お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう! 今回は、「趣味」編の第3回。単なる「暇つぶしの手段」と思われがちな娯楽も、きちんと向き合えば学びがあるものなのです。
画像ギャラリー「タイムイズマネー」は本当だったと学んだ学生時代
大人というものは、隙間時間を有効活用している気がする。
タイムイズマネーだとか死語になっているのかもしれないけれど、無駄な時間を過ごすのは、無駄にお金を浪費にしているのと同義だと、なんだか胡散臭い大人が言っていた。
だから私は、そんな能書きばっかり垂れている胡散臭い大人の言うことなんて聞いてたまるか、と大学時代は無意義に自分の体のホクロの数を数えて時間を浪費したり、河川敷でぼーっと頭を空っぽにして時間が過ぎるのを楽しんだりしていた。
けれど今思うと、時間の浪費は、あくまでも時間を浪費しているだけであって、本当に意味がなかった。ホクロを数えたところで楽しくもないし、河川敷を眺めるよりも映画を観た方が時間は有意義に過ごせた。
まあ当然な話なのだけれど。
反骨精神というか、他人の言うことを信じない気持ちというのは、往々にして人を遠回りさせるものだ。私もその教訓を大学時代に得ることになった。
まだ若い読者諸兄姉は、私の二の舞にならないよう、大人の言うことは素直に聞くことをお勧めしたい。
オンラインゲームで感じた言葉の“強さ”
それからというもの、私は隙間時間を有効利用するよう心がけることになった。
最近では、携帯アプリゲームをよくやる。プレステやスイッチも家にいる時は頻繁にやるのだけれど、地方ロケが多い身としては、携帯ゲームは手軽に隙間を埋めることができて非常にいい。
その中でも、Skyというアプリゲームをよくやる。このゲームは誰かと戦うわけではなく、とても美しい世界の中を、自分の分身であるアバターを操作して飛び回って景色などを楽しむ穏やかなゲーム。
不特定多数の人とオンラインで繋がっているゲームなのだけれど、このゲームの特徴として、プレイヤー同士は直接言葉は交わせない仕様になっている。
Skyの世界では、相手に気持ちを伝えたい時は、多種に渡るジェスチャーをすることで、見ず知らずの相手へ意思を伝えたり、コミュニケーションを図るのだ。
ここで強く感じるのは、いかに言葉というのは強いツールかということだ。
他のオンラインゲームだとチャットや通信で喋ることでコミュニケーションをとることが多いけれど、やはり攻撃的な言葉が行き交うことが多々ある。
プレステで銃を敵と撃ち合うエーペックスというゲームでは、おそらく中学生くらいの子に「お前しっかり戦えよ、役立たずが!」と罵られることもあるし、サッカーゲームで知らない人と対戦したら「クソ雑魚すぎてつまらなかったわ」とわざわざメッセージを送られたこともあった。
世も末すぎるだろ。なんだこの世の中は。ゲーム下手なだけでここまで言われんのか。
ゲームを通じて得た学び
ただ、それも直接言葉を交わすから起きる現象であって、その点、Skyというゲームの世界では、言葉のやりとりがない。
自分が何か粗相をしたとて、他のプレイヤーはジェスチャーで意思を伝えるしか方法はないため、結果として、それを見ても自分の恣意的なニュアンスで捉えることができる。
だから、文字のやりとりがないだけで、他者とのやり取りにストレスを感じることもなくなるし、心穏やかにゲームをすることができるのだ。
今日も見ず知らずの人と一緒に空を飛んだりすると思うけれど、きっとこれが言葉を交わせるようになってしまったら、こんな純粋に楽しめなくなってしまうのだろうなあとも思う。
余計な言葉というのは、人を傷つけるし、自分も気をつけなければならないなあと改めて考えさせられる。
隙間時間でゲームをやるのは、単に娯楽で埋めているだけではなくて、得られるものは確かにあった。
確かに、時間は有効活用した方がよかったです、と、あの胡散臭い大人に謝らなければならない。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で披露した絵の実力も話題になるなどマルチな活動で注目を浴びている。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』は登録者数25万人超え。