サバジェンヌが愛してやまない「焼き鯖すし」が、福井県小浜市『若廣』のもの。この『若廣』が新たに販売した商品が「イタリアンサバ缶」。調味液ではなくて、特製のソースが入っていて、これが絶品だという。4種類それぞれが個性を放つサバ缶をジェンヌがアツくレポート!
画像ギャラリー“邪道”と呼ばれて……「焼き鯖すし」が大ヒット商品にのし上がるまで
サバファンから絶大な人気を誇る、福井県小浜市『若廣』の「焼き鯖すし」。
羽田空港「空弁」で、5年連続売上第1位、百貨店の催事でも大人気。ジェンヌも大好きな鯖寿司だ。
創業20年にして年間80万食以上を出荷する成長を遂げた『若廣』。
「スタートは福井県坂井市三国町でした」と語るのは取締役CMOの佐野博隆さん。佐野さんは県北部に位置する坂井市に隣接するあわら市出身。若廣の創業メンバーでもある。「北陸三大祭といわれる『三國祭』に、福井ならではの名物が販売できないかという話になったとき、福井の郷土料理である『浜焼き鯖』を使った棒寿司がよいのでは、と開発したんです」。
サバを一尾まるごと串に刺して焼いた「浜焼き鯖」は、福井を代表するサバ料理。焼き立てでも、冷めても美味しい焼き鯖を使ったお寿司は、お祭りで販売してみると用意した200本がまたたく間に完売! これは、と手ごたえを得て、福井県といえばの「鯖街道」起点である小浜市に工場を構え、本格的な販売をスタートした。
ところが「最初はまったく売れませんでした」と佐野さん。いまでこそ、「焼き鯖寿司」は誰でも知るところだが、それまでは鯖寿司といえば、〆たサバが当たり前。邪道扱いだったのだ。「焼いていないのは新鮮じゃないのでは? と思う方もいらっしゃったようです」。
味には絶対的な自信があった。「食べてもらえば、わかるはず」と『若廣』ではふんだんに試食をスタート。「お客様の評価は上々。お客様の生の声を参考に商品を磨き上げていき、次第に売れ行きが伸び始めました」と当時を振り返る佐野さん。
そして2003年。小浜市で開催されたイベント「若狭路博」に出店したところ、いきなり500本が完売。しかも毎日! それまで邪道扱いだった、焼き鯖すしが、ようやく市民権を得て次第に注目を浴びるようになった。
さらに『若廣』の躍進は続く。今度は「空」だ。おりしも、ときは機内食が廃止になったことを受けて、「空弁ブーム」がはじまったころ。羽田空港で焼き鯖すしを販売するというビッグチャンスを得たのだ。その結果、商品が到着するやいなや午前中には完売! 空港内の「空弁工房」売り場ではメインを張り、1日1000本以上販売という大ヒット商品にのし上がった。
卓越した技術×素材の黄金比=至高の焼き鯖寿司
もちろん、たんにラッキーだっただけではない。『若廣』の鯖寿司は、とことんこだわりが尽くされている。
サバは漁獲時季、身質、重量、長さなどを厳しく規定して、基準にあったものだけを選ぶ。一次加工の現場も厳しくチェックする。
そして、卓越した「サバの焼成技術」。佐野さんは「焼き上がりには絶対な自信があります。他社にはマネできない、うちだけの技術だと思っています」と胸を張る。
厳選したサバは、美しい黄金色に焼き上げる。その仕上がりの秘密は、独自の調整を徹底的に施したジェットオーブン。ただし、機械頼みではない。
熟練のスタッフがサバひとつひとつのサイズや厚みなどのコンディション、そして季節に合わせて、きめ細やかに調整してこそ、輝かしいまでの「若廣ゴールド」を実現しているのだ。
美しいものは美味しい。佐野さんいわく「シュワシュワ感のある焼き上がりを目指してますね」。わかるわかる。香ばしくてふっくら、みずみずしい!
そして、鯖寿司は「サバ」のポテンシャルだけでは成り立たない。「サバ、シャリ、具の一体感、ここが重要です」と佐野さん。そのための「鯖寿司の黄金比」、正確にいえば「焼き鯖すしの黄金比」が導き出されているのだ。
米は冷めても美味しい、福井県産コシヒカリの特Aを使用。季節に合わせて、火力、水の量を調整してつややかで、ふっくらと炊き上げる。
シャリには旨みと香りを引き出すために、米酢と醸造酢2種類をブレンド、サバに合うよう少し甘めに仕上げる。
鯖寿司全体の味を引き立てるガリは、オリジナル。しょうがの繊維質、食感の規格を限定して使用。全体のバランスをとりながら、最大限にガリのパフォーマンスを上げるため、厚みや面の大きさまでこだわった削り出しを行っているのだそう。味付けももちろんサバに合わせる。
そして欠かせないのが、味のアクセントになる「大葉」。じつは、大葉は日持ちが難しい食材。「あるのとないのではまったく違うので大変ですが、独自の技術を開発しました」と佐野さんは説明する。
ひとつひとつが目指す鯖寿司を完成させる「黄金比」で作り上げられた素材は、『若廣』ならではの「手巻き製法」で仕上げられる。棒寿司といえばサバが平べったいことが多いが、『若廣』のそれはふっくらした「アーチ型」。
「鯖とシャリが一体化しながら、硬すぎず、ふわっとほどける感じ。これは機械で作り出すのは非常に難しいんです」と佐野さん。そして、この技術を持つのはなんと、社内でも数名しかいないのだそう。「力の入れ加減が難しいんです」。
その理由は、焼き鯖すしを手で持ってみると、その感触で理解できる。表現するならば「ふわっ、もっちり」。「つまって」いないのだ。なんというか「生きてる」感じ!!
