全国のコンビニで販売されているグルメ漫画本『思い出食堂』(年4回発売/少年画報社・刊)。そこで連載されている『ショウワ -味の郷愁所-』は、20代の女子ミキが祖父から教えてもらった懐かしの昭和グルメを探し、食べるというお話です。作品の原作者で昭和世代である城新一さんは、東京のみならず全国各地へ飛び回ってリサーチしています。本連載では漫画で書ききれなかった「昭和グルメ」の楽しさとおいしさをご紹介。第1回目は「黄色いカレー」です。
“ショウワ”中期のカレーは黄色が濃かった
「黄色いカレー」と聞いて映像が頭に浮かぶ人は、ショウワの時代をがんばって生きてきた、と言えるのではないか。今や国民食になったカレーライスだが、ショウワの時代は働く人のランチとして牛丼に並ぶイメージがあるからだ。
ショウワ中期(30年代、40年代)のカレーは、カレー粉と小麦粉、ラードとシンプルな材料で作られたため、黄色が濃かったと言われている。当時のカレー粉は香辛料のターメリックが主成分だったので、黄色く見えたわけである。私はショウワ中期の生まれなのだが、小学生の時の給食のカレーも黄みがかっていた記憶がある。
その後、今でもおなじみの固形ルウが発売され、家庭でも手軽に作られるようになり、さらにレストランでは複雑な香辛料を使ったり長時間煮込んだカレーが生み出されるなど、幅広いカレー文化が日本に根付いていくことになるのだ。
今回ショウワを彷彿とさせる漫画の原作を書くにあたって、第1回目として取り上げるネタは、この黄色いカレーに決めた。
まずは自分で作ってみようと、今でもスーパーで販売されているS&Bカレー粉の赤い缶詰で黄色いカレーを再現してみようと考えた。
実際に作ってみると、つい現代のカレーをイメージして刻んだ玉ねぎをていねいに炒めることから始めた。あめ色に輝いた玉ねぎに赤缶のカレー粉を入れたのだが、混ぜると結局、茶色くなってしまい、黄色いルウを再現するのはなかなか難しいのであった。
ウスターソースをかける、蕎麦屋の黄色いカレー
東京にある黄色いカレーで調べると、真っ先に出てくるのが、入谷の『東嶋屋』さんだ。入谷駅からふらふらと10分ほど歩くと、ショウワ的な趣のある店構えが見えてきた。
この店の食レポはネットでも数多く出ていてかなりの人気店だというのがわかる。この老舗の蕎麦屋さんで注文できるカレーが「黄色い」のである。この日は土曜日のせいか、年配のご夫婦らしきお客さんが目立ち、店内の様子も静かで落ち着いていた。私みたいなカレー目当てというより、そばを注文する人が多かったが、まさに地元でも愛されている蕎麦屋という感じだった。
出てきた「ライスカレー」(1000円)は、たしかに黄みがかっていて、福神漬けの赤さがカレーの黄色さを際立たせる。
スプーンですくうとルウはとろみがあり、具から溶け出しているのか甘みも感じられ、するすると口に入っていく。このままでも十分においしいのだが、ショウワの食べ方を再現するために、お店の人が出してくれたウスターソースをかけてみた。
いやー、この食べ方はまさにショウワ以来というか、トンカツにトンカツソースをかける人間としては、ウスターの味が本当に懐かしいというか、私をショウワに連れて行ってくれた。とても懐かしい味わいが自分の子どもの頃を思い出させる。そんな逸品だったのだ。
資料用の写真を撮って、後日、漫画担当の山田睦さんに見せたところ、最初に驚いて声を上げたのは「スプーンがコップに入っている!」だった。ああ、私よりも若くてショウワを知らない世代には、こんな経験はないのか。普通にコップからスプーンを取り出した私は、もう昔の人なんだなあ。




