去る9月28日(土)、JR豊橋駅南口広場にて、『うなぎサミットinとよはし2024』が開催された。愛知県でうなぎといえば、やはり何といっても三河一色が有名だが、1896(明治29)年に愛知県で最初に養鰻が始まったのが豊橋なのだ。
画像ギャラリー去る9月28日(土)、JR豊橋駅南口広場にて、『うなぎサミットinとよはし2024』が開催された。愛知県でうなぎといえば、やはり何といっても三河一色が有名だが、1896(明治29)年に愛知県で最初に養鰻が始まったのが豊橋なのだ。
『うなぎサミットinとよはし2024』は、歴史のある養鰻業がありながらも、絶滅危惧種となっているうなぎの食文化を今後も次世代に継承すべく、さまざまなうなぎグルメを楽しめるうなぎマルシェとして初めて開催された。
おにぎりや串揚げ、丼ものを食べまくり!
当日は悪天候に見舞われたが、キッチンカーを中心に13店舗が出店した。サミットというだけに豊橋うなぎを扱う店のみならず、近隣の三河や浜名湖の店もあった。その中で気になるメニューを実際に食べてきたので紹介しよう。
豊橋うなぎは、豊橋養鰻漁業協同組合が冷凍真空パックの長焼きや肝の串焼きを販売していたほか、会場からほど近い場所に実店舗がある『ひつまぶし長楽』も出店していて、長蛇の列ができていた。列に並んで買ったのは、「鰻おにぎり」(1個350円)。
注文ごとに細かく刻んだうなぎの身とタレをまぶしたご飯を目の前で大きなおにぎりの型にはめて作っていた。値段が安いので身がゴロゴロ入っているわけではないが、うなぎの風味はしっかりと感じた。タレも甘すぎず、辛すぎず、ちょうどよい塩梅。
『うなぎの三河』は、1969(昭和44)年、愛知県豊田市羽布町の三河湖畔に創業したうなぎ店で、キッチンカーが出店していた。ここではうなぎを串に巻いて焼き上げた「熟成うなぎのくりから焼き」(1本550円)と「肝焼き」(1本350円)を購入。
「熟成うなぎのくりから焼き」は、血抜きしたうなぎを1週間から10日ほど熟成したものを使っているそうで、濃厚な旨みを堪能できた。「肝焼き」もコクがあっておいしかった。
ひと際行列を作っていたのは、浜名湖うなぎのみを扱うキッチンカー『鷹影』。提供していたのは「うなぎ串」や「ライスバーガー」、「鰻重」などソソられるものばかり。土砂降りの中、1時間以上も並んで、やっと買ったのが「ぼく飯」(1500円)なる丼もの。
「ぼく飯」とは、炊き上がったご飯にうなぎとごぼうを煮たものを合わせた混ぜご飯のこと。名前の由来は、太い杭の「木杭(ぼっくい)」から。当時、太すぎるウナギは売り物にならなかったため、養鰻場のまかない飯として食べられていたという。
『鷹影』では混ぜご飯ではなく、ごぼうの煮物を混ぜたご飯の上に焼きたてのうなぎと錦糸玉子をのせたスタイル。うなぎは肉厚で、皮はパリッと、身はふんわり。ごぼうの風味とよく合う。薬味のネギもイイ仕事をしている。1杯だけでは物足りず、3杯くらいは食べたくなるほど旨かった!
「豊橋うなぎ」の品質の高さに驚愕!
実は、筆者は豊橋市内でうなぎの養殖から卸業、加工、販売を手がける『夏目商店』を取材したことがある。豊橋のうなぎは生産量こそ三河一色に追いつかないものの、品質に絶対の自信を持っていた。もっと多くの人々にPRしようと地域ブランド(地域団体商標)をめざして手続きを進め、2012年に「豊橋うなぎ」として特許庁に商標登録されたのだ。
地域団体商標とは、地域産業の競争力と強化、地域経済の活性化を目的に特許庁が2006年に開始した制度で、うなぎに関する登録は全国でも愛知県の「一色産うなぎ」と「豊橋うなぎ」、静岡県の「浜名湖うなぎ」の3件のみ。
しかし、本誌2024年8月号で取材した三河一色の養鰻業者も相当なこだわりを持っていた。では、一色産うなぎと豊橋うなぎの違いはどこにあるのか。
『夏目商店』の取材時に、養鰻池で行われた「池揚げ」を見学させてもらった。養鰻池では7人がかりで池全体に張った網を四方から手繰り寄せて、うなぎを籠の中に入れていた。網に引っかかったうなぎは傷めないように細心の注意を払いながら丁寧に扱っている姿が印象的だった。
池上げしたうなぎは、立場(たてば)と呼ばれる施設で1~2日、エサを与えず籠の上から水を流し続ける泥抜きを行う。泥を吐かせることで臭みが少なくなるだけではなく、身が締まって余分な脂も落ちるため、より一層おいしいうなぎになるのだ。
『夏目商店』の夏目義秀社長は池揚げされたばかりのうなぎを裂いて、蒲焼きにして食べさせてくれた。うなぎは大好物だが、今さっきまで養鰻池で泳いでいたうなぎゆえに、さすがに泥臭いのではないかという不安もあった。
ところが、泥臭さはまったくなく、噛むごとに皮と身の間にある脂がジュワッと溢れ出して、口の中で旨みとともに広がったと思えばスッと消えていく。まるでマグロのトロのような脂の口溶けを堪能することができた。
「豊橋うなぎは地下水を使っているので臭みが少ないのだと思います。うなぎはきれいな水では餌を食べないので、自然に近い環境を作らなければなりません。豊橋の養鰻はうなぎの飼育に適した水を作る技術が長けていると思っています」と、夏目社長。
来年の土用丑のシーズンに本誌でまたうなぎ特集を組むならば、ぜひとも豊橋うなぎを食べ歩いてみたい。編集長、ご検討ください!
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。
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