いただくと、黄金色に焼き上がった焼き鯖と、福井県産コシヒカリが織り成す絶妙な一体感。程よく脂がのって、しっとり肉厚、香ばしいサバの身、ふっくらと甘いシャリが口の中に広がる。大葉とガリのアクセントが心地よく、1本食べ終えるのが、あっという間だ。
ただ、サバを焼けばいいというものではない。サバとシャリを合わせればいいというものではない。焼き鯖寿司を極めた、若廣マインドあってこそ。「焼き鯖寿司の至福」を堪能できるのだろう。
サバと特製ソースが入ったイタリアン風のサバ缶
そんな『若廣』から2020年、新たな商品が登場した。その名は「サバスチャン」。イタリアンテイストのサバ缶だ。
若廣では、新たなブランド「WAKAHIRO TOKYO」を立ち上げた。焼き鯖すしで培った製造技術をいかしつつ、洋風テイストの商品ラインナップの展開をスタートしたのだ。
「若廣のブランドスローガンは『いつもそばに、もっと鯖に。』です。サバはいろいろな食べ方ができる大きな可能性を秘めた魚。これまでにはない商品にチャレンジすることにしたんです」と佐野さん。
サバスチャンは、バジル、トマト、ガーリック、カリーの4種類を展開しているが、ただの「洋風味付きサバ缶」とあなどることなかれ。
缶の中に入っているのは「サバ」と「缶汁」ではない。「サバ」と「特製ソース」だ。
商品説明を見ていただきたい。「バジルソース」「トマトソース」「ガーリックソース」「カリーソース」である。
缶詰にはサバ+調味液、ではなくて、サバとソースが投入されているのだ。
じつは「サバスチャン」は当初、焼き鯖のほぐし身をオリジナルのソースで和えた瓶詰として発売された。しかし、より扱いやすく便利なものをと、サバ缶にリニューアルしたという経緯がある。つまりサバ缶になっても、サバもさることながら「ソース」が大きなポイントなのだ。
「サバを『ソース』で美味しく味わう、というのが商品コンセプトです」と説明する佐野さん。まさに新感覚のサバ缶である。
サバスチャンは焼き鯖すし同様、とことんこだわりぬいた原料で作られている。
サバはソースと合わせたときに、爽やかに味わえるとして宮城県石巻産を使用。ソースは、材料を吟味し、ひとつひとつサバの味を引き立てるバランスで設計。なんでもサバ缶に使ったときに「食べたとき鼻から香りが残り、舌で感じるだけではなく『記憶に残る』味」を目標にしたのだそう。
そして、またまた焼き鯖すし同様、身とソースが見事に「一体化」した「サバ缶」を目指して、身とソースの投入量、ソースの濃度、味付けの強度、フレーバー感の「黄金比」を導き出した。
さらに、サバ缶にしたことで大きな魅力が増えた。缶詰加工の工程を経てソースにサバの旨みが加わり、「極上サバソース」にバージョンアップ!
身もソースも楽しめるサバ缶は、そのまま食べても美味しく、さらにアレンジが無限大! ついでにワインも、パンも無限に!!! その「無限っぷり」を紹介しよう。
パンに合う、ワインに合う! サバスチャン<バジル>
サバスチャン<バジル>は、スペイン産オリーブオイルにバジルをたっぷり使用。チップ状、粉末の2種類を加えて風味を高め、チーズをプラスして豊かなコクのあるバジルソース入り。
缶を開けると、初夏の風が吹き渡るようなみずみずしいバジルの香り!
ちなみにサバスチャンを手掛けるのは、小浜市の「福井缶詰」。いったん蒸して、余分な水分や脂分を除去してから加工するという独自の下処理で、身は美しく、そして雑味なくまろやかな仕上がりを実現する缶詰加工を行っている。サバスチャンでもこの工程が、遺憾なく美味しさに反映されている。
ひとくち食べると、身は歯応えしっかり、ホックリ。そして口の中でバジル炸裂! サバの旨みに見事に寄り添い、一体化。爽やかすぎる!(涙)
ソースだけいただいてみると……ギャー。一般的なバジルソースがサバ効果で艶やかなグラデーションのある味わいに!!
みなさん。サバスチャンをいただくときは、パンをたっぷり用意すること!!! ソースをしみしみさせると、激ウマ。パンが無限に食べられる!
