和の店に注目した2024年10月号の『おとなの週末』。居酒屋担当のライター池田と肥田木&編集武内、食堂の菜々山と商業施設の井島&編集戎が各々の調査を振り返りつつ、楽しみ方から人気店の理由、お酒のトレンドまでゆるりと語ります!
画像ギャラリー和の店に注目した2024年10月号の『おとなの週末』。居酒屋担当のライター池田と肥田木&編集武内、食堂の菜々山と商業施設の井島&編集戎が各々の調査を振り返りつつ、楽しみ方から人気店の理由、お酒のトレンドまでゆるりと語ります!
日本人の魂に響く 和の店の魅力とは
菜「和の店って魚や野菜など料理の幅あり&バランスよし、毎日カレーとか毎日とんかつとか極端なリサーチじゃないから健康になったかも?」
肥「わかる、やっぱ和食って日本人のDNAに組み込まれてる味っていうのかな、安心するよね。お酒も進んだ!」
武「確かに結構酔っ払った日も多くて、隣で狂ったように飲んでる肥田木さんがキレイに見えたもん、一瞬だけ」
肥「それ完全シラフだね。狂ったようにと一瞬は余計」
武「ま、そんなこんなで、いい居酒屋見つけました!」
井「居酒屋といっても大箱やワイワイにぎやか系とかいろいろあるけど、今回は?」
武「特に意識したのは大人がしっぽり楽しめること、店主との距離が近めで、親近感があること。店主の哲学やお客さんとの距離感が反映されている空間……と考えるとやはり10名程度が入れる小さな店が多くなりました」
池「うん、カウンターもあってひとりやふたりでゆったり飲める店って改めていいなと思った。高級過ぎたり、おしゃれ過ぎる堅苦しさもない“いい塩梅”の店は通いたくなるよね。つまみも酒も特別に凝ったものである必要はない。
けれどここに来るとコレがあるんだよな的な、ちゃんとその店の“らしさ”が立ってる店がいい。例えば『さかなやなかにし』→店主が目利きした脂の乗った刺身、『だれやめや』→これぞ宮崎地鶏の炭焼きや焼酎&〆の絶品つけ麺、てな具合」
『さかなや なかにし』刺身盛り合わせ 1700円
肥「その店らしさで言えば『襤褸』のお茶割りと茶室のような世界観はぜひ体感してほしい。茶葉を漬け込んだジンやウオッカなどを炭酸などで割るハイボールなんだけど、こんなに香り高くおいしいんだって目からウロコ。それにいい店って店主に会いに行きたくなる店でもあると思うんだよね。『宵のま』は素敵な女将さんが作る旬肴と燗酒と空間に癒されたぁ」
『酒と茶と 襤褸(らんる)』真たことアボカドの南蛮みそ和え 700円、シウマイ 2個600円、煎茶ハイボール 700円
武「ワイワイ飲むのも楽しいのですが、店主や他のお客さんと静かに会話しながら、小鉢に旬の味覚を見つけたり、こだわりのお燗や緑茶割りを堪能したりするのは何というか肩肘張らない“大人の嗜み”っぽくて、それが今回のテーマの“ちょうどいい感じ”の居酒屋かなと思います」
“呑める食堂”でのベストな過ごし方
菜「ふうん、キミたち、いい大人の時間を過ごしていたんだね。でもね、私が担当した“呑める食堂”も超おすすめだよ。なぜなら種類豊富な定食のおかずは単品で頼めるうえに、明太子とか梅干しとかご飯のお供も全部がつまみになる。軽く飲むにも、じっくりでも、お腹の減り具合と気分に合わせて選べて自由度の高さがとにかく楽しいの」
肥「楽しそー!」
菜「しかも通し営業の店が多い。今回の掲載店なら『食堂土土土』や『壱番隊』など。混み合う昼はハズして、お客さんが落ち着いた頃に行ってダラダラずっと飲める。最高でしょ?」
『食堂 土土土』うずらの紅生姜漬け 480円
肥「サイコー!」
菜「相づちがテキトー(笑)、さすがオンナ高田純次」
肥「いやいや確かに純次LOVEだけど真面目に聞いてるってば。てか『壱番隊』って私が夜な夜な通う蒲田にある店だ。リサーチの時、何で誘ってくれなかったの?一緒に飲みたかったのにぃ」
菜「狂ったように?(笑)」
戎「だから怖くて呼ばなかったんです(笑)。僕が理想形と思ったのは、先の『食堂土土土』。リサーチ時、それこそ菜々山さんとバカスカ飲んでいたんですが、周りのお客さんは飲んでも1杯ぐらいなんですよね。基本は定食メインの人が多く、どんどん回転してるのに僕らはずっと飲んでた(笑)。取材時にその話をしたら『むしろそうやって楽しんでほしい』と店主。よかった〜と思いましたよ」
