逆転合格!中学受験

新年最初に伝えたい入試の基本 悔しい思いをしないために「得点力」を高めて合格を引き寄せる

得点力とは?

短期連載「逆転合格!中学受験」の第10回は、試験本番を前に、改めて試験では何が大切なのかを見つめます。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏は、「大事なのは得点力」と力を込めます。「得点力…

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短期連載「逆転合格!中学受験」の第10回は、試験本番を前に、改めて試験では何が大切なのかを見つめます。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏は、「大事なのは得点力」と力を込めます。「得点力」とは―――。

算数で大きな失点をするケース

新年最初のこの連載でお伝えしたいのは、「得点力」についてです。今から述べることは、基本中の基本、試験時の注意点として当たり前のことと、受け止められると思います。しかし、試験本番では、この“基本”ができないことが、意外に多いのです。

せっかく合格する実力がついているのに、当日それを発揮しきれなければ、悔しい思いをすることになります。ここまでの頑張りを無駄にしないためにも、今一度、入試本番で失敗しないための心がけを再確認したいと思います。

それが今回新年冒頭でお伝えしたいことです。

ある大手塾に通っている小学6年生のAさんのケースをご紹介します。2024年の中学受験の受験生です。

この冬休みは、塾の冬休み特訓に参加していたのですが、年末に行われた内部模試の算数の成績が思わしくありませんでした。試験問題と答案を見せてもらうと、問題は大問が7問あり、最後の大問の解答欄はすべて空白でした。

私「これは難しくて解けなかったの?」

Aさん「時間がありませんでした」

大問7には小問が3題ついていたのですが、Aさんは時間が足りずにまったく手つかずで終わってしまった、とのことでした。そこで、自力で解けるかどうか、Aさんに試しに取り組んでもらうと、最初の2つの小問は、ものの1、2分で解けてしまいました。

正答率(受験者の中の正解者の割合)は、小問1が89%、小問2が78%でしたが、Aさんはこの2問で17点も落としてしまったのです。これが実際の入試だったら、大きな痛手となっていたところです。

「得点力」を高めよう

大事なのは「得点力」

試験の点数は、実力がそのまま反映されるわけではありません。今回のAさんのように、問題を解く順番がまずかったり、時間配分を間違ったりすると、5点や10点、あるいはそれ以上の点数を簡単に落としてしまいます。そのほかにも、計算ミス、漢字の間違い、設問の読み違い、解答欄の間違い、正しく答えは出ているのに答えるべきものを間違った、などのさまざまな原因で、取れるはずの点数を落としてしまうということがしばしば起こります。これは単なる不注意だけではなく、緊張して本来の力が発揮できなかったというような心理的な原因による場合もあります。

入試が目前に差し迫ったこの時期、受験生のみなさんは、少しでも点数を上げるために、過去問を解いたり、これまでの復習をしたりと必死に勉強に取り組んでいることでしょう。もちろんその勉強は間違っていません。しかしそれだけでは不十分です。

“守備力”を鍛えて失点を防ぐ

試験の得点は、単純化すると、次のように表すことが出来ます。

(試験の得点)=A-B-C

A:現在の実力で取ることのできる得点の最大値
B:制限時間内に解けなかった分の失点
C:ミスなどによる失点

Aは、試験問題に時間制限なしで取り組んで、ミスがない場合に取れる得点の最大値です。B・Cの失点が大きいと、合格点を取るのは難しくなります。模試で合格圏内にある生徒でも、1つのミスが10点以上の大きな失点につながり、不合格になってしまうことがあります。しかし、多くの受験生が取り組んでいるのは、このAを引き上げるための勉強です。一方でB・Cの失点を防ぐ対策は手薄になりがちです。その理由としては、以下のようなことが考えられます。

(1) そもそもB・Cの失点がほとんどない

このような生徒は特に問題はありません。おそらく上位層に入っていることでしょう。

(2) B・Cの失点が致命的だという認識が薄い

このパターンは、それなりに実力がある子の中にも意外と見られます。「たまたまミスしただけ」というように軽く考えているために、なかなかミスが減りません。点数の上下変動が見られる傾向があります。

