トマトソースやケチャップをまとった麺に心奪われ、味にアクセントと彩りを与えるベーコンやピーマンに胃袋を捕まれる。気づけばもう虜―そんな“赤い小悪魔”ナポリタン。ここでは、洋食店やカジュアルなレストランでいただける「本格派」をご紹介!具材やソース、パスタなど、各店がひと味違うナポリタンを作っています。そんな実力派の味をご堪能あれ。
画像ギャラリートマトソースやケチャップをまとった麺に心奪われ、味にアクセントと彩りを与えるベーコンやピーマンに胃袋を捕まれる。気づけばもう虜―そんな“赤い小悪魔”ナポリタン。ここでは、洋食店やカジュアルなレストランでいただける「本格派」をご紹介!具材やソース、パスタなど、各店がひと味違うナポリタンを作っています。そんな実力派の味をご堪能あれ。
『洋食 ムチュ』 @学芸大学
洋食界の大型新人 王道+ひと手間でピカイチの完成度
テーブルを飾るのはオールドノリタケの食器類に、これまたレトロなナプキンスタンド。老舗さながらのクラシカルな風情だが、オープンしたのは2024年の3月というピカピカの新店だ。
近くで『酒場浮雲』という人気の居酒屋を手がける店主・有川さんが、次の一手に選んだのは子供の頃から大好物の洋食だった。
料理はどれも伝統へのリスペクトを込めた王道スタイルを守りつつも、さらにおいしくする工夫とひと手間を忍ばせる。
もちろんナポリタンもそのひとつで、具材の火入れに注力し、しっかり炒めた玉ねぎからは甘みが膨らみ、最後に加えたピーマンのフレッシュな苦みと食感が爽やかなアクセント。
ナポリタン 1320円
また麺には隠し味に牡蠣醤油を振って香ばしさをぐんと引き上げている上、仕上げに絡めるマスカルポーネがまろやかさとコクを生んでいる。繊細な味の構成に“これぞレストランの味”と唸ること間違いなしのひと皿だ。
[住所]東京都目黒区鷹番3-4-25
[電話]03-4400-0241
[営業時間]11時半〜14時半(14時LO)、18時〜22時(21時LO)
[休日]水、隔週火
[交通]東急東横線ほか学芸大学駅改札口から徒歩2分
『高円寺 ウシータ』 @高円寺
“カラヒグ麺”で作るオリジナルの味は新しくも懐かしい
開店から中休みなしの通し営業で、前菜からメインに至るまでメニューにびっしり書かれたつまみは、なんと約80種も揃えている。もちろん昼飲みもウェルカムの飲んべえにとことんやさしい“町イタリアン”だ。
そんな店が「名物!」と胸を張るのがこのナポリタン。
濃厚なコクの温泉卵がとろりと絡む太麺は、その評判ゆえに今じゃ仕入れも困難な浅草開化楼製の通称“カラヒグ麺”。低加水で打った生麺ならではのモチッと頼もしきコシから小麦の香りがふわりとやってきた。
ソースはそんな存在感抜群の麺に合わせた作りで、トマトの水煮とケチャップの両方を使い、それぞれの甘みや旨みをぎゅっと凝縮させている。
名物!極旨ナポリタン 1300円
イタリア料理のトマト系パスタのテイストを感じつつも、軸足はしっかり日本式ナポリタンに置いていて、舌に馴染んだ懐かしの味にほっとする。ちなみにナポリタンは「にせんべろセット」に+1100円で追加も可能だ。
[住所]東京都杉並区高円寺北3-22-5 2階
[電話]03-6336-4451
[営業時間]11時〜22時半(21時半LO)、日10時〜17時(16時LO)
[休日]不定休
[交通]JR中央線ほか高円寺駅北口から徒歩2分
『レストラン ケルン』 @虎ノ門
自慢のデミグラスでコクと深みをアップ 色褪せぬ老舗の味
創業は虎ノ門で1960(昭和35)年。一昨年に近代的なオフィスビルのレストランフロアに移転し、装いも新たに第2幕をスタートしたけれど、初代から引き継いた料理への想いと時代を超えて愛される味は健在だ。
ナポリタンも創業時から変わらぬメニューのひとつ。まず具材には食べ応えも重視して、たっぷりの薄切りにしたウィンナーに加えて鶏肉もイン。
前日に茹でて1日寝かせた麺と一緒にケチャップで炒めてフィニッシュ……、かと思いきや最後の仕上げに1週間かけてコトコト炊いた自家製のデミグラスをさっと絡ませる。
ウィンナーナポリタン 1320円(昼は1200円)
艶めくソースをまとったそれをひと口食べれば、トマトの甘みや酸味にデミグラスのコクとホロ苦さ、さらには具材自体の旨み、いろんな味と風味が合わさって、モチモチのソフトな麺と見事にマッチ。
60年以上経った今でも色褪せない洒落た味わいにフォークを運ぶ手が止まらなくなる。
[住所]東京都港区西新橋1-1-1 日比谷フォートタワー2階
[電話]03-6550-9742
[営業時間]11時〜14時半(14時LO)、17時半〜21時半(20時半LO)
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄銀座線虎ノ門駅9番出口から徒歩3分
『東都グリル』 @築地
エビがゴロッと入る本格ソースのナポリタン
この店で“ナポリタン”といえば具材はエビで、一方ハムを使うのが“イタリアン”。ちょっと不思議なネーミングの理由は今だにナゾだと初代の娘さんは笑って答えてくれた。
店の始まりは東京五輪の前年昭和38(1963)年で、当時はハイカラな洋食レストラン。築地市場に仕入れにやってくる料理人や仲買人など、食のプロにもたいそう親しまれ、今まで歴史をつむいできた。
常連のリクエストに応じてメニューはどんどん増えてゆき、今じゃ酒のつまみになる刺身や小鉢なんかも置いていて、ざっと数えても100を超す(!)。
ナポリタン 850円
そうそう、冒頭のナポリタンに話を戻すと、ソースはじっくり炒めた香味野菜に、煮詰めたトマトピューレとケチャップを合わせた本格派。軽やかな甘みとまろやかな酸味がエビの風味をしっかり立たせてくれている。
モッチリとした麺とエビのプリプリ感が口の中で響き合う、食感のコントラストも楽しんでほしい。
[住所]東京都中央区築地6-22-4 東水ビル地下1階
[電話]03-3542-2088
[営業時間]8時〜18時(17時45分LO)※火・金は〜20時(19時15分LO)、水〜15時(14時45分LO)、市日の水10時〜15時(14時45分LO)、土7時〜15時(14時45分LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩6分
『essence Terrace Dining BAR(エッセンス テラス ダイニング バー)』 @東銀座
キムチとの邂逅 組み合わせの妙に思わず唸る!
