大泉学園駅から歩ける場所に牛がいた! さてそろそろ牧場が見えて来る頃じゃないのかな、と目を凝らしていると、とんでもないものを見つけた!「東京ワイナリー」。帰って調べてみると、東京発のワイナリーなのだ、という。これは面白い…
画像ギャラリー練馬区は東京23区には2つしかない、JRの線路が全く通っていない区である(もう1つは世田谷区)。まぁその代わり、主に西武線があちこち走ってますけどね。そんなわけだから鉄路から離れた商店街もあるだろう、と踏んでネットで検索してて、とんでもない情報を得た。「西大泉商交会」。ここに、23区内唯一の牧場がある、というのだ。
大昔に乗った懐かしいバス路線、JRがない練馬区に向かう
商交会の最寄りは西武池袋線の大泉学園駅で、歩いて10分くらいで行けるという。ところがこれまたネットであれこれ調べてて、素晴らしいバス路線を見出した。西武バスの吉61-1系統。吉祥寺駅前と、埼玉県新座市の「新座栄」バス停とを結ぶ長距離路線で途中、大泉学園駅の周辺も走る。件の、商店街の近くも通っているようなのだ。もう、これしかないでしょう!
実はこの路線、大昔に乗ったことがあった。まだ労働省(現・厚生労働省)勤務時代の話だが、省の、泊まり込みも可の研修所が今も埼玉県朝霞市にある。その近くをこの路線が通っており、週末に家に帰る時、面白そうだと乗ってみたのだ。もちろん、どんな風に走ったかの記憶などほとんど残ってはいない。
吉祥寺から北上!
てなわけでやって来ました、吉祥寺駅。我が家からは京王線から井の頭線へ、1回の乗り換えで来られるのでとても便利。料金も178円(IC利用時)で済みます!
駅北口のバス停から乗り込むと、まずは線路沿いの道を西へ走って「吉祥寺通り」を、右折。そこからしばらくこの道沿いに、北の方角に走り続けます。途中、善福寺公園の近くも通り、「あぁここ、前に子供を連れて来たことがあるなぁ」としばし思い出に耽る。
青梅街道に出ると、左折。すぐにまた右折して武蔵関駅の近くで西武新宿線を渡る。富士街道に出ると右折して、今度はちょっと都心方向に戻り、「石神井学園前」の交差点で左折。「学芸大通り」に入ります。これをずっと北へ行けば、大泉学園駅。いったん、南口のロータリーを回り込んで元の道に戻り、駅前の総合施設ビルをコの字形に迂回して、西武池袋線の立体交差を潜り北側に出ます。
この立体交差、私が大昔にこのバスに乗った頃はまだ踏切でした。すっごい渋滞でなかなか動かなかったなぁ、などと再び思い出に浸る。ところが線路の北側に来たら、もうそんなに乗っている距離は長くない。2つ目のバス停「学園橋」で下車しました。
いやぁ初めてではなかったけど記憶はほとんど消えていたし、なかなか乗りごたえのある旅程だったな、と大満足。まずは「大泉学園通り」をそのまま先へ歩いて、停留所名の由来ともなった「学園橋」を渡る。下を流れているのは白子川。この川と寄り添うようにして走る道を歩けば、目的の商店街に至り、分かりやすいと事前に調べて知っていた。
ところが実際に来てみると件の道、交通量がかなり多いんですよ。引っ切りなしに車が行き交う。幅はそんなに広くないから、歩くには注意が必要だ。それに微妙に曲がりくねっているので、見通しが悪い。
大泉学園駅から歩ける場所に牛がいた!
さてそろそろ牧場が見えて来る頃じゃないのかな、と目を凝らしていると、とんでもないものを見つけた!「東京ワイナリー」。帰って調べてみると、東京発のワイナリーなのだ、という。これは面白い。この短期連載もこれで最終回だし(関係あるか?)、ワインを傾けて昼呑み、というのもアリかも知れないぞ!?
そうなるとますますやる気が湧いて来る。ただ、店の様子をもっと見てみたかったんだけど、何か出荷の真っ最中らしく、人が忙しく出入りしている。
まぁいいや。取り敢えず商店街を端まで見ておかなきゃならない。それから帰って来て、どうするか検討すればいいんじゃないの。
思い定めて歩き出しました。すると件の牧場は、そこからもうすぐでした。
いやいや、規模は小さいながらも確かに牧場だ。こんなのが東京23区内、それも大泉学園駅から歩いたって来れる場所にあるなんて!? もう、感激するしかない。
中に声を掛け、「ちょっと見てみていいですか」と聞くと「牛舎の中に入らなければ大丈夫ですよ」とのこと。なのでギリギリまで近づいて、牛をパチリ。いやぁ考えてみれば、牛にこんなに接近したのなんて初めてかも知れない。別の建物では子牛も寝てました。
ここ、普段はアイスの販売もしてるみたいなんだけど、今は休止中らしい。まぁどうせ、酒呑みのオッチャンはアイスなんか食べられないし、なぁ。それよりはやっぱり、さっきのワインの方が私向きでしょう。
「西大泉商交会」で見つけたお弁当屋さん、鶏の照り焼きがたまらない!