(3) BやCによって大きく点数を落としているということに気づいていない

試験結果の見直しや分析が不十分なために起こります。

(4) B・Cの失点を防ぐ手立てが分からない

集団授業では、このようなミスを防ぐ対策などを指導してもらうことは通常ありません。個別に先生に相談するなり、個別指導を受けると良いでしょう。

(5) 塾のカリキュラムをこなすのに必死で、それ以外のことに目を向ける余裕がない

このケースでは、まずはAの実力を高める必要があります。しかし、B・Cの失点を防ぐことで実力不足をカバーできることも理解する必要があります。

野球やサッカーで試合に勝つためには、攻撃一辺倒ではなく、失点を防ぐ守備力も鍛えなければなりません。受験も同じで、合格するためには、Aの点数を取る「攻撃力」だけでなく、B・Cの失点を防ぐ「守備力」も大事です。この攻撃力と守備力を合わせたのが「得点力」です。守備力は受験までの短期間でも向上させることが可能です。

試験の得点とは

明暗を分ける「取捨選択力」

制限時間内に解ける問題量を最大化するためには、以下の2つの方向性があります。

(1) 解くスピードを速める
(2) 要領よく問題を解く

(1)のためには、国語や社会であれば「読むスピードを上げる」、算数であれば「計算スピードを上げる」「解法をすぐ引き出せるようにする」などの方法がありますが、いずれも一朝一夕でできるものではありません。しかし、入試問題を解くスピードを上げることは出来ます。それは、「試験慣れ」をすることです。受験する学校の過去問演習を繰り返し、その形式とレベルに慣れることで時間短縮が図れます。3年分以上解けば、かなりの効果が期待できます。

(2)については、特に算数の場合に、その違いが顕著に表れます。冒頭に挙げたAさんの例のように、算数は要領が悪いと大きく失点することがあります。要領よく解くための基本は、「解ける問題から解く」ですが、どの問題を解いてどの問題を捨てるのかの取捨選択が明暗を分けます。その「取捨選択力」も、算数の得点力の一つです。

制限時間の中で“取捨選択”を的確に行うやり方

制限時間の中で的確に問題を取捨選択し、解答数を最大化するために、私が子供たちに推奨しているのは以下のようなやり方です。

(1) 最後まで問題をざっと見て、以下のことをおおまかに把握します。

  1. どの分野の問題(「速さの問題」「濃度の問題」など)が出ているか
  2. 各問どの程度の分量か
  3. 時間がかかりそうかどうか(見た目の雰囲気で結構です)
  4. 解けそうかどうか(見た目の雰囲気で結構です)

ただし、実際に解いてみないと分からないので、この段階ではなるべく時間をかけないようにします。おおよそ10~15秒以内です。全体を把握して「解き漏れ」を防ぐとともに、取り組む順番を考えます。

(2) 出来るだけ簡単で、短時間で解けそうな問題から取り組みます。普通は大問1や大問2がそうなっています。

(3) 少しでも引っかかったり(「引っかかる」=スムーズに解けない)、解けそうでも時間がかかりそうなら、次の解きやすそうな問題に移ります。設問の並びの順ではなく、自分が解きやすそうな問題の順に解くのがポイントです。

(4) すぐに解ける問題だけ解き進め、できるだけ早くすべての問題に当たります。

(5) すべての問題を通ったら、残り時間の中で、残った問題の中でどれから解くかを考えます。後は(3)以降を繰り返します。

このようにすれば、ほとんどの場合は、制限時間内で自分が解ける問題を最大限解くことが出来ます。

算数の試験の解き方

「検算」でミス防止

ミスを防ぐには、まず「ミスは大きな失点につながる」という意識を強く持つことです。意識するかしないかだけでミスをする割合は変わってきます。

また、ミスを防止するには、基本的ですが、「確認」を習慣づけることです。漢字の問題では「止め」や「払い」に気を付けること、計算では検算をすること、などです。

ミスで多いのは設問の読み違いですが、それを防ぐには、文章を鉛筆でなぞりながら、重要なところにはアンダーラインを引いたり、四角や丸で囲んだりすることです。特に算数の問題で、答えるべきものを間違って答えるミスは、何を答えるべきかを述べた箇所にアンダーラインを引くようにしましょう。ミスの多い生徒は、ほぼ間違いなく、そのような基本的なことが習慣づいていません。

受験まではまだ時間があります。「守備力」を鍛えることで合格の可能性を高められることを理解して、ぜひその強化に取り組んでいただきたいと思います。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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