短期連載「逆転合格!中学受験」の第7回は、冬休みが近づくこの時期に保護者から寄せられる疑問に答えます。「冬期講習や正月特訓は受けるべきなのか」。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏の見解…
画像ギャラリー短期連載「逆転合格!中学受験」の第7回は、冬休みが近づくこの時期に保護者から寄せられる疑問に答えます。「冬期講習や正月特訓は受けるべきなのか」。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏の見解は―――。
冬休みは冬期講習か個別学習か
中学入試がいよいよ目前に迫ってきました。2024年の関西2府4県(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県)の私立中統一入試日は1月13日、千葉県・埼玉県の入試解禁日は1月10日、東京都・神奈川県の入試解禁日は2月1日となっています。関西や千葉・埼玉の中学の受験生にとっては、この冬休みが“最後の追い込み”となります。
冬休みが近づくと、「塾の冬期講習や正月特訓は受けた方が良いでしょうか?」という質問を受けることがあります。模試や過去問演習でまだ合格ラインに達していない生徒さんにとっては、この冬休みに失敗するわけには行きません。もっとも合格する可能性の高い道を探ろうとするのも無理はありません。
合格可能性が60%を超えている上位層は、冬期講習・正月特訓でさらにレベルアップを図ると良いでしょう。しかし、「基礎力に不安がある」、「苦手分野が残っている」、「模試での合格可能性が50%に満たない」など、何らかの懸念材料を抱えている方の場合は、一律のカリキュラムで行う冬期講習・正月特訓に参加するより、懸念材料の解消にしぼった個別最適な学習を行う方が、合格に近づけるものと思います。
塾の冬期講習・正月特訓を受けなかった成功例も
2022年度、首都圏に住む中学受験生A子さんは、塾の冬期講習も正月特訓も受講せず、自宅学習で受験勉強を進めました。自宅学習とは言っても、科目ごとに家庭教師が付き、毎日数名の家庭教師が入れ替わりで授業を行っていました。まるで塾の講習が家庭で行われているかのような状況でした。もちろん、志望していた複数の女子中学校に無事合格しました。
A子さんの場合はかなり恵まれたレア・ケースだと言えます。同じ講師が教えるなら、集団授業より個別指導(家庭教師を含む)の方が効果が高いのは当然です。しかし個別指導は指導料(時間単価)が数倍高くなるため、通常は集団授業塾に通い、必要な場合に個別指導を組み込むというケースが普通です。また、集団授業塾に通わず個別指導だけで学習する場合は、基本的に自学自習で演習を進め、必要な部分を個別指導で教えてもらう、という形式が一般的です。
膨大な勉強量の「冬期講習」、塾以上の勉強も可能な「個別指導」
冬休みの勉強の仕方としては、集団授業塾の「冬期講習・正月特訓」に参加するか、個別指導と自学自習(個別学習)で必要な勉強を独自に進めるかのいずれかだと思います。ただしここで言う「個別指導」とは、個別指導塾や家庭教師による指導のことを指します。親御さんが勉強の指導をする場合もこれに含めます。なお、小学生が塾や家庭教師の指導を受けずに一人で受験勉強するというのは現実的ではないので、ここでは除外します。
冬期講習・正月特訓に参加する一番のメリットは、膨大な勉強量をこなすことが出来るということです。ある集団授業塾の場合、冬期講習と正月特訓をすべて受講すると、約2週間の冬休みの間、ほぼ休みなく毎日6時間以上勉強することになります。
一方、個別学習のメリットとしては、志望校対策や弱点克服などにしぼった最適な学習が可能であることです。また勉強量も、自学自習力のある生徒の場合、通塾などの無駄な時間や授業時間の制約などがない分、塾以上に勉強することも可能です。ただし、質にしても量にしても、塾を下回る可能性もあります。
あなたにとって、より高い学習効果はどっち?
どちらが有効かは、生徒一人一人の資質や学習状況によって異なるため、一概には言えません。ただし、いくつかの判断基準があります。親御さんの参考となるように、どのような点に注目して考えれば良いかについて以下に述べたいと思います。なお、ここでは「どちらがより高い学習効果を期待できるか」という観点から考えており、費用面については考慮していません。
(1) 自学自習力があるかどうか
勉強の成果は、
(勉強の量)×(勉強の質)×(吸収率)
で決まります。
一定の質と量が保証される冬期講習・正月特訓か、やり方次第でそれを上回る効果が期待できる個別学習か、その選択の判断基準としては、「自学自習力」があるかどうかです。自学自習が難しい方は、迷わず冬期講習・正月特訓を受講すべきでしょう。
(2) 志望校対策が十分か
有名校の場合は、塾がその学校の対策講座を設けることがあります。その講座を受講している場合は、志望校対策はそこで専念すれば良いと思います。しかし、対策講座のない志望校を目指す場合は、各自で対策を行う必要があります。
冬休みの段階で、併願校も合わせてまだ過去問演習が十分でない場合は、冬期講習・正月特訓を受けるよりも、個別学習で独自に志望校の過去問演習を進める方が有効だと思われます。
(3) 基礎力強化・弱点解消・総復習が十分か
冬休みに基礎力強化に取り組んで効果を上げた生徒のエピソードを前々回にご紹介しました。冬期講習・正月特訓は入試レベルの演習が中心なので、基礎力強化・弱点解消・総復習などが十分でない生徒の場合、消化不良を起こすケースもあります。その場合は個別に必要な勉強をする方が効果は高いと考えられます。
冬休みをどう過ごすかは合否結果に大きく影響します。悔いのない冬休みを送られることを願っています。
歯は大丈夫?メガネの度数は合ってる?トラブルを未然に防ぐ
入試で想定されるトラブルは、未然に防ぐことが大事です。入試の時期に発生すると怖いトラブルの一つに、「歯の痛み」があります。入試直前あるいは当日に歯が痛み出すと、そのダメージは甚大です。普段から歯磨きを心掛けることはもちろんですが、隠れて虫歯が進行していることもありますので、今は異状が感じられなくても、懸念があるお子さんの場合は、今のうちに歯科医で診察してもらっておく方が安心です。
受験時は短期間で視力が低下することがあります。私自身、中学受験のときは、半年間で視力が1.5から0.8に低下しました。メガネの度数が合わないと集中力の低下や頭痛等の原因となります。余裕があれば、視力検査やメガネの度数の調整なども事前にしておくと良いかと思います。
圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。