旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■山に入れば
正解:あけび
難易度:★★☆☆☆
果実だけどなく、つるも皮も食べられます
あけびは、日本の里山や山野に自生するつる性植物で、アケビ科アケビ属に分類されます。
春には淡紫色の花を咲かせ、秋になると楕円形の果実を実らせます。一般的なものは紫色の果皮を持ち、熟すと自然に縦に裂けて、白くて甘い果肉が顔を出すというユニークな姿が特徴です。
一方で、果皮が茶色から薄褐色になる「みつばあけび」と呼ばれる品種もあり、こちらは紫色のものよりもやや控えめな甘さで、皮がしっかりしているため加熱調理に向いています。どちらも秋の味覚として親しまれ、それぞれに異なる魅力があります。
旬は9月下旬から10月中旬で、秋の味覚として知られています。
果肉はとても甘く、ねっとりとしたゼリー状の食感があり、南国フルーツのような優しい風味を持っています。種が多いため、果汁を吸って種を吐き出すという独特の食べ方になります。冷やして食べると甘みが際立ち、デザート感覚で楽しめます。
一方、果皮は苦味が強いため生食には向きませんが、アク抜きなどの下処理をすることで炒め物や煮物に使えるようになります。とくに山形県では「あけびの肉詰め」が郷土料理として知られており、皮の中にひき肉を詰めて甘辛く煮ることで、苦味が旨味に変わる絶品料理になります。
そのほかにも、味噌炒めや天ぷら、佃煮などに使われることがあり、皮の活用法は地域によってさまざまです。
とくに山形では、全国でも数少ない「果肉だけでなく皮も食べる」文化が根付いています。皮のほろ苦さを生かし、肉詰めをはじめ、味噌炒めや天ぷら、煮物など多彩な料理に活用されます。地域によっては、ぬた和えにすることもあります。
また、つるは山形をはじめ東北地方で工芸品の材料として利用されており、かご細工や籠づくりなど、地域の伝統工芸を支える重要な素材となっています。