三大和牛の一つ「米沢牛」のグランドチャンピオン牛が初めて大阪に! 「焼肉くろちゃん」の和牛愛物語
新春1回目のルポなので、この日のために温存していた実に華やかな企画を送りたい。 米沢牛を愛してやまない一人の男の物語でもある。 男の名は黒田辰巳さん(40)。 泉北高速鉄道「光明池駅」から車で約10分の場所にある「焼肉くろちゃん」のオーナーだ。
こう言ってはなんだが、駅からも随分と離れたところに店舗はある。 それも、実に辺鄙な場所に…。 「駅前にお店をつくると、よーわからんお客も入るでしょ。 味がわかってる人にうちの肉を食べてほしいから、敢えて校外にお店を作ったんですよ」 ようするにホンモノの肉好きだけに食べてほしい。 和牛に対するこれほど真摯な向き合い方をする焼肉店は初めてだ。 くろちゃん、冗談抜きに自他ともに認める“肉のオタク”で、このお店は米沢牛専門焼肉。 そのくろちゃんが2018年の夏、長年の悲願を達成させたとの情報が、友人のグルメライターから伝わってきた。
「この美味しさを皆に知ってほしいんです。 だからお金に糸目をつけず、セリでは絶対に落とそうと思うて業者さんにお願いしたんです」 こうして、山形県米沢市から待ちわびた“ご褒美”が届けられた。 米沢牛のグランドチャンピオン牛を落札。 丸ごと一頭、買ってしまったのだ。 興奮冷めやらぬなか、満面な笑みで迎えてくれたくろちゃん。 こうして開かれたグランドチャンピオン牛の試食会。 山形県外に渡るのが初なら、当然この大阪に上陸するのも初。 こんな豪勢なものを食べてええんか(!?)という空気感で試食会は始まった……。
シャトーブリアンからリブ。 次から次へと運ばれてきた。 見よ、この美しいサシを!
今回の試食会はまるで肉の宝石箱。 感嘆の声の数々。 しかも、これを惜しげもなく焼く!
こうして提供されたのがこちら。
これが、グランドチャンピオン牛や!
ワサビを少し塗ったシャトーブリアン。 ひとたび口に入れるとすぐさま溶けた。 脂の質が、これまで食べてきた和牛と異なる。 しつこさがまったくないのだ。 人間、旨い物にありつけると本性が出てくる。 上品だった食事会もコテコテの関西弁が飛び交い、くろちゃんが手にしたこのお肉が……。
こうやって出されて……。
こうなるのだ!
米沢牛の最大の特徴は低い融点、いわゆる脂が溶ける温度にある。 通常、神戸牛や松坂牛は28度前後。 それが米沢牛だと約22度。 6度近くも低いので、口に入れると溶けるのがスピーディ。 一瞬にして溶けてしまうのは、こうした理由から。 霜降りがキメ細かく、脂の質がほかの和牛とはまったく違うのはそのためだ。
「寒暖差が大きいところで育てられているのが米沢牛の最大の特徴です。 寒いところで過ごすのでより融点が低くなったと言われているのです」とは、 同席した米沢牛の専門家の意見。
生肉の寿司を食べても、脂がしつこくないので胸やけがない。 それどころか、箸が止まらなくなった。 くろちゃんの提案で肉を実際にカットさせてもらったが、サシの脂によって包丁が満足に動かない。 言うならば、バターをカットしているかのよう。
ザブトン、ハネシタ、ミスジ、ヒウチなど……。 あらゆる肉を、次から次へと胃袋に。
挙句の果てにはローストビーフまでご馳走。 ちなみに、昼のランチタイムには1日10食限定の「ローストビーフ丼」を980円で提供している。
「嬉しそうに食べてる人を眺めるのが好きなんです(笑)。 こういってはなんですが、趣味の世界のコレクターという感覚に近いかもしれませんね」 まだ米沢牛を未体験の方、くろちゃんでは「米沢牛特選ハラミ」(1880円~)や「米沢牛特選ツラミ」(880円~)、「米沢牛ホルモン盛(4種)」(1480円)などが食せる。 場合によってはチャンピオン牛があったりと、肉好きならぜひとも米沢牛を堪能してもらいたい。 この旨さに、きっと惚れるはずだ!
焼肉 くろちゃん [住所]大阪府和泉市伏屋町1丁目12-27 [TEL]072-546-2941 [営業時間]月・水・金 11:30~14:00 17:00~23:00 火・土・日・祝 17:00~23:00 [定休日]木曜
加藤 慶(かとうけい) 大阪在住のライター兼カメラマン。週刊誌のスクープを狙う合間に関西圏の旨いモンを足で稼いで探す雑食系。
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