシング監修を務めるほか、元世界王者の山中慎介さん、プエルトリコの名ボクサー、ミゲール・コットと戦った亀海喜寛さん等、ボクシング関係者にはおなじみの方々もゲスト出演しています。
そんな中、元プロボクサーの経歴を持ち、現在、俳優として活動する武田祐一さん(38)も出演。黒木のライバル・中西利男(窪田正孝さん)のトレーナー役として試合をサポートします。また、武田さんは俳優業と並行して、実際のボクシングトレーナー業にも就いており、テレビドラマなどでボクシングシーンの演技指導もしています。
本作では試合シーンも3つ描かれており、プロボクシングの試合さながらの迫力で表現されています。ボクシングと俳優業の両方で、プロの世界を知る武田さんに見どころを訊きました。
作品のあらすじ
40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市さん)。引退を決めたアメリカで事業を興し成功を収めましたが、不完全燃焼の心を抱えて突然帰国します。かつて所属したジムを訪れ、今は亡き父から会長の座を継いだ令子(山口智子さん)に挨拶した広岡は、今はすっかり落ちぶれたという二人の仲間に会いに行きます。
そんな広岡の前に不公平な判定負けに怒り、一度はボクシングをやめた黒木翔吾(横浜流星さん)が現れ、広岡の指導を受けたいと懇願。そこへ広岡の姪の佳菜子(橋本環奈さん)も加わり不思議な共同生活が始まります。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん一度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく、というストーリーです。原作は沢木耕太郎さんの同名小説です。(公式ホームページより)
武田さんに訊く撮影秘話!熱狂の試合シーンは必見
――武田さんはどのような役どころでしょうか?
「中西のトレーナー役ということでセコンドとして試合の場面で入場シーンや、試合のインターバルのシーンでアドバイスを送っています。試合シーンでもリング下のかなり近い所からサポートをしていました」
――元プロボクサーの目線からご覧になって、試合のシーンはいかがでしたか?
「横浜さんは撮影後、プロライセンスも取られましたが、元々、極真空手のチャンピオンになられたこともありましたし、窪田さんも映画『初恋』、『ある男』とボクサー役として続けて出演されていて、撮影スタート時点からレベルが相当高かったです。複雑なコンビネーションを体現し、互いが攻防する姿は本物のボクサーみたいでした」
4日間かけて7時間・574カットの試合シーンを撮影
――試合のシーンに関して横浜さん、窪田さんのエピソードを教えていただけますか?
「4日間かけて7時間、574カットで試合シーンを撮影しました(制作調べ)。プロボクシングだと一番長い試合でも12ラウンド36分(インターバルを除く)ですが、実際の試合とはまた違う過酷さですね。日を跨ぐ撮影な上、上半身を見せる撮影なので、選手役の二人は変化が無いよう、この4日間、体形を維持し続けたのは本当に尊敬しています」
――4日間も!
「4日かけて試合を一つの映像にしなければならないということで、出来上がったものに違和感があってはいけないですし、すごく緊張感がありました。でも、カメラが回っている間は本当の試合と同じような盛り上がりがあって…。試合のシーンは20分少々ありますが、映像を見た時、すごく良い作品、良い場面に参加させていただいたなと思いました」
――試写を拝見しましたが、選手二人がラウンド終了のゴングが聞こえず、レフェリーとセコンドの武田さんたちに止められる場面が印象的です
「実はあのシーン、本当のボクシングの試合みたいにゴングが聞こえていなかったんです。観客役のエキストラの皆さんの応援も凄くて、本当に会場全体が熱狂して、止めに入るのが遅れたほどでした」
――その試合シーンを盛り上げるボクシング関係者の方たちも豪華ですね
「黒木選手のトレーナー役にはエディ・タウンゼント賞を受賞された、今やボクシング映画の指導では欠かすことのできない松浦慎一郎さんも出られていましたし、あとはレフェリーの福地勇治さん、リングアナの冨樫光明さんと、実際のボクシングに携わっている方たちの存在感も大きかったです。ボクシングを知っている方がご覧になると、細かな部分でも色んな発見があるのではないでしょうか」
――観客の声援も印象的でした
「会場での観戦にはエキストラの方たちが4日間で約1600人参加いただいたようです(制作調べ)。試合会場も熱狂的なのですが、世界戦を応援する居酒屋さんのシーンも、また凄く熱くて。味のあるお店に味のある俳優さんたちが集って、応援の熱が画面から伝わってくる位、凄くて。闘っているボクサーはもちろん、応援している人たちの熱もこの映画を熱くする大きな力になっていたと思います」
――武田さんにとって映画『春に散る』の魅力を教えてください
「今に命をかけて、命を削って試合をするボクサー。それに命をかけて体現したボクサー役の俳優たちが魅力です。熱い試合、ドラマ、是非、映画館で命を懸けた熱を感じて下さい。(作中に練習場所として、坂が登場するのですが)自分がボクシングをしていた時に何度もロードワークで走った坂のことを想い出し、ジーンときました」
武田祐一(たけだ・ゆういち)
兵庫県出身。1985年5月27日生まれ。俳優・ボクシングトレーナー。
プロボクサーとしては2014年にファイティング原田ジムよりデビュー。映画『東京ウィンドオーケストラ』のほか、ボクシング作品では『ケイコ目を澄ませて』『アンダードッグ』に出演した。俳優業とともに作品のボクシング指導も行っており、日本テレビ系のドラマ『だが、情熱はある』で指導を担当した。
文・写真/おとなの週末Web編集部、劇中写真/(C)2023映画『春に散る』製作委員会