こだわりの逸品で贅沢な蕎麦前を!オススメ蕎麦店6選 日本酒はもちろん、ワイン、ウイスキー、テキーラも◎

『手打ち蕎麦 吉』 @新井薬師前 昼飲みも大歓迎 商店街に隠れたわが町の社交場 「昼飲み、大歓迎です」という頼もしい言葉を聞いてうれしくなってしまった。酒場好きな店主の立澤さんは、昔ながらの蕎麦前で一杯やれる蕎麦屋であり…

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気の利いたつまみできゅっと一杯、はあ、たまらんですな~。昼飲みや夕暮れ飲みにぴったりなのがゆるりと飲んで、つるりと〆る蕎麦前。吟味して仕上げられた逸品で飲む酒は、大人だけに許された愉しみというもの。料理と酒にこだわる良店でそんなひと時を。

『umebachee!(ウメバチ)』 @渋谷

つまみから蕎麦へ トータルに練られた引き算の美学

わわわっ、香りと旨みが爆発する。肉厚を通り越してお饅頭のような椎茸を食べて驚いた。オイル煮だけどぜんぜん油っぽくない。香りを封じ込めるように低温の油で煮て、後からオーブンで余分な油を切っているからだ。

料理人の外牧さんは、目指す味へのアプローチに手間を惜しまぬ職人気質。

かますの酢〆 800円、原木椎茸のオイル煮 900円、オオカミ 800円

『umebachee!(ウメバチ)』(左手前)かますの酢〆 800円、(右奥)原木椎茸のオイル煮 900円、(右手前)オオカミ 800円 秋田三種町の驚くほど肉厚な椎茸は、凍るほどの寒さに耐えることで旨みが凝縮する。旬の魚の酢〆は定番。合わせたのは飲むほどに味わい深い日本酒、久米桜酒造『オオカミ』

〆の蕎麦はつゆまで飲んで欲しいから「その塩分を見越して料理の塩を控えます」と食べ手を思いやり、繊細なつまみに仕上げていく。クラフト感ある酒を揃えているが、「香りの強いものは置かない」のも蕎麦の風味を大切にするため。

最後まで蕎麦を気持ちよく楽しむ。その一点へ集約していく引き算の美学ゆえか、飲んだ後も体が軽い。

『umebachee!(ウメバチ)』

[住所]東京都渋谷区渋谷3-22-11 サンクスプライムビル3A
[電話]なし
[営業時間]12時~15時(14時半LO)、18時~22時
[休日]土・日
[交通]JR山手線ほか渋谷駅C2出口から徒歩3分

『手打ちそば やっ古』 @学芸大学

たおやかな料理と蕎麦に癒されて今宵も上機嫌

「毎週いらっしゃるお客様のために、つまみは少しずつ入れ替えています」とおっとり笑う店主の西田さん。この笑顔に会いたくて通ってしまうのだろうか。

つまみは季節の野菜を使ったものがいっぱい。いろんな野菜を食べてほしいという気持ちの表れだ。そこに加えたひとひねりがやっ古流。

例えば、酢〆した魚にシャクシャクの食感が小気味よいわけぎの酢みそ和えをのっけたり、あるときは野菜違いの3種のきんぴらを盛り合わせたり。

豆腐田楽三種 680円、イワシの酢じめとあさつきの酢みそあえ 800円、日本酒 700円~(150ml)

『手打ちそば やっ古』(手前)豆腐田楽三種 680円、(奥)イワシの酢じめとあさつきの酢みそあえ 800円、(右)日本酒 700円~(150ml) 上の酢みそ和えだけ、下の酢〆だけ、両方一緒に食べる、と3回楽しめる。茹でて〆た豆腐の田楽。左から山椒醤油麹、柚子味噌、ふき味噌。少しずつ違う味がうれしい

おひとり様でも食べられるようにとポーションは控えめ。味付けも尖ったところがなく丸くて優しい。凛とした風情の蕎麦もまた澄んだ味わいで、飲んで食べた後は晴れ晴れとした気分になる。

『手打ちそば やっ古』

[住所]東京都目黒区鷹番3-4-13
[電話]03-4291-1012
[営業時間]17時~21時半(20時半LO)
[休日]日・月 ※不定休あり。蕎麦がなくなったら閉店
[交通]東急東横線学芸大学駅から徒歩5分

『黒猫庵』 @蔵前

自由なつまみも隠し玉も楽しい 新しき蕎麦酒場

蕎麦と牡蠣というのが『黒猫庵』のテーマ。ピンポイントではあるが、好きな人にはたまらない。

生ガキを並べて、さあ食べようとすると「実はスコッチウイスキーもあるんです」と店主の長谷川さん。生ガキに少し垂らすのがおすすめ、とにっこり。なんと~、日本酒とナチュラルワインの店だと思っていたので意表をつかれた。実はお客さんから言われて置くようになったのだとか。

鳥羽 桃こまち 650円、陸前高田 米崎 880円、厚岸 L 980円、タリスカー10年 670円(シングル)

『黒猫庵』(手前から奥に)鳥羽 桃こまち 650円、陸前高田 米崎 880円、厚岸 L 980円、(右)タリスカー10年 670円(シングル) 牡蠣の銘柄は日替わり。牡蠣に特化した仲買人から仕入れている。食べ方は、レモン、モルトビネガー、タバスコから選べる