菜「食堂にもいろんなタイプの店があったよね。『相州屋』は学生街にあるから値段も安くてお腹いっぱいになる庶民派。一方、『食堂なるたけ』は素材も調味料にもこだわった和食の原点と言える定食を出す店」
『食堂なるたけ』揚げ出し豆腐とかんぱち漬け刺し定食 2500円
戎「総じて言えるのはご飯がおいしいこと。でまあ、そのご飯を進ませるおかずの数々。ちょっと濃いめの味付けが多いから、お酒も進むんですよ。僕のベストの過ごし方は、つまみ2品くらい&お酒で始めて、つまみが減ってきたあたりで定食をオーダー、その合間にもう一杯……。サッと行ける気軽さも“呑める食堂”のいいところです」
井「商業施設の店も使いやすさと特別感なら負けませんよ。例えば『神田新八』は有名な老舗だけど、新丸ビルにあることで本店とは違う新しいお客さんを掴んでいる。『三分亭』もそこでしか食べられないメニューがあって、わざわざ行く価値があります。商業施設って、いい意味で敷居が低くなるから利用しやすいんですよね」
『酒亭 神田新八』トマトの和牛射込み 1080円、煮穴子生春巻 1380円、のどぐろ塩焼き 時価、神亀 1合1150円〜
戎「そう、名店の和食を気軽にいただけるのはいいなと思いました。買い物ついでにこのクオリティの料理やお酒を楽しめるのはうれしい!」
実績や人気がないと、出店の声がかからない
池「そもそも話題の商業施設に出店できるのは限られた店で、実績や人気がないと出店の声は掛からないもんね」
井「勢いある店が集まる中で勝負するには何かしらメニューも頭を捻らなければならないし運営も難しいと思う。同じフロアで各店の混雑の差が一目瞭然というシビアな環境だからこそ、よりよい店になるんでしょうね。駅直結も多いし、渋谷、銀座、日比谷などエリアごとにお気に入りを見つけておくといいかも」
菜「そんな中で、特にどこが気に入ったの?」
井「虎ノ門ヒルズ『楽喜』(店名の“き”は本来、七が3つ)は三軒茶屋の人気店の新ブランドなんだけど、新たに始めた寿司とお茶割りが他にはない味でおいしかった!」
『楽喜(らっき)』今日の握り 六貫 2700円、rokuジントニック×知覧茶 900円
武「お茶割りは今後、要注目ですね。実はレモンサワーブームの次はお茶割りが来るとずっと思ってたんですよ」
肥「そういえばそれ、数年前から言ってたよねー」
武「でもこれまで今ひとつブームになりきれない状態だった気がします。つまりおいしいお茶割りにはおいしいお茶が欠かせないのですが、注文ごとに淹れるのは結構大変みたいで。それにレモンサワーみたいに店の個性をいろいろ開発できる感じもなく。が、時を経て『襤褸』や『楽喜』のように個性的でおいしいお茶割りに力を注ぐ店が増えてきた。これ、いよいよブームになりそうな予感です」
池「確かに。立ち飲み『きんざざ』もお茶割りに特化してた。日本、中国、台湾のお茶割りは素晴らしかったよ。特徴がよくわかるし、香りもいいし、気楽さも◎」
『茶酒きんざざ』ドリンク 各700円
武「そうそう。立ち飲みで言えば今回は若者にも支持されている個性派を集めました。それこそお茶割りや国産クラフトジンなどお酒に力を入れていたり、料理に手をかけていたり、だから笑顔で楽しむ人であふれる店ばかり!」
肥「ね、特に『酒匂』は酒も料理も店主にも惚れた。居酒屋、食堂、立ち飲み、商業施設までシーンや気分で使い分けるといいね。今度は食堂飲みしようかな~」
菜「なら『駒込食堂じみち』もいいよ。実は次の休みに行こうと思ってるんだ。ここ、サウナ&カプセルホテルに併設した食堂でね、じっくり汗を流した後に旨いおかずを肴にビール!チューハイ!日本酒!これぞ“おとなの週末”でしょう」
『駒込食堂 じみち』豚の生姜焼き定食 980円
肥「いいね、飲む飲む~」
井「私も狂ったように飲んでみたい(笑)。行く行く」
戎「い、井島さんまで……。皆さんもいろんな意味で自分流“おとなの週末”をお楽しみください!」
文/肥田木奈々、撮影/鵜澤昭彦(なかにし、襤褸)、西崎進也(土土土、楽喜)、小島昇(食堂なるたけ、神田新八、じみち)、小澤晶子(茶酒きんざざ)
※2024年10月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
…つづく「鶏もつがとにかくうまい!東京の酒場2選 《覆面調査隊が発見》レバーの食感、旨みを楽しみたい」では、覆面調査隊が若き店主の店を中心に、東京都内の鶏もつの老舗、名店を実食レポートしています。