メニューを開くと、そこに並んでいたのは洋食をベースにしながらも、エスニックやハワイアンなど各国料理のエッセンスをひと振りしたジャンルレスな料理たち。「そう来るか!」と思わせる食材やソースの組み合わせに味を想像するだけで食いしん坊の胸は躍りだすではないか。
「ナポキム」もそんな料理のひとつで具材に使うのがなんとキムチ。意表を突かれつつも、ひと口食べればこれが大正解と思わず舌を巻いた。
熟成されたキムチは発酵から生まれる酸味があって、もちろん程よい辛さもある。それどころかタバスコを思わせる風味になっていて、まったりとしたケチャップ味にシャープな芯を通していた。
ナポキム“キムチナポリタン” 1400円
さらにソースには、もうひと工夫あり。挽き割り納豆をほんの少しだけ隠し味に使うことで、両者の親和性をさらに高めているんだとか。シェフのアイデアが光るこのひと皿は一度食べればハマること間違いなし!
[住所]東京都中央区銀座3-11-8 1階
[電話]03-6264-1057
[営業時間]11時〜14時半(14時LO)、17時〜23時(22時LO)※土は〜22時(21時LO)
[休日]日
[交通]地下鉄日比谷線ほか東銀座駅A7出口から徒歩1分
『日本橋三越本店 新館5階 カフェ&レストラン ランドマーク』 @三越前
日本初のケチャップを使用 老舗デパートが放つすこぶる上等な味わい
子供の頃、家族で買い物帰りに立ち寄ったデパートのお好み食堂。あのときのワクワクした気持ちを思い起こさせる懐かしい風情を残しつつ、昨年リニューアルしてお目見えしたのがこちら。
メニューはどの世代にも親しまれる和洋中の他に、デザートやおつまみも用意。ほっとひと息つける広々とした空間だ。
そんな店のナポリタンは、すこぶる上等な味わい。日本初とされる「清水屋ケチャップ」を使ったソースはトマトをしっかり感じる濃厚な風味で、仕上げに数滴加えたタバスコのピリ辛感が後味をきりっと引き締める。
スパゲッティナポリタン 1870円
さらに具材は生産者から仕入れる上質なベーコンや、フレッシュなミニトマトも入り、それぞれの具材とソースが見事な調和を生んでいる。
また、いろいろな料理を試したければ、ナポリタンに加えてステーキにエビフライ、グラタンなどスター級の洋食ばかりをワンプレートにまとめた「大人様洋食」をどうぞ。
[住所]東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店 新館5階
[電話]03-3231-6820
[営業時間]11時〜19時(18時半LO)
[休日]施設の休館日に準ずる
[交通]地下鉄銀座線ほか三越前駅A2出口から徒歩1分
『洋食バル 横浜ブギ』 @桜木町
ゴロッと野菜の甘みを引き出した進化系ナポリタン
横浜生まれのナポリタンは、発祥の地でこんな進化も遂げていた。
具材の主役となるのはパプリカやズッキーニなど、色とりどりの野菜類で、その食感や風味をいかすよう別々に炒めてから煮込んだ、いわばラタトゥイユ。パスタは2.2mmの食べ応えのある太麺で、前日から水漬けしてプリッと跳ねるような弾力と歯応えを生んでいる。
麺にケチャップを絡めつつ香ばしく炒めて、仕上げに具材をかけたら出来上がり。麺と一緒にパクリとやれば、野菜のゴロッとした食感から丁寧に引き出した甘みがぐんと膨らんでくる。
横浜ブギ名物ベジナポ 880円(昼はセットで900円)
これを作っているのが店主の金さん。もともとフレンチのシェフという経歴の持ち主で、知識や技のあれこれを、ひとつひとつの料理にさりげなく込めている。
イベリコ豚ベーコンの旨みを効かせたキッシュ・ロレーヌや、こんがり炒めた舞茸で味の深みを出したハヤシビーフなど、メニューのどれもが思わず膝を打つおいしさだ。
[住所]神奈川県横浜市中区住吉町6-77 横浜福島ビル1階
[電話]045-264-8477
[営業時間]11時半〜14時LO、17時〜22時LO
[休日]日・祝(不定休)
[交通]横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅1番出口から徒歩4分
撮影/小島昇(ムチュ、ウシータ、エッセンス テラス ダイニング バー、ランドマーク、横浜ブギ)、西崎進也(ケルン、東都グリル)、取材/菜々山いく子
※2024年6月号発売時点の情報です。
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