開創1200年を超える真言密教の聖地・高野山。そこで食される料理には、仏の教えに基づく意味が込められています。今回は、厳格な戒律に則った修行僧の食事をご紹介。お盆を迎えるこの時期に、真言密教の世界に触れてみませんか。
画像ギャラリー修行僧の食事
厳格な戒律の中で味わう 修行としての精進料理
厳しい修行の毎日の中で食す質素な精進料理は、修行に耐えうる体を養うとともに、仏の道を精魂込めて進む“精進”そのものでもある。
朝 下から時計回りに、小豆粥、塩、漬物
朝勤行(ごんぎょう)、下座行(げざぎょう)後に食す
朝食は、一日3食の中でも最も質素で、飯は粥が基本である。4時に起床し、朝勤行と下座行(掃除)の後に食す。
昼 左下から時計回りに、麦大豆ご飯、漬物、けんちん汁
昼食は午前中のうちに摂る
僧は朝の托鉢で得た食物を午前中のうちに食さなければならないという仏戒に則り、昼食は午前中のうちに摂る。
夕 左下から時計回りに、野菜の素揚げ粟麩のでんがく、サツマイモのレモン煮、漬物、豆腐の餡かけ
体を養う薬食(やくじき)として味わう
本来の仏戒では、僧は午後に食事を摂らないが、現代では薬食として夕食を摂る。朝食、昼食と異なり、おかずが数皿並ぶ。
精進料理の真理たる 精進のために摂る食事
高野山には宿坊で味わう精進料理がある一方で、高野山専修学院をはじめとする修行道場では、昔ながらの修行としての精進料理もある。
仏戒では、僧は朝の托鉢で得た食物を午前中のうちに食さなければならないとされている。修行道場では昔ながらの厳しい戒律のもとに毎日をくらすことになるが、食事に関しては、午前と午後に分けて一日3食を摂るのが現代では一般的になっている。
食事の内容はきわめて質素。4時に起床し、朝の勤行(ごんぎょう)と下座行(げざぎょう=掃除)を終えたのち、朝食は小食として水分の多い粥を摂る。
昼食は戒律に則って午前中のうちに一汁一菜を摂り、夕方には、おかずが数品並ぶ薬食(やくじき)と呼ばれる夕食を摂る。
毎食、長い偈文(げもん)を唱えるなど、さまざまな食事(じきじ)作法に則り、食事によって仏道に励むための命をつなぐありがたさを噛みしめながら食事をする。これこそが本来の精進料理である。
修行で気づく食のありがたさ
厳しい自然環境のもと、絶えず空腹を感じながら、早朝から夜まで修行に励む。修行僧は、その過酷な環境の中で、食のありがたさや命の尊さを学ぶ。
修行僧たちが修行に励む高野山専修学院(宝寿院)和歌山県伊都郡高野町高野山223
全寮制の高野山専修学院では、俗世と隔たった環境で、修行僧たちが心身を研ぎ澄ますようにして修行に励んでいる。
高野山には、僧になるための四度加行(しどけぎょう)を修める場として高野山専修学院(女性は高野山専修学院尼僧部)、真別処円通律寺などがある。
高野山専修学院は全寮制で修行年限は1年、尼僧部も全寮制だが修行期間は約120日間となっている。真別処円通律寺は山奥にある女人禁制の修行学院で、約100日間で四度加行を修める。
いずれの修行道場でも毎日、起床から就寝までをさまざまな戒律に則ってくらすことになる。
『高野山インサイトガイド 高野山を知る108のキーワード』
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