福井県の「鯖街道」で「飲食店が少ない」ことで嘆いていた町が、サバジェンヌ曰く「日本でいちばんホットな『サバ名所』」にまで成長! そこで食べられる絶品のサバグルメをジェンヌが食べまくり。熱量たっぷりのレポートです!!
画像ギャラリー飲食店の少ない街が日本屈指のサバ名所に変貌!!
福井県若狭町「熊川宿」は、「鯖街道」の宿場町。小浜から京都を結ぶサバの道の要衝として、江戸時代大いに賑わった。最盛期には貨物を乗せた牛馬が1日に1000頭も行き交ったという。
いまも町屋や土蔵が並び、昔ながらの面影が残る美しい町並みは、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~」として日本遺産にも認定されている。
奉行所や番所、蔵屋敷の跡が残り、情緒あふれる街道散策が楽しめる熊川宿。
江戸時代には200戸を超える問屋、旅籠、商家などが立ち並んでいた
熊川宿は、ジェンヌさんも何度も足を運んでいる大好きな場所。
ゆっくりと時間が流れ、馬をつなぐための「駒つなぎ」の鉄輪や、上げ下げのできる「ガッタリ」とよばれる長椅子を備えた民家もあって、「おお、サバを携えて街道を人々が行き交っていたんだなあ」と想いを馳せられるサバらしい、あ、すばらしいサバ名所だ。
せっかく鯖街道の宿場町を訪れたならば、たっぷりサバがいただきたい! ところだけど、じつは熊川宿には「飲食店が少ない」という問題があった。
そもそも熊川宿は、若狭町や住民のみなさんの努力によって「町並み」は維持されていたものの、近年過疎化が進み、空き家も多くなっていた。商店も閉まり、かつての賑わいや生活感がない状況に陥っていたのだ。
ところがですよ!!最近、みなさんの取組みにより、リノベーションによって古民家や蔵を利用したお店が急増。活気を見せているのだ。しかも最近では、さまざまなサバグルメが味わえると注目を集めている。
いま日本でいちばんホットな「サバ名所」と断言させていただきたい!
そんな熊川宿のサバグルメの町を徹底レポート!
地元民から圧倒的支持を得る『まる志ん』の「鯖寿司」
まずは、熊川宿の老舗サバグルメをご紹介しよう。こだわりの鯖寿司が地元でも絶大な人気を誇る『まる志ん』。
熊川宿の中心部に位置する『まる志ん』。
江戸時代末期に建てられたという、熊川宿の代表的な平入りの建築も趣深い
熊川宿が1996年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されて、観光客が訪れ始めたころにオープン。
「築170年以上の自宅を改装して、最初は喫茶店としてスタートしました」と語るのは、生まれも育ちも熊川の岡本宏一さん。
せっかく、鯖街道の町にきたのだからお客さんはサバ料理が食べたいだろう、と鯖寿司の提供を始めることにしたという。
もともとサバが大好きな岡本さんは、徹底的に研究、試行錯誤を重ねて鯖寿司を完成させた。
岡本宏一さん。もともとは衣料品販売の仕事に携わっていたが、一念発起して「サバの道」へ。
「うちには江戸時代のものと思われる鯖寿司の押し型が残っています。これも何かのご縁ですね(笑)」と岡本さん
サバは地元・常神(つねがみ)半島水揚げのサバをはじめ、すべて国産、800~900gのサイズを使用。冷凍ではなく必ず生で仕入れる。「冷凍では本来のサバのよさが出ないので、必ず生で1本まるごと仕入れます」。
さばいたら、徹底的に水洗いをしてから塩をして寝かせた後、酢で〆る。使用しているのは、創業300年を誇り、昔ながらの製法で醸造を行う小浜市『とば屋酢店』のものだ。「身は締まり過ぎず、刺身のような感じに仕上げるように心がけています」
シャリは地元のコシヒカリを使い、刺身のような締め加減のサバに合うように、ほんのり甘みがある味付けに。「サバの締め加減も、シャリの味付けも季節によって調整します」と岡本さん。
「鯖寿司」(3000円)。仕込みから完成まで5日がかりという、こだわりの鯖寿司は竹の皮に包んで提供。
テイクアウト、地方発送もあり。焼き鯖寿司も人気
こだわりの鯖寿司をひと口かじるとみずみずしい身が、とろり、まろやか。口の中でじわじわとサバの旨みとシャリの甘みが豊かに広がる。じつにサバランスがとれた、素晴らしい味わい!
