ビール離れに危機感を持ち、アルコール度数控えめ 「ネオンドリーム」と「MASH UP IPA」は、低めの度数ということもあって、確かに飲みやすかった。狙いは、何なのか。 ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン(東京)の岡田…
画像ギャラリー英国発の人気クラフトビール「BREWDOG」(ブリュードッグ)に、新たなラインナップが加わった。2023年10月17日から発売された「NEON DREAM(ネオンドリーム)」と「MASH UP IPA(マッシュアップ アイピーエー)」。この2つの新商品に共通するのは、「4.5%」という低めのアルコール度数だ。「初心者でも飲みやすい」「親しみやすい口当たり」に仕上がったという新しい味をリポートする。
日本初上陸「NEON DREAM(ネオンドリーム)」はトロピカルで上品
ブリュードッグといえば、定番の「PUNK IPA(パンクIPA)」(5.4%)にみられるように、度数が若干高めのイメージ。大量のホップを使ったIPAというビールのスタイルは、ホップの香りや苦みが強く、一般的に度数も高め。ブリュードッグのラインナップのひとつでIPAの「ELVIS JUICE(エルヴィス・ジュース)」は6.5%もある。
ただ、今回新たに発売された「ネオンドリーム」はIPAではなく、「Tropical Wheat」というスタイル。「パイナップル、マンゴー、パッションフルーツなどのトロピカルなフルーツに、小麦の風味を加えた、まろやかで上品な味わい」(ニュースリリースより)のビールだ。
実際に味わってみる。グラスに缶を傾けると、濁りを残した美しい黄金色の液体が注がれていく。いわゆるヘイジー(霞んだ)な色合いだ。顔を近づけると、トロピカルフルーツを思わせる甘い香りが鼻孔をくすぐった。
口に含む。宣伝文句にあるように、パイナップルやマンゴーなど熱帯系のフルーツを強く想起させる味わい。とてもジューシーでまろやか、ビール特有の苦みが気にならない。低めの度数とあって、ごくごく飲める。これなら、普段はビールに食指が動かない層にも受け入れられそうだ。
ネオン管をあしらった紫が基調の色鮮やかなデザインも、若者の注意を引きそうだ。
実は、ネオンドリームは2023年春以降、海外ではすでに発売済み。英国をはじめデンマーク・フランス・ギリシャ・香港・イタリア・タイ・ウクライナで商品展開され、「クラフトビール初心者でも飲みやすい」と好評だったという。
同社によると、苦みを表す単位のIBUは15。パンクIPAが40で、日本の主要なビールは20前後とみられるため、数字の上でも“ビール初心者”にやさしいことがわかる。
人気ロックバンド“マンウィズ”とコラボ
一方の「MASH UP IPA」は、日本限定の新フレーバー。「より多くの人々が音楽と共に楽しむクラフトビール」をコンセプトに、人気ロックバンド「MAN WITH A MISSION(マン・ウィズ・ア・ミッション)」とのコラボレーションで開発されたビールだ。
商品名にあるように、こちらはIPAスタイル。ただ、「食中酒にもぴったりなフレッシュなオレンジを感じる親しみやすい口当たりのビールに仕上がっている」(ニュースリリースより)という。
ネオンドリームとは異なり、ラガータイプのようなクリアな黄金色。やや、琥珀色というべきだろうか。美しい色合いだ。
味わいも、日本のラガータイプに近い印象。すっきりしていて、飲みやすい。もちろん、IPAだけに、特有の柑橘系フレーバーが口の中に広がる。ただ、苦味はIPAとしては抑え目で、ネオンドリームと同じIBU15。オレンジ―ピールのような爽やかな苦味が魅力だ。
名称の「MASH UP」は、「音楽業界で使用される“複数の楽曲をミックスして新しい楽曲を生み出す手法”を表する言葉であるとともに、彼らの2ndフルアルバムのタイトルおよび収録曲にも使用されていた言葉から引用した」(ニュースリリースより)という。
紫と黒を基調としたデザインの缶には、「さぁ、世界を変えてやろう。」という文字も。常に挑戦を続けているブリュードッグの姿勢と重なるストレートなメッセージが格好いい。
ビール離れに危機感を持ち、アルコール度数控えめ
「ネオンドリーム」と「MASH UP IPA」は、低めの度数ということもあって、確かに飲みやすかった。狙いは、何なのか。
ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン(東京)の岡田卓也アシスタントブランドマネージャーは、次のように話す。
「若い方の間で、ビール離れが進んでいると言われて久しい。ビールを飲まない方、飲めない方が多いということに、ブリュードッグとしても少し危機感があった。そこで、ネオンドリームは、ごりごりの苦いビールではなく、ヴィヴィッドなパッケージを使って、トロピカルな香りのビールにすることで、普段ビールを飲まない方にも、あまりお酒に強くない方にも楽しんでいただきたいという意味を込めた」
「MASH UP IPA」については、ファンの声を意識したという。
「『マンウィズ(MAN WITH A MISSION)缶が発売されるけど、わたし、お酒飲めないからな』という声もSNSで多く見られた。比較的アルコール度数を控え目にして、マンウィズのファンの方にも楽しんでいただきたいということで4.5%にした」
ブリュードッグは2023年、新フレーバー「HAZY JANE GUAVA(ヘイジージェーン グアヴァ)」の投入やイベントなどさまざまな戦略を展開してきた。プロ野球・埼玉西武ライオンズの本拠地「ベルーナドーム」(埼玉県所沢市)に、今シーズンから開いた世界初の球場内オフィシャルバーでは、3月から7月までに1万人を超える客が訪れたという。
そのような努力が実り、2023年1~7月の売上は前年同期比で150%、ブランド認知率は、同社がターゲットにしている30代で前年比5ポイントもアップし、約20%になった。
ブリュードッグ・カンパニー・ジャパンが扱う商品ラインナップはこれで6種類(2023年10月時点)。従来の層よりターゲットを広げた今回の2種類は、新たなファン獲得に大きく貢献しそうだ。
文・写真/堀晃和
【ネオンドリーム】
330ml、参考小売価格438円(税込)
2023年11月末まで、本州・四国の「イオン」「イオンスタイル」「イオンリカー」各店舗で先行販売し、12月から全国販売を予定
【MASH UP IPA】
330ml、参考小売価格438円(税込)
全国のスーパーマーケットやコンビニ、酒店などで発売