2000年代に全国的に広まる 答えは(3)です。ここ数年、節分当日に恵方巻の「売り切れ」の表示をみかけることが多くなったのは、予約販売を中心とし、当日の販売量を制限する販売者が増えたためと考えられます。 節分に恵方巻を食…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「恵方巻」です。
文:三井能力開発研究所・圓岡太治
歳徳神の方角
節分の日に食べる「恵方巻」。心の中で願い事を唱えながら、「恵方」に向かって無言で恵方巻(太巻き)を最後まで丸かぶり(丸かじり)すると願いが叶うとされています。「恵方」とは、歳徳神(としとくじん。その年の福徳を司る神)が正月に来臨する方角とされ、十干十二支の組み合わせで決まり、年により異なります。2023年は「南南東やや南」です。
ところでここ数年、節分当日に恵方巻を買おうとしても、「売り切れ」の表示を見かけることが多くなり、予約しなければ手に入りづらくなってきました。その理由としてもっとも適切なのは以下のどれでしょうか?
(1)恵方巻の需要が増えたため生産が追い付かなくなったから
(2)原材料が手に入りにくくなっているから
(3)販売者が当日の販売量を制限するようになったから
2000年代に全国的に広まる
答えは(3)です。ここ数年、節分当日に恵方巻の「売り切れ」の表示をみかけることが多くなったのは、予約販売を中心とし、当日の販売量を制限する販売者が増えたためと考えられます。
節分に恵方巻を食べるのは比較的新しい慣習で、2000年代に入り急速に全国に広まりました。家計調査を行っている総務省の資料(平成27年)によると、恵方巻を含む「すし(弁当)」への支出は、人が集まって飲食する機会の多い12月がもっとも多く、次いで2月が多くなっています。そして2月の中でも、節分の日(2月3日)だけが突出しています。これは恵方巻単独の調査結果ではありませんが、資料では「節分の日に恵方巻を食べるという風習が家計調査の結果にもしっかり出ている」としています。
恵方巻の市場規模は、2018年は290億円、2020年には316億円と、徐々に拡大してきました。しかし一方で、節分後の恵方巻の廃棄が社会的な話題となりました。恵方巻は期間限定商品で、日持ちもしないことが大きな原因だと考えられています。
そのような中、農林水産省は、食品小売業者に対し、需要に見合った販売をして恵方巻のロスを減らすよう、2019年から毎年呼びかけています。農林水産省等の提供するPR資材を活用して恵方巻のロス削減に取り組む事業者や、需要に見合った販売などの恵方巻のロス削減に向けた取り組みを行う事業者を募集したところ、全国各地のスーパーマーケット、生活協同組合、大手コンビニチェーンなどが応募し、参加事業者数は2020年が43、2021年は65、2022年は77と、年々増加しています。その結果、節分の日の恵方巻のロスは、多少のぶり返しもあるものの、2018年以前に比べ減少しているとの報告が出ています。
(参考)
[1] 恵方巻への支出(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/27_2.pdf
[2] 季節食品のロス削減(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/kisetsusyokuhin.html