旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■スケスケです
正解:ヤリイカ
難易度:★★★☆☆
肝より身の美味しさを楽しむイカ
ヤリイカは、ツツイカ目ヤリイカ科に属するイカの一種で、名前の通り槍のように細長く尖った胴体が特徴です。
体は半透明で美しく、鮮度が高いと透き通った見た目を保ちます。この透明感が活造りなどの料理で重宝される理由のひとつです。
日本では北海道から九州まで広く分布し、とくに青森県、北海道、長崎県が主な産地です。佐賀県の呼子も名産地として有名で、「呼子のイカ」といえば観光地ブランドとして知られます。ただし、ケンサキイカを「ヤリイカ」として提供している店もあります。これは、呼子など一部地域では「ヤリイカ」という呼び名がケンサキイカを指す場合があるためです。
旬は年に2回あり、冬から春(1月~3月)と、夏から秋(9月~10月)です。冬のヤリイカは産卵前で栄養を蓄えており、身に甘みが増して美味しくなります。とくにメスは「子持ちヤリイカ」として珍重され、煮つけなどにすると絶品です。
夏のヤリイカはサイズが小さく、丸ごと食べられるため、唐揚げやボイルなどに向いています。
ヤリイカは、上品な甘みと柔らかな食感が際立つイカで、スルメイカのような濃厚さや肝の旨味は控えめですが、シコシコとした歯応えと優しい味わいが魅力です。刺身にすると甘みが際立ち、天ぷらや塩焼きでは、噛むごとに旨味がじんわり広がります。煮つけにすると煮汁がしっかり染み込み、ふっくら柔らかく仕上がるため、ご飯のお供にもぴったりです。
洋風の料理にもよく合い、アヒージョやパエリアなどではオリーブオイルとの相性が抜群で、素材の甘みが引き立ちます。
ヤリイカは、ほかのイカと比べて身が細く、やや長めのスマートな体型をしており、見た目にも上品な印象があります。食味も、スルメイカやアオリイカのように濃厚な旨味を持つタイプとは異なり、柔らかく、甘みがすっきりしているのが特徴です。
刺身にするとその甘みが際立ち、身が縮みにくいため煮付けや焼き物でも美しく仕上がるのが魅力です。
また、スルメイカは肝が大きく濃厚な旨味を持っているため、塩辛やワタ焼きなど、肝の風味を活かす料理に向いています。
一方、ヤリイカは肝が小さく、クセが少ないため、刺身や煮つけ、塩焼きなど、身そのものの甘みや食感を楽しむ料理に適しています。
また、旬が冬から春にかけてで、寒い時期に出回るため、鍋料理や煮物など温かい料理との相性も抜群です。
イカ全般にいえることですが、養殖が非常に難しいため、天然物がほとんどです。水温の変化に弱く、生きた餌しか食べず、水槽にぶつかると死んでしまうなど、養殖環境の整備が非常に難しいため、商業化はまだ実現していません。