大井町「華林」 チャーハンを頬張る学生の横で餃子とビールを楽しむサラリーマン。大井町で長年愛される中華料理店の変わらぬ日常。そのひとコマの風景に、ラーメンがある。“昔ながらの”という言葉がしっくりくる姿は想像を裏切らない…
ラーメンの中でも定番&一番人気の高いのが醤油味。淡麗系が主流ながら、素材の旨みを重ねた味や乾物の和ダシで仕上げる店など王道も個性派も増加中。「東京、三ツ星ホテルの「究極のラーメン」ベスト2店…スープ濃厚「ホタテ・エビ」どっさりで、一杯《2640円》でも高コスパ「覆面調査隊」が発見」 に引き続き、今回は町中華のうまいラーメンを覆面調査でレポートします。
人形町「あづま軒」
運ばれてきたそれは、控えめな美しさを放っていた。穏やかに澄んだスープは鶏ガラメインかと思いきや、実は豚ゲンコツ。煮立たせず、こまめにアクを取ることで奥ゆかしいまでに深く優しい味を作り出している。「豚骨は白濁という印象ですが、濁らないスープを作るよう父に教えられました」と2代目が話す通り、このスープ、この味が創業70年近くになる店のプライド。
レシピはほぼ変えていないが、自家製麺の配合はつるモチッとした食感になるよう見直したという。なるべく包みたてを提供する餃子や炒め物にも、誠実さがにじみ出る。しみじみいい店。
千歳烏山「中華風食堂HANA」
品書きには白飯が進む中華のおかずがズラリ。その中に店名を冠したラーメンを発見した。緩やかに立ち上る湯気。こんもり盛られた白髪ネギ。こがね色のスープ。しなやかな細麺。ネギ油の芳しい香り。書いているそばからお腹がぐぅっと鳴りそうだ。
鶏ガラと挽き肉、キャベツなどの野菜で仕込んだスープはまろやかな旨み。そこにピッとアクセントを与えるのが特製ネギ油だ。ラードで揚げたネギにニンニクを加えたもので、これがまたいい仕事で、店名を掲げるだけの味なのだ。さて名店で修業した店主の中華は人柄そのまんま、気取らないのにどれも絶品。料理は人を映すとは本当です。
大井町「華林」
チャーハンを頬張る学生の横で餃子とビールを楽しむサラリーマン。大井町で長年愛される中華料理店の変わらぬ日常。そのひとコマの風景に、ラーメンがある。“昔ながらの”という言葉がしっくりくる姿は想像を裏切らない味だ。豚骨と鶏ガラを半々の割合で炊き、野菜のダシも加えたスープをちぢれ麺が程良く吸い上げる。吊るし焼きの赤いチャーシューも懐かしい。
半チャーハンとセットで注文する客も多いそうだ。本場中国の料理人が作る豊富なメニューも自慢で、某女性タレントが絶賛した「陳マーボー豆腐」は必食。数種の中国山椒をブレンドした味付けはピリピリと辛いが、かなり旨い。
大森「中華料理 喜楽」
鶏ガラに豚骨も加えたダシを使用し、仕上げにラードで30分かけてきつね色に揚げた焦がしネギをひと掴み。これぞ戦後間もなく初代が生み出した「あっさりしつつもコクある」ラーメンだ。中細麺をすするたびに口に広がる、ネギの風味、ラードのコク、ダシの旨み。虜になる旨さ、ここにあり。
浅草「来集軒」
創業昭和25年の老舗。メニューにレシピはなく、先代の仕事ぶりを見て覚えた味を提供している。生醤油にチャーシューの煮汁を加えた醤油ダレを使ったラーメンは、優しく染み入るような味わい。そこにモヤシを炒めて作る餡がコクを加える。合わせて食せば、「あぁ」と感嘆が漏れるはずだ。
清澄白河「七福」
25歳で修業先から独立し同店を開いたのは、もう50年も前のこと。店主・小堀さんは今も変わらず「安くて旨くてボリュームある」料理を提供してくれる。中でも修業先から譲り受け、継ぎ足して守っている醤油ダレを使うラーメンは、他にない味わい深さと根強いファンが多い逸品だ。
『おとなの週末』2020年2月号より(本内容は発売当時のものです)
…つづく「東京駅、じつは『朝ラーメンの天国』だった…! 朝からペロリの絶品ラーメン 《ベスト5店》 を覆面調査隊がレポート」では、早朝から開店している絶品のラーメン店を調査しました。