旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■スラッと
正解:えのきたけ
難易度:★☆☆☆☆
天然ものとは見た目は別物
えのきたけはキシメジ科エノキタケ属に分類されるきのこで、学名は Flammulina velutipes(フラミュリナ・ヴェルティペス)。この名前にはラテン語で「小さな炎」や「ビロード状の足」といった意味があり、野生種の見た目から名づけられました。
野生のえのきたけは、晩秋から早春にかけて広葉樹の枯れ木や切り株に発生するため、山や河川沿いなどで採取することが可能です。ただし、毒きのことの見分けに注意が必要です。とくに「ニガクリタケ」という猛毒のきのこに似ているため、識別には十分な知識が求められます。
雪の中でも群生するため、冬の代表的なきのこといわれています。実際、「ユキノシタ」といった別名もあるほどです。
江戸時代頃までは天然のものが食されていましたが、明治時代に原木栽培が始まり、昭和初期には現在のような菌床栽培が確立されました。1960年代に一般に普及し、いまではスーパーで手軽に手に入るきのことなっています。
市場で見かける白くて細長いえのきたけは、菌床栽培によるもの。暗室で育てることで光を遮り、もやしのような姿になります。最近では、野生種をかけ合わせた茶色い「味えのき」や「ブラウンえのき」も登場しており、より風味豊かで歯ごたえのある品種として人気を集めています。
光に敏感な性質を持っており、光のある環境では柄が短く、傘がしっかり開いた姿になります。そのため、自生しているものとスーパーで見かける菌床栽培のものでは、見た目に大きな違いがあります。
食味の特徴としては、加熱するとシャキシャキとした歯ごたえがあり、調味料と一緒に煮詰めることでぬめりが出て、全体にとろみのある仕上がりになります。このぬめりを活かした瓶詰めの加工品が「なめたけ」で、食卓でもおなじみの一品です。
料理への応用も幅広く、鍋物、炒め物、煮物、和え物、汁物、天ぷら、パスタなど、どんな食材とも相性がよく、クセがないため使いやすいのが魅力です。
とくに鍋料理では、ほかの具材の旨味を吸収しながら自らの食感を保つ名脇役として活躍します。また、バター炒めやすき焼き、大根おろしとの和え物など、和洋問わず使える万能選手です。