そしてサバスチャンはめちゃめちゃワインに合う!! ワ、ワインも無限に飲める!(涙)
佐野さんイチオシのアレンジレシピは、「サバスチャンバジルパスタ」。ゆでたてパスタと混ぜ合わせるだけで、もはや「リストランテ級」な味わいのパスタが完成!
レンジ加熱したサバスチャンバジルを茹でたてのパスタと和えるだけ。
ただいま淡路島で絶大な人気を誇る「淡路麺業」の「淡路島生パスタ」とサバスチャン(バジル・トマト)がセットになった「洋風サバ缶の簡単パスタセット」が、淡路麺業オンラインショップにて販売中
ジェンヌさんもアレンジしてみました。「サバスチャンバジルスクランブルエッグ」。
溶き卵に身とソースを入れて混ぜ、フライパンでスクランブルエッグに。そして仕上げに、「追いソース」! ここポイント!
なんとも爽やかなイタリアンスクランブルエッグ。白ワインがすすむ~!
美味しすぎるソースは遺憾なく使い倒すべし! たとえば身だけ味わって、残しておいてこんな使い方も!
肉にかける!
「サバスチャンバジル蒸し鶏」。旨い〜。
いやはや、いろいろ使える~! ビネガーと合わせてドレッシングに使ったり、「二毛作」なお楽しみもうれしい♪
コク深い大人風味の本格派 サバスチャン<トマト>
サバスチャン<トマト>は、オリーブオイルで玉ネギなどの香味野菜を炒め、酸味と甘みのバランスを吟味したトマトペースト、トマトピューレを加えてじっくり煮込んで仕上げたソースを使用。
食べてみる。うぅぅ。またもホクホクの身に寄り添うソースは、濃厚で深みのあるコク。大人風味の本格派。あのですね、いうならば「ケチャップ風味」ではなくて「デミグラスソース風味」。
パスタに使うと、「ナポリタン」ではなくて「ミートソース」でもなくて「本格ボロネーゼ風」に仕上がる! しかもサバのほうが美味しいってば!
デミグラス……っていったらアレでしょ、とジェンヌさんやってみました。「サバシチュー」! ニンジンやきのこを入れて煮込むことしばし。
勢いよく赤ワインが進む、こっくりシチューが完成! トマト煮ではなく、「ソース」だからできるサバスチャン技!!
後引く美味しさのソースは汎用性高し サバスチャン<ガーリック>
サバスチャン<ガーリック>は、オリーブオイルで、香りがよく辛みが少ないものをと厳選したニンニクをじっくりロースト、風味豊かに仕上げたガーリックソースを使用。
オリーブオイルとニンニク、想像つくな……という感じじゃないの! なんとも濃厚な後引くニンニクの「ソース」とサバの、後引きまくりな美味しさったら。
パン!! パン!!!! ワイン! ワイン!!
……落ち着けジェンヌ。
こちらは「アヒージョ」に使うのがオススメだそう。確かに。野菜にこの絶品ソースを染み込ませるべき! そしてパンも染み染みさせて~。
エンドレスパン状態になったジェンヌさんは、「サバ―リックトースト」にしてみましたよ。
ソース染み染みと、サバの香ばしさで、ビールやハイボールにも最高!
和風ダシでスパイシーだけどやさしい味 サバスチャン<カリー>
イタリアンから一転して「カリー」。そしてこちらはちょい和風だ。
スパイスの風味はしっかりあるけれど、ほんのり甘みがあって、子どもでも食べられる味わい
「サバスチャンはキャラクターの『サバスチャン』が世界中を旅して美味しいと思ったサバ料理を缶詰に、というコンセプト。ちょっと日本、という感じです(笑)」と佐野さん。
オリーブオイルでじっくり玉ネギをソテー。トマトペーストと、サバの良さを引き出しつつ、マイルドに仕上げるため独自にブレンドしたカレー粉を合わせ、さらにカツオ節などをベースにしたやさしい味わいのダシをプラス。
スパイスの風味は豊かなのに、ほっこりやさしいまろやかなカレーソースと一体になったサバは、「カレーうどんの肉」的な美味しさ。
もちろんうどんにもおすすめだけど、佐野さんイチオシの「焼きカリー」も絶品。
この和テイストなカレー。はっ。アレに合うのでは……と思い立ったっジェンヌさん。やってしまいました。
禁断の「焼き鯖すしカリー」。
『若廣』の黄金比の融合! 温めたサバスチャンカリー味を、焼き鯖寿司にオン!
まさかのですが、香ばしい焼き鯖とカレー風味がナイスマッチング。シャリの酸味がなんとも爽やか! 夏向き!!
ともかく、なんとも楽しみ方が無限大! 若廣のECサイトや、Instagramでも多彩なレシピが紹介されているが、いまの季節なら、アウトドアのキャンプ飯で、サバらしい料理を楽しむのに超オススメ。
手軽に本格的なサバ料理が作れるサバスチャンで、目指せ「サバ料理マスター」! ワインとパンもお忘れなくー。
取材・撮影/池田陽子
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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