東西「つくね」対決(コラム:マッキー牧元×門上武司の往復書簡)

おとなの週末で人気連載の呼び声高い、東西うまいもの対決風コラム『[東]マッキー牧元 ×[西]門上武司の往復書簡』。焼き鳥のなかでも、〈つくね〉はまるで別モノのようにその存在感の大きさを感じさせる希有な一品。今回は、なんとも個性的な東のつくねと、職人の腕が冴え渡る西の極上つくねをご案内します。

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【今回のお題】つくね

つくね 対決 東/焼鳥 今井 vs. 西/天ぷら あやむ屋

【東】マッキー牧元 焼鳥 今井の「つくね」

門上様、「つくね」ときましたね。
いやあ、ひと言につくねといっても、形状や硬さ、味付けなど様々なつくねが世の中には存在します。
みなさん好みがあるでしょうが、僕はこと焼鳥のつくねとなると、博愛主義です。
安っぽい屋台のつくねも、立派な高級店のも愛しています。
でもその中で強いて言わせてもらえれば、やはり肉料理なのだから、肉の香りとたくましさがあってほしいということでしょうか。
その点ここ『今井』のつくねは、実に肉々しい。
パクチーとナンプラー入りという変則技に着目されがちですが、元の挽き肉がいい。
その挽き肉は、親鳥と赤鳥を合わせたミンチですが、噛むと、その親鳥の歯応えがあって、挽き肉ながら「肉を食らっている」という勇壮な気分になる。
さらには雛鳥にはない凛々しい香りがある。
この親鳥の滋味を楽しんでいると、後からパクチーの香りが鼻に抜け、ナンプラーの旨みがこっそり後押しをする。
そのバランスも良く、また親鳥あっての香草や調味が生きてくるのです。
千駄木は、昭和の香りがまだ残る下町です。
そこでの革新的なつくねを、食べに来ませんか?

ぶりっとした肉感と噛んだ途端に広がる香りに内なる野生が目覚めるような勇壮かつ鮮烈なつくね

▲つくね 350円
味付けに使われるナンプラーも印象的。
「噛んだ瞬間に広がるパクチーの香りがいいね。これ、レモングラスとか入れても合うんじゃない? 季節ごとにハーブを変えてもいいなぁ」(牧)。パクチー好きは“追いパク”も、苦手な人は“抜き”も可能

焼鳥 今井
[住所]東京都文京区千駄木2-29-4 シティーハイツ千駄木102号
[TEL]03-3821-2989
[営業時間]18時~23時(22時LO)、日曜のみランチ営業あり 11時〜14時閉店
[休業日]月(※ほか不定休あり)
[席]カウンター10席
カード可/予約可/サなし *コース6000円、単品一串350円〜
[交通]地下鉄千代田線千駄木駅1番出口から徒歩約1分

【西】門上武司 あやむ屋の「つくね」

牧元さん、つくねというと肉系だけでなく、魚バージョンもあるのですが、どうしても焼き鳥を思い浮かべてしまいます。
そして大阪・福島の『あやむ屋』という焼き鳥屋のつくねにたどり着きました。
ここは俵型に近いスタイルで、串を持つとふるふると揺れるのではないかと思わせるぐらいの柔らかさが伝わってきます。
ひと口食べると、肉肉しさとジューシィーという本来相反する要素がうまく同居していることに感激してしまいます。
店主の永沼巧さん曰く、「せせりが8割、あとは皮と手羽元、ももです」とのこと。
驚くに、店にミンサー(挽肉機)を置き、自店で挽いて、一度挽きと二度挽きを混ぜているというのです。
これが肉肉しさとジューシィーさの秘訣です。
皮の部分が入ることで、よりジューシィーさを強調します。
「店で挽くということは、いつも新鮮でどの部位を使っているか分かります」と永沼さん。
たしかに肉屋任せとは、明らかにつくねに対する思いが違います。
そして、「店の4番バッターのような存在ですから」とも。
福島はいま新たな店がどんどん増え、熱いエリアです。
そこでしっかりしたつくねはいかがですか?

店主の”つくね愛”をひしと感じる手間ひまかけた極上の肉肉&ジューシィー串

▲つくね 250円(※注文は2本から)
丹波地鶏を使用。
「せせりをたっぷり使うことすら珍しいが、一度挽きと二度挽きを混ぜるという永沼さんの徹底ぶりには驚きと感動です。皮の脂分が溶け、ジューシィーになる様は、まさに小籠包の感覚を味わっている感じともいえるのです」(門)

あやむ屋
[住所]大阪府大阪市福島区福島5-17-39
[TEL]06-6455-7270
[営業時間]17時半~23時
[休業日]日
[席]テーブル4席、カウンター13席/計17席
カード可(1万円以上~)/予約可/お通し400円
※単品は2串以上から、人数分の注文
[交通]JR新福島駅より徒歩1分

プロフィール

マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。
門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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