でも寿司店の鯖寿司とは違って、どこかホッとするやさしさに満ちあふれている。
「福井に帰ったら絶対食べる」「ときどき無性に食べたくなる」という在京若狭人の声がよくわかる、あたたかな味わいだ。
熊川宿のカフェの先駆け『サバカフェ』の「サバサンド」
道の駅「若狭熊川宿」の道路をはさんだ向かいに位置する「サバカフェ」。
ログハウス風のひときわ目立つ外観。テラス席もあり。ロードバイクのレンタルショップも併設
鯖寿司のあとはサバサンド!
熊川宿におけるカフェの先駆けである『Saba*Café(サバカフェ)』では、サバサンドが名物。
サバカフェは、大阪から移住してきたフォトグラファー反田和宏さんとりょうこさん夫妻が2013年にオープン。
「鯖街道沿いで提供しているサバメニューは、鯖寿司が多かったので何か違うメニューを、と思い、サバサンドの提供を決めました」とりょうこさん。
反田りょうこさん。
トルコ人留学生と知り合ったことがサバサンドを提供するきっかけになったそう
ベースはトルコ・イスタンブールのサバサンド。パンに焼いたサバ、というシンプルなものを日本人に好まれるスタイルになるように、工夫して作り上げた。
サバは、厳選した脂のりバツグンのものに、ほどよく塩をして、こんがり揚げる。パンは自家製のソフトフランス。サンドするサバに合うようにと皮はパリッ、中はふんわり食感を目指した。
味の要となるのが「特製マヨネーズ」。隠し味として「柑なんば」を使う。若狭町産「獅子ユズ」と、小浜で育てた唐辛子などを合わせたピリッと辛い新感覚のユズみそを加えたものだ。
そして分厚いボリューム満点のサバとともに、サンドするのは、たーっぷりのオニオンスライス。
「レモンをしぼって食べるのが、おすすめです」とりょうこさん。
「サバサンド」(1155円)。サラダ、フライドポテト付き。
トルコ人の方に食べてもらったところ「美味しい」と大絶賛されたとか。サバサンドの具をごはんにのせた「サバサンド丼」も好評。サバサンドはテイクアウトもあり
ではでは、レモンをギューッとしぼって……。ガブリとかぶりつくとカリふわなパン、香ばしくジューシーなサバに、ピリッとさわやかな柚子がきいたソース、レモンの効果で甘みが増したオニオンスライスが一体化して見事なサバーモニー!!
ボリュームいっぱいに見えるけれど、とってもさわやかな後味。バランスのよさと、カリふわパンのやさしさがちょうどいい塩梅で、またガブリ! またガブリ! と美味しく食べ進められる。
ぜひテラス席で、あふれる緑の木々を眺め、心地よい風に吹かれながらかぶりついてみて!
コーヒーと楽しみたい『SOL’S COFFEE LABORATORY』の「サバのキッシュ」
一昨年、熊川宿に新たにカフェがオープン、大きな話題をよんでいる。
東京・蔵前で人気の『SOL’S COFFEE(ソルズコーヒー)』が運営する『SOL’S COFFEE LABORATORY(ソルズコーヒーラボラトリー)』だ。
熊川宿の風景、そして若狭町の豊かな自然環境にほれ込んだ、オーナーの荒井利枝子さんと中島祥さんがスタッフたちと築130年の土蔵を改築。焙煎所も備えた店内は、観光客や地元常連客でにぎわう、新たな「熊川宿」のオアシスとなっている。
ソルズコーヒーのコンセプトは「毎日飲んでも身体にやさしいコーヒー」。新鮮な最良の生豆を使い、焙煎の前後に必ず2回、一粒一粒質の悪い豆や炒りムラになった豆を取り除く「ハンドピック」を行う。
この『ソルズコーヒーラボラトリー』も同様。そしてこの環境ならではの味の決め手は、若狭町の名水「瓜割の水」。名水百選にも選ばれた「瓜割の滝」の原水で、ていねいに炒れたコーヒーは香り豊かでまろやか、クリアな味わいが魅力だ。
「サバのキッシュ」(コーヒーとセットで850円)。
使用されている、福井缶詰のサバ水煮缶は、脂のりが抜群のサバを缶に入れていったん蒸し、余分な水分や脂分を除去してから加工するという独自の下処理で加工された絶品メニュー
とっておきの一杯とともに、いただきたいのが「鯖のキッシュ」。地元・福井缶詰のサバ水煮缶と小松菜、パプリカをあわせて、隠し味にしょうが、ごま油、醤油、ナンプラーを加えたアパレイユ(卵液)をパイ生地に流し込んで焼き上げる。