意表を突くのは洋食の経験もある長谷川さんのつまみも同様。干しダラを使ったブランダードのマグロ版のような『じゃがいもとマグロ酒盗焼き』にはこの手があったか、とにんまり。どんなつまみが飛び出すかを楽しみに、通ってしまいそうだ。

『黒猫庵』

[住所]東京都台東区蔵前3-6-8
[電話]03-5809-2326
[営業時間]18時~23時(22時LO)、日:15時~21時(20時LO)
[休日]月、第1・3日
[交通]都営浅草線ほか蔵前駅A0出口から徒歩1分

『手打ち蕎麦 吉』 @新井薬師前

昼飲みも大歓迎 商店街に隠れたわが町の社交場

「昼飲み、大歓迎です」という頼もしい言葉を聞いてうれしくなってしまった。酒場好きな店主の立澤さんは、昔ながらの蕎麦前で一杯やれる蕎麦屋でありたいという。

カウンターの真ん中で、煮込みの鍋がグツグツと煮えているのも下町大衆酒場を彷彿とさせる。「地味ですね」と笑う蕎麦前は、シンプルだけどよく考えられている。

選べる三点盛りはずらり10品以上の小鉢から。選びきれないという人にはプラス料金で1品追加もOKだ。

煮込み 720円、神亀 純米(一合) 950円

『手打ち蕎麦 吉』(手前)煮込み 720円、(奥)神亀 純米(一合) 950円 カウンターの真ん中で煮込まれる煮込みは看板料理。大根は味しみしみ、牛筋は脂がとろとろ。肉に負けない神亀のお燗酒と

店がある新井薬師前は奥様いよりさんの地元とあって、夜ともなればご近所さんでワイワイ賑わう。そんなムードに酔いしれて、ついつまみを食べ過ぎてしまったら〆は軽く半盛りそばを。

『手打ち蕎麦 吉』

[住所]東京都中野区上高田3-38-11
[電話]03-3386-2919
[営業時間]12時~14時、18時~22時半(天ぷらは20時LO)、日・祝12時~17時 ※蕎麦売り切れ次第終了
[休日]月、火、最終週の日
[交通]西武新宿線新井薬師駅南口から徒歩2分

『蕎麦 ひるあんどん』 @下板橋

和食譲りの端正なつまみに笑顔がこぼれる

和食で修業したという店主の高木さん。「親方に蕎麦屋になりたいといったら叱られて」と苦笑いする。それでもどうにかお許しが出て、蕎麦の名店へ話をつけてくれたという。

品書きの先頭には旬の野菜料理が書き連ねてある。とりあえずのビールで品書きを眺めて悩むのも幸せなひと時だ。日本酒に切り替えて木の芽和えに身悶えし、端正ななめろうをちびり、酒をちびりとやれば春満開。

どの料理も和食の土台を感じさせるが、ラム肉を使った揚げ出しなどアイデアは豊か。

その日のお魚のなめろう 900円、竹の子とうどの木の芽和え 500円、和田龍 登水(一合) 800円

『蕎麦 ひるあんどん』その日のお魚のなめろう 900円、竹の子とうどの木の芽和え 500円、和田龍 登水(一合) 800円 木の芽和えはみずみずしく甘いうどと筍の食感が小気味よい。味噌と塩で味付けされた鯵のなめろうは軽やかな味わい。すっきりした日本酒と

季節の蕎麦は、刻んだふきのとうとふきのとうの香りの香味油添えという新発想。たっぷりの青い香りとともに、名残の春を惜しむとしよう。

『蕎麦 ひるあんどん』

[住所]東京都板橋区板橋1-7-6 ルアーナM1階
[電話]03-5944-2504
[営業時間]水~日:11時~14時LO、火~日:17時~21時(20時LO)
[休日]月
[交通]東武東上線下板橋駅北口から徒歩4分

『そば處 大野屋 元代々木町店』 @代々木八幡

威風堂々の町蕎麦でテキーラと蕎麦の絶妙な相性を楽しむ

創業は1948年という歴史ある町蕎麦。実はこちら、酒の充実度がバー顔負けなのだ。ソムリエや利き酒師の資格を持つご主人・大野慎介さんが選ぶ日本酒、ワイン、ラム、ウイスキーの数、銘柄に圧倒される。さらにアガベ100%の正統派テキーラが70種も!

前菜盛り合わせ 1650円、テキーラ23 1000円

『そば處 大野屋 元代々木町店』(右)前菜盛り合わせ 1650円、(左)テキーラ23 1000円 前菜は手前から、里芋の和えもの、フルーツトマトのサラダ、厚焼き玉子、菜の花のごま和えとビーツの煮物、竹の子の土佐煮。スムースでバランスの良いテキーラのソーダ割りがどんな料理も受け止める

蕎麦にテキーラ?と思うかもしれないが、「テキーラには植物であるアガベ由来のまろやかさがあって、和食の柔らいテクスチャーとよく合います。蕎麦の穀物の風味にも寄り添ってくれる」という。

特にスモーキーな香りのあるテキーラは、本枯節を効かせた蕎麦つゆと相性抜群。ハーブ系の爽やかさが漂うソーダ割りなら、晩春から初夏にかけてぴったりだ。

『そば處 大野屋 元代々木町店』

[住所]東京都渋谷区元代々木町3-10
[電話]03-3467-7513
[営業時間]11時~14時(13時45分LO)、17時半~22時(21時半LO)
[休日]不定休
[交通]小田急線代々木八幡駅北口から徒歩2分

撮影/貝塚隆、取材/岡本ジュン

2024年5月号

※2024年5月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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