おとなの週末で人気連載の呼び声高い、東西うまいもの対決風コラム『[東]マッキー牧元 ×[西]門上武司の往復書簡』。待ってましたの春到来。いよいよ全国的に桜も咲き、気分もウキウキ、いい季節ですなぁ。そんな芽吹きを寿ぐ今号は、春の生命力をしかと感じる野菜の天ぷらで、東西の美味を語っていただきます。
画像ギャラリー【今回のお題】天ぷら
天ぷら 対決 東/天ぷらつな八 つのはず庵 vs. 西/天ぷら かふう
【東】マッキー牧元 天ぷらつな八 つのはず庵の「春野菜の天ぷら」
門上様、ようやく春が来ましたね。東京でもウグイスが鳴き、全国でも桜の花が咲き出しました。
この季節は、冬に甘さを蓄え、空に向かって伸びんとする、野菜が愛おしい。勢いの手前にある命の切なさがあって、どうにも好きなのです。
そしてそんな春野菜を生かすのは、天ぷらに限る、と思うのです。
今回ご紹介するのは、栃木県海老原ファームの野菜を使った天ぷらです。供してくれるのは、『天ぷら つな八 つのはず庵』。
野菜ごとに与える水の量を厳格に管理した海老原さんの野菜は、力強く甘い。それらを天ぷらにして、風味を膨らますのですから、たまりません。
エグミが微塵もなく、噛んでいくとわさび菜のような香りが放たれる芽キャベツ。旨みを伴った、しぶとい苦みがある黒キャベツの若芽。濃密な甘みがほっくりと崩れゆくニンジンや、ほのかに甘いその葉の部分など、慣れ親しんだ野菜のたくましさに、驚かされます。
スナップエンドウは、青々しい香りと甘みが弾け、さやの内側と豆が溶けるように甘い。アスパラの根元を齧れば、とろりと甘い液が、流れ出る。
まさに息吹とはこれだ! と叫びたくなる凛々しさがあって、春に深々と感謝する味なのです。
春の息吹を湛えた野菜の生命力を存分に生かしきるこれぞ春味礼賛の味わい
▲「お好み天ぷら」より。野菜1品432円(税込み)~
通称“エビベジ”と呼ばれる、栃木県にある海老原ファームの野菜を使用。「生で食べても驚きの連続。ほとばしる生命力とはこのこと! これを天ぷらでいただけるのだから、味わわないのは損というもの。ぜひ4種の塩で。こりゃ夏野菜も期待しちゃうね」(牧)
[住所]東京都新宿区新宿3−28−4
[TEL]03-3358-2788
[営業時間]11時〜15時、17時〜22時(21時LO)、土・日・祝11時〜22時(21時LO)
[休業日]無休
[席]カウンター18席、テーブル64席、座敷32席 カード可/予約可/サ10%(夜のみ)
[交通]JR山手線ほか新宿駅中央東口出口から徒歩2分
【西】門上武司 天ぷら かふうの「春野菜の天ぷら」
牧元さん、寿司・天ぷら・蕎麦といえば、いかにも江戸の三大料理という感じがします。
なかでも天ぷら店の数は、寿司・蕎麦に比べて西の方が圧倒的に少ないのではないでしょうか。
そして天ぷらの王道といえば海老ですが、いまの時期はやはり山菜に心を奪われてしまいます。
京都・吉田神社そばの『天ぷら かふう』には、山菜や春野菜を天ぷらでしっかり楽しませてくれるコースがあるのです。
まず柚子の花は小さな蕾から、華やかな柚子の香りを放ってくれます。
そして、こごみ、ふきのとう、筍豆腐、筍、海老、アスパラガス、きく芋、よめ菜、甘草、行者にんにくなどが、次々と天紙の上に置かれるのです。
春の野菜は苦みです。
ふきのとうなど歯を入れた瞬間に苦味と香りが一気に広がりをみせ、食欲を刺激してくれるのです。
最近の料理界では、苦みという味わいに注目しています。
苦くておいしい、というコトを大切にしています。
主の西岡利文さんは、江戸文化の研究にも熱心で、店名の『かふう』は永井荷風からの縁です。
江戸の文化から端をから発して、関西らしいさっぱりとした味わいに到達したのです。
牧元さん、吉田山散策とセットでいかがですか。
春野菜は“苦み”が身上。それを上手く引き出し、あふれ出る香りとともに堪能させる、極上天ぷら
▲春野菜の天ぷらは単品220円~、盛り合わせ1300円(税込)
柚子の花にはじまり、よめ菜、甘草、こごみなど春野菜のオンパレード。「なにせ、西岡さんの春野菜に対する執着心が半端ではなく、“天ぷらにしてこそ、その真価を発揮できる食材のひとつでしょう”との思いが、ひしひしと伝わってくる献立なのです」(門)
[住所]京都市左京区吉田神社鳥居前
[TEL]075-761-9060
[営業時間]11時半〜14時(13時45分LO)、17時〜20時半(20時LO)
[休業日]日・月
[席]カウンター6席、テーブル8席 カード不可/予約可(※夜のみ)/サなし
[交通]京阪鴨東線出町柳駅から徒歩約12分
プロフィール
【東】
マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。
【西】
門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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