さっくりしたパイ生地に、とろとろ仕上がりのキッシュはサバの旨みがみっしり。小松菜との相性もバッチリだ。醤油やナンプラーの風味で輪郭はしっかりしているのに、どこか素朴でほっこり癒される味わい。しみじみ美味しい。
左から、東京の店舗から訪れたスタッフの池松亮祐さんと、現地スタッフの出口祐次さん、岩本あかねさん。
アットホームなおもてなしもソルズコーヒーラボラトリーの魅力
こちらに合うコーヒーとして、スタッフの池松亮祐さんが薦めてくれたのは「ケニアマサイAA」。
しっかりしたコクがありながら、フルーティな風味のコーヒーは、旨みのあるサバのキッシュに、しっかり、そして軽やかに寄り添う。スローな熊川宿時間にぴったりの組み合わせだ。これを幸せと言わずして何を幸せというのか!(涙)
熊川宿のNEWサバグルメ『五感キッチン かざね』
今年3月8日サバの日、新たに熊川宿にサバグルメなお店が誕生した。
有形文化財「旧逸見勘兵衛家住宅」にオープンした『五感キッチン かざね』だ。
江戸時代末期に建築された町屋を改築した、和モダンな空間で、店主の小山千秋さんが腕をふるうサバグルメが味わえる。
小山さんは、大阪出身。熊川宿に「ひとめぼれ」してしまったと語る。
「空気がきれい、お水がきれい、みんなやさしい、時間がゆったりしている。なんて素敵なところなんだろうと思いました」。
熊川宿出身のご主人との結婚を機に移住。もともと、手料理を友人たちにふるまうのが好きだった小山さん。
飲食店が少ない若狭町でお店が開けたら……という想いを実現させた。
熊川宿のスローな時間のなかで「五感を解き放ち、ゆっくり、まったり、ほっこり過ごしていただきたい」「しばし時を忘れて、風の音を聞くようにくつろいでいただけたら」との想いから『五感キッチン かざね』と名付けたそう。
「やはり、鯖街道の宿場町だからサバメニューをメインに」と開発した看板料理は「鯖キーマカレー」だ。
「鯖キーマカレー」(温泉卵、ミニサラダ、ドリンク付き1200円)。
温泉卵をのせてマイルドに味わっても美味しい
器はすべて、同じく熊川宿に昨年オープンした陶芸工房『若州窯』の陶芸家・飛永なをさんの作品。ちなみにメニュー開発は『サバカフェ』の反田りょうこさんに、ていねいにアドバイスをいただきました」と小山さん。
具はサバ味噌煮缶、そしてたっぷりのしいたけ、白ネギを合わせて、しょうが、にんにく、ブレンドしたカレー粉、若狭町産の梅干しを隠し味に和のテイストで仕上げたカレーは、なんともやさしい味わい。
コクもスパイス感もしっかりあるのに、身体になじむおだやかさ。癒し系サバカレー! 毎日食べにくるお客さんもいらっしゃるというのがうなずける。わたしも毎日食べたい!!
「サバの炊き込みごはん」も人気メニューだ。サバの水煮缶を缶汁ごと加えてしょうが、にんじんと炊き込み、ゆかりをふりかけて青じそをトッピング。サバの旨みがしみしみ、そしてゆかりのさわやかさが絶妙!またまた癒し系の美味しさだ。
時間がゆっくり流れる空間で、ほっこり鯖ごはんの幸せを噛み締めていただきたい!!
熊川宿のサバグルメはゆるりと楽しみたいスローフード
熊川宿のサバグルメは、どれもどこか、スローな「やさしい」美味しさ。できればゆったりと滞在して、のんびりゆるやかな時間を楽しみ、町並みを散策しながら味わうのがおすすめ。
古民家をリノベーションした陶芸工房『若州窯』で錫製の「サバの箸置き」を販売。裏には「さば街道」の文字! お土産におすすめだ。若狭町農産物直売所『たいしたもん屋』でも販売。ふるさと納税でも購入可能。
熊川宿には2020年、古民家をリノベーションした一棟貸しのホテル『八百熊川(やおくまがわ)』がオープン。
宿は熊川宿内に点在、建物ごとに内装も異なる。いずれも快適でスタイリッシュな空間。2021年4月には、新たに「つぐみ」、「ひばり」の2室も完成。熊川宿の静かな夜もぜひ体験していただきたい!
「ひばり」の客室。築118年の民家を改築した、風情ある空間が魅力。
キッチンスペースも設けられている
かつてはこの町を運ばれていたサバが、時を超えて続ける美味しい回遊を味わいに、ぜひ熊川を訪ねてみて。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
画像ギャラリー