「江戸東京たてもの園」で時代別に見る、東京の名建築

気持ちのいい公園に、江戸時代から昭和までの貴重な建物が点在!建築好きにはたまらない、散歩好きにももってこいのこんな建物天国があったとは!!

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江戸東京たてもの園って?

小金井公園内にある野外博物館。東京都内の現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示している。敷地面積は約7haで、園内には30棟の復元建造物が建ち並ぶ。

めくるめく建物フルコース

実は、都が運営する江戸東京博物館の分館というれっきとした真面目な施設「江戸東京たてもの園」

でも、高らかに宣言しよう、ココはホンモノの“おとなのテーマパーク”だ!

アトラクションならぬ、復元された歴史的建物は、元々は江戸中期から昭和初期までに創建された大小30棟。

園内をぶらりと歩いていると、民家から商店、交番まで、なんとも渋カッコいい建物に次々と出くわす。時代別に、その一部を紹介しよう。

江戸

およそ300年前! 世田谷の古民家の堂々たる佇まい

綱島家

園にある民家では最古の「網島家」。1700年代前半(江戸中期)の建築と推定される茅葺き民家。

一部をのぞいて天井は貼られておらず、曲がったままの太い梁がダイナミックに組まれている様子が圧巻

アルミサッシなどでリフォームされずに、オリジナルの状態が見られるこの時代の農家は珍しいという。土間に入ると「あんれ、まぁ」と心の中で訛ってしまうのはなぜだろう。

万徳旅館

創建は1800年代半ば(江戸末期~明治初期)。内部の造作などに大きな改造がないまま1993年まで旅館営業を続けていた。

万徳旅館

明治

二・二六事件の舞台となった 大政治家の自宅

「高橋是清邸」は、二・二六事件により高橋氏暗殺の現場となった建物。庭を眺める大きな窓には、表面がうねうねとした昔のガラスがはまり、なんとも言えない風情を醸し出している。

高橋是清邸

日銀総裁の他、総理大臣など要職で国政を振るった高橋是清の自邸主屋部分。伝統的な日本建築と合理的で自由な空間が融合された、近代和風の特徴が随所に見られる。1902(明治35)年に建設。

高橋是清邸


高橋是清邸

カルピスの発明者・三島海雲氏も暮らしたという「デ・ラランデ邸」は、近代の“お金持ちのお宅” という印象。

カフェになっているので、窓辺の席でひと休み。おいものパフェ、大変おいしゅうございます。

デ・ラランデ邸

平屋建て洋館を1910(明治43)年頃、ドイツ人建築家のデ・ラランデが3階建てに増築。途中で折れ曲がるマンサード屋根が美しい。

休憩はここで!

武蔵野茶房

デ・ラランデ邸の中にあるカフェ『武蔵野茶房』。特製おいものパフェ880円が人気。カレーライス1320円などの軽食もある。

万世橋交番

神田の万世橋のたもとにあった交番を、トレーラーでそっくり移築。明治後期の建築と推定。この時代らしいモダンさがある。

大正

大正期の最先端! マダム憧れの西洋風スタイル

田園調布の家(大川邸)

1925(大正14)年に田園調布に建てられた住宅。当時では画期的な全室洋間で、居間を中心に食堂・寝室・書斎が配置された居間中心型。接客空間よりも家族の団欒や家事が優先された造り。

田園調布の家(大川邸)

建物の歴史は、生活様式の変遷を映す鏡だ。「田園調布の家」は、当時最先端の郊外住宅地の一軒。大正時代の生活改善運動の影響を受け、椅子座や居間中心型プランが採用されている。

「あら、おじ様、いらしてたの?」と若き日の原節子が出てきそう。妄想が止まらず、楽しすぎ。

川野商店

1926(大正15)年に、傘作りが盛んだった江戸川区小岩に建設された和傘問屋の建物。江戸以来の町家に特徴的な格子窓が見事。

川野商店

昭和

巨匠渾身の自邸に思わずウットリ

建築の学生や建物好きたちの聖地となっているのが「前川國男邸」。世界的建築家ル・コルビュジエの弟子であり、モダニズム建築(近代建築)の旗手だった前川氏が設計、暮らした家だ。

前川國男邸

1942(昭和17)年に竣工した建築家・前川國男の自邸。サイズ制限などの戦時統制と資材不足の厳しい建築環境で、豊かな内部空間を実現。日本ならではの木造モダニズムの傑作と名高い。

前川國男邸

吹き抜けの居間は、自然光が入り、開放感あふれる空間。木製の窓枠レールなど細部に至るまで抜かりなし。

イケてる建物は、時代を超えてイケてる。

前川國男邸
木製の窓枠レール

前川國男邸

大正12年の関東大震災以降に増えた、防火素材を使い、正面を一枚の看板に見立てて自由にデザインされた看板建築群も必見。タイムスリップ感、半端なし。

大和屋本店
乾物屋の「大和屋本店」。1928(昭和3)年建築

左:武居三省堂 右:花市生花店

文具卸売業の「武居三省堂」は1927(昭和2)年建築、当時は珍しかった店舗型の花屋「花市生花店」、1927(昭和2)年建築。正面全体の装飾に各店の個性が出ている。

かつて、神社イメージを採り入れることが多かったという銭湯。「子宝湯」はその好例だ。

こんなに立派な銭湯が、東京の街なかに建っていたとは……。これからはもっと街の建物に目を向けようっと。

子宝湯

足立区千住元町に1929(昭和4)年に建てられた銭湯。当時の一般的な銭湯の建築費の2倍以上をかけており、玄関上部の唐破風と軒下の多彩な彫刻、脱衣場の折上げ格天井など、手が込んだ格式の高い造作が多数施されている。

富士山のペンキ絵や昔話を題材にしたタイル画も必見

子宝湯
軒下の多彩な彫刻

子宝湯
脱衣場の折上げ格天井

ランチはここで!

『たべもの処「蔵」』

『たべもの処「蔵」』は、武蔵野台地伝統の本格手打ちうどん店。“かて”と呼ばれる季節の野菜が付く「武蔵野うどん」650円、「かきあげ(単品)」150円など。旨い!

江戸東京たてもの園

[住所]東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
[電話]042-388-3300(代表)
[営業時間]9時半~16時半(10月~3月)、9時半~17時半(4月~9月)※閉園時刻の30分前までに入園
[休日]月(祝の場合は営業、翌火休)、年末年始
[入場料] 一般400円(65歳以上は200円)※学生、団体料金などはHPにて要確認
[交通]JR中央線武蔵小金井駅北口からバス「小金井公園西口」下車5分

撮影/松田麻樹 取材/渡辺 高
※園のデータは、2020年11月号発売時点の情報です。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在、建造物の内部公開は一部のみです。詳細はHPでご確認ください。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間等に変更が生じる可能性があります。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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