再び歩き出す。右手に大きな公園があるなと思ったら、「旧大泉村役場」の跡なんですって。天気もいいし、何かをつまみにしてここで一献、というのもいいなぁ……って、さっきからワインのことが頭から離れない。
その先にはお弁当屋「赤オニの家」があった。ちょっと覗き込んでたら、どこかから帰って来た店員さんが「どうぞ、中を見て行って下さい」だって。まだ先まで歩かなければならない。「あ、済みません。後で、また」と再出発しました。
道沿いに居酒屋を2つ、立て続けに発見。交差点に出たので道の先を見てみると、お茶屋さんに町中華、鰻屋などが軒を連ねてた。この車道沿いが商店街のメインらしい。交差点の上空には「西大泉商交会」の小さな看板が。右折してみるとその先にも中華料理店や、野菜の直売所までありましたよ(笑)。
このように飲食店はいくつか見つけたが、もう私の腹は固まっていた。さっきの弁当屋でつまみを買って、公園でワインを傾けるしかない! てなわけで、引き返しました。
ところがワイナリーに戻ってみると、作業の合間の一段落か、中で食事をしている。その邪魔をしてまでワインを購入する勇気はとてもない。やはり昼酒はやめなさい、という天の思し召しなんでしょう(涙)。悪行は諦めて、素直にお弁当を頂くことにしました。
本日の日替わり弁当は「焼魚(ホッケ)弁当」と「鶏照り焼き弁当」の2種類(どちらも630円!)。ちょっと迷ったけど、外なので骨が出るのは面倒だなと判断し、「鶏」の方にしました。振り掛けも選べたのでシソをチョイス。
コンビニで飲み水を買って、公園のベンチに腰を落ち着けます。
まずは鶏の照り焼きを一口、ガブリ。厚めにカットしてあるので歯応えがあり、ケチャップソースと絡まって、これはいい! そして付け合わせの、玉ねぎの輪切りがたまりません。同じくケチャップソースが絡まってて、相性抜群。ご飯とも合うわぁ……。
本当にいいお天気で、こんな日に青空の下でお弁当を頂いてると、心から幸せな気持ちになって来る。あぁ、いい日だぁ。そしてまた、本当にいいとこだあぁーー。あっという間に平らげてしまいました。
後で調べてみたらこのお弁当屋さん、近くで「青オニの家」という就労移行支援施設もやっていて、障害者の就労福祉の一環として色んな事業をされてるところでした。そこに、たまたま店先を覗いてたら店員さんから声を掛けられて、出会うことになったこの巡り合わせ。これも運命なんでしょうねぇ。
練馬産のワインを購入
さてさていよいよ最後の目的、あのワインです。ワイナリーに戻ってみると作業が再開されてて、忙しそうだったけど、もう遠慮はしてられない。ワイン下さい、と頼むと4本、違った種類のが並べられました。言うまでもなく全て、ここで作られたオリジナル・ワイン。どれか選べ、ったってなかなかできるものではない。
すると店員さん、「このロゼはブドウから地元、練馬産ですよ」というので、それにしました。買ってみたら蓋は王冠だし、これは公園なんかで開けられるものではありませんでしたねぇ。結果としてお水と弁当で大正解だった、ということでした。やっぱり天が、ちゃんといいように配剤してくれてたんでしょうね。
商店街を目的として回った今回の短期連載も、これで終了。また別なテーマを案出して、東京バスグルメ旅を再開する予定ですので、どうぞお楽しみに。
さぁ一仕事、終わったし。今夜はあのワインで祝杯、と行きますか!!
東京ワイナリー
[住所] 練馬区大泉学園町2-8-7
[電話]03-3867-5525
[営業時間] 11時〜17時
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]水曜
[交通]西武池袋線大泉学園駅から徒歩10分
小泉牧場
[住所] 練馬区大泉学園町2-7-16
[電話]03-3922-0087
[営業時間] 10時〜18時
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]不定休
[交通]西武池袋線大泉学園駅から徒歩9分
赤オニの家
[住所] 練馬区西大泉3-1-3
[電話]03-3922-7366
[営業時間] 8時50分〜15時
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]土、日、祝日
[交通]西武池袋線大泉学園駅から徒歩8分
西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』など。最新刊は、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)。
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