本誌『おとなの週末』で連載している、声優・茅野愛衣さんの「コヨイのカヤノ」。そのコラムを補完する内容をWebで展開している「ソノタのコヨイ」。その番外編の続き。長崎から今回の目的地である佐賀県の「天山酒造」さんへと向かいました。そこは一風変わった酒蔵でした。
画像ギャラリー本誌『おとなの週末』で連載している、声優・茅野愛衣さんの「コヨイのカヤノ」。そのコラムを補完する内容をWebで展開している「ソノタのコヨイ」。その番外編の続き。長崎から今回の目的地である佐賀県の「天山酒造」さんへと向かいました。そこは一風変わった酒蔵でした。
目的地到着の前に日本一高価な「シベリア」を購入
今回の出張の目的のひとつだったのが、佐賀県にある「天山酒造」さんへの訪問。
以前、日本酒の会で社長の七田謙介さんにお会いした時に「酒蔵の中にバーを造ったんです」と伺って、そのバーをはじめ蔵見学をさせてもらってきました。
江戸時代、長崎県の出島で陸上げされた砂糖は長崎街道を使って小倉まで運ばれました。佐賀県の中央で、その長崎街道沿いにある小城市は、そういった立地ゆえに古くからの砂糖文化が残る街なのだそうです。
そして担当編集のドビー曰く、日本一高価な「シベリア」(カステラで羊羹を挟んだものです)を売っている『村岡総本舗』も同市にあるとのこと。
目的の「天山酒造」さんに伺う道すがら、そんなお話を聞かされたら行かないわけにはいきません(笑)。母へのお土産&私のおやつとしてシベリアや羊羹を購入です(出張から戻って頬張ってみたところ……しっとりしたカステラに羊羹が挟まれたシベリアはコク深く、上品な甘さ。羊羹もリッチな味わいで、どちらもお茶請けにぴったりでした!)。
そんな寄り道をしつつ、いよいよ「天山酒造」さんに到着です。
不易流行のもと、6代目が挑む新境地
こちらは、蔵の名前を冠した「天山」や、東京でも人気で私も大好きな「七田」、同じ「七田」と言う名前の米焼酎などを醸しています。みなさんも、どれかをきっと口にしてるんじゃないかな。
蔵に着いてまず驚いたのが、周囲の環境(小雨が降っていて、うまく撮れてませんでした。ごめんなさい)。きれいな小川と緑に囲まれたところにあって、空気がおいしい。そんな環境で造られるお酒たちです。おいしいに決まってます!
「天山酒造」さんのルーツとなったのは水車業。それを発展させ1861(文久元)年に、まずは製粉・製麺業を開始します。その後、酒米の精米なども引き受けていた関係で、廃業する地元の酒蔵を購入することに。当初は酒造りを行う予定ではなかったものの、近隣で「酒造りも始めるらしい」と噂になってしまい、女性蔵元の七田ツキさんが酒造業をもスタート。1875(明治8)年のことだそうです。
稲作が盛んであり、きれいな水がふんだんにある土地。さらに蔵が格言としている「不易流行」の言葉通り、よりおいしいものを造る、新たな時代に挑戦する姿勢で、全国に多くのファンを持つ蔵へと成長しています。
そんな歴史を、重厚な洋室(社長室?)で伺います。六代目蔵元となる謙介さんも、最新機器の充填ラインを稼働させたり、世界に通用するスパークリング日本酒の開発に取り組んだりと、やはり「不易流行」の言葉を持って活動しています。
そして、もうひとつ。謙介さんが力を入れているのが、心に残るエンターテインメント性のある蔵にすること。海外のワイナリーをいくつも視察しているうちに「どこも造る過程のことを多くは語らないんです。それよりも印象深いコースや試飲スペースなどに力を入れていて。見学の後、おいしさもあるんですが、楽しい思い出からまた行きたいとなるんですよ。そこで、当蔵も印象に残る蔵見学ができる場にしようと思って」。
そして今、蔵には木桶を使ったアート作品の展示スペースやピタゴラスイッチを思わせるお酒ができるまでを解説する装置などが設けられています。
お酒を詰めていた瓶が並ぶ見学コースのエントランス。「七田」の七をとって華やかにしているのかなと思ったら、造りによって異なるラベルの色を配色しているのだそう。日本酒蔵っぽくない色遣いで、かわいいし、この先に何が待っているんだろうとググンと期待度もアップです。
2階には使用しなくなった木桶や、それを使ったアート作品が並びます。高い天井、そこから伸びる光もあって、荘厳さもあるんですよね。
横に倒し、中でちょっとした作業ができるようにした木桶も。もちろん、ここでお酒を飲めたら楽しいだろうなあが最初の感想(笑)。あーお家にひとつ持って帰りたい!
特別にバースペースを見学!
そして蔵見学の最後に案内していただいたのが、入る際にトリックを仕掛けたバースペース(どんなトリックかは、ぜひ行って確かめてください)。特別な時にしか使用しないとのことなのですが、私なんかが入れてもらっていいのかしら? でも、ここが見たい! という思いもあったので、「七田さん、本当にありがとうございます!」。
中は8畳くらいの落ち着きのある空間で、4席のスツールと3人用のソファ席が用意されたカウンターのみ。
例えば、今力を入れているスパークリング日本酒や熟成させた日本酒、グラスを変えることで味の雰囲気が変わる様子を楽しむ。さらには飯碗、茶碗があるなら、これがあってもいいと陶芸作家の方と取り組まれている酒碗でいただくなどなど。バーテンダーとなった謙介さんが解説をしてくれながら、それら未来につながっていくお酒を楽しませてくれます。どれもおいしくて、面白くて、本当によき!
特別なバータイムがなくても、見るだけ、巡るだけでも楽しい「天山酒造」さんの蔵見学。小川に蛍が光を放ちながら舞い、夜には幻想的な雰囲気となる6月がおすすめだそうです。その時、また来たいなあ。みなさんも、ぜひ!
■「天山酒造」
[住所]佐賀県小城市小城町大字岩蔵1520
[電話番号]0952-73-3141
[営業時間]9時~17時(6~8月は〜16時)
「天山酒造」さんからちょっと寄り道
佐賀での最後の食事はハヤシライス(私)とカツカレー(江崎マネとドビー)! 市街の少しハズレにある『欧風カレー 白山文雅』さんに伺ったのですが、お皿にのせられたご飯がほぼひと口分。え? と思っているとご飯は別の器で出されて、しかもおかわり自由。
「天山酒造」さんでお酒をいただいて少し食欲が出てきた江崎マネ(私もちょっぴり食欲ありました 笑)も大満足です。
ハヤシライスはほど良い酸味があってコク深く、よき! カレーは香り高く、旨み、辛みがひとつにまとまっているうえ、サクサク衣のカツと好相性で、こちらもよき! あ、ちなみにこちらのお店を探したのも江崎マネであります。ありがとうございます!
というわけで、長崎2日目と天山酒造さんのレポートはこれにておしまい。
ではでは、また本誌で。
茅野愛衣(かやの・あい)/9月13日生まれ。代表作に『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(めんま役)、『ノーゲーム・ノーライフ』(白役)など多数。2024年7月からオンエア中の『真夜中ぱんチ』(ゆき役)に出演のほか、8月上旬からは映画『ふれる。』公開を記念して、『あの花ラジオ』復活版のパーソナリティも務める。
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