東京・六本木といえば、バブル期の夜の賑わいを思い出す昭和世代の方も少なくないでしょう。近年では、独創的なスープを使用したラーメンの行列店が話題になるなど、新旧が点在するラーメン激戦区としても注目を浴びているようです。そし…
画像ギャラリー東京・六本木といえば、バブル期の夜の賑わいを思い出す昭和世代の方も少なくないでしょう。近年では、独創的なスープを使用したラーメンの行列店が話題になるなど、新旧が点在するラーメン激戦区としても注目を浴びているようです。そして、熊本・益城町で1972年創業の『富喜(ふうき)製麺所』から始まった言わば“麺のプロ”が展開する『富喜製麺研究所 六本木店』が2023年8月4日にオープンしました。東京初進出にこの街を選んだ理由と、人気のつけ麺をご紹介します。
老舗ラーメン店と個性派新店が鎬を削る六本木
都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線が通る六本木駅周辺には、店頭に置かれたドラム缶が目印の『天鳳』や釜炊き豚骨スープの『博多麺房 赤のれん 西麻布本店』など、1970〜80年代から続く名店が残り、変わらぬ味を求めるファンの胃袋を満たしています。
一方で、名古屋コーチンや伊勢海老といった高級食材を使用した“カルテットスープ”で話題を呼び行列の絶えない『入鹿TOKYO』など、他店との差別化を図る新店も多く見られるようになり、生き残りの難しいといわれるラーメン店が新たな挑戦をする場所となっているようです。
『富喜製麺研究所 六本木店』は、六本木駅から洋菓子と喫茶の店『アマンド』のある交差点を東京タワー方面へ渡り歩いて3分ほどの場所にあります。歩きながら辺りを見渡すだけでも、『一風堂』や『AFURI』、『麺匠 竹虎』など同業店が目立ちます。
ビルの一階にある店内に入ると、麺を入れるのに使用していたという年季の入った木箱や製麺所の作業風景などが写ったパネルが飾られており、「麺」を長きに渡り作られてきたという信頼感と期待値が高まります。
『富喜製麺研究所 』を始めたのは、富喜製麺所 3代目・村上誠一郎さん。製麺所敷地内の倉庫を改装して2021年に1号店をオープンすると、瞬く間に人気店となりました。県外初となる出店場所をラーメン店のひしめく都会の一等地・六本木に店を構えた理由について、村上さんはこう答えてくれました。
「コロナ禍が開けて経済行動が活発になったことと、来年から本格的に海外進出を目指しているため、日本の中心地であり海外の方も多い街への進出は、フラッグシップ(企業の顔となるような代表となるお店)的な意味があります」
同業店が多いことについては、全く意識してないという清々しいほどの回答に、味に対する自信の強さとプライドを感じます。
藻塩で際立つ麺とスープのすごさ
お店の看板商品で一番人気の「鰹昆布水 のどごし生麺」(1300円)は、国産全粒粉入りの平打ち麺と魚介醤油ベースのつけ汁で味わうつけ麺です。麺は、最高級品といわれる鹿児島産本枯れ節と北海道産羅臼昆布でとった澄んだスープに浸った状態で供され、その艶やかさは唸るほどの美しさ。
先ずは、出汁をまとった麺だけをそのまま口にすると、つるんと滑らかな喉越しに感動!ラーメンの麺とひとくくりにはできない“綺麗な味”に、このままずっと食べ進めてしまいそう。出汁は鰹の風味がふんわり香り、昆布のまろやかな旨みが麺をコーティングしているかのようです。スープに浸っている麺を初めて食べましたが、みずみずしくて時間が経っても箸ですくいやすかったです。
阿蘇の天然水と熊本産「ミナミノカオリ」など5種類の小麦をブレンドしている平打ち麺は、魚介に合わせることの多いイタリアのパスタ・リングイネのように絶妙な厚みと食感で、テーブルにある藻塩をつけたときに爆発的なおいしさを発揮します。
つけ汁は、凝縮した魚介と醤油の風味が立つすっきりとした後味で、冷製だからか蕎麦と辛口の蕎麦つゆのような関係に似ています。濃厚で甘めのつけ汁が苦手という方も、ここのつけ汁を食べれば概念が変わるかもしれません。すだちや、鰹昆布水と合わせるなど、オススメの食べ方もわかりやすく書かれた案内もあり、味変ができるのもポイントです。並は200g、大盛は300g(+150円)と食べ応えもあり、冬季は温かいつけ汁に変わるそうです。
メニューは、ほかに中太麺か極細麺が選べる中華そば(1200円)と太麺を使用した『罪なき二郎』(1500円)の2種類あります。中華そばは、豚の背ガラやゲンコツ、香味野菜でとったスープを使用した魚介醤油ベースのややがっつり系。丸みのある中太麺は、モチッとした弾力でコクのあるスープがよく絡みつきます。昔ながらのあっさり醤油が好きな方でも食べやすく、どこか懐かしさを感じるおいしさです。
麺によって全く異なる旨さを楽しめるのは、“麺のプロ”でなければ実現できない大きな強みだと他店との大きな差別化を実感しました。焼き豚丼(580円)やおつまみ、アルコールもあるので、がっつり食べたい時も、ちょい飲みの〆にも、満足できる一杯が見つかりそうです。
『富喜製麺研究所 六本木店』
【住所】東京都港区六本木3-13-10
【営業時間】11時〜16時/17時〜6時(5時半LO)※スープ、麺が無くなり次第終了
【休日】なし
【電話】03-6447-1140
【交通】都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩3分
【席数】カウンター、テーブル席合わせて17席
※食券購入/支払いは現金、カード(VISA・Master・JCB・ダイナース・AMEX)
文・写真/大島あずさ
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