かつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さん…
画像ギャラリーかつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、入学試験シーズン真っただなかに集中連載でお届けします。
心の負担を軽くする言い方で、一歩が踏み出しやすくなる
漠然と大きな目標を立てて達成しようとしても、何から始めていいのかわからないものです。目標までの道のりを、少しずつ区切りながら進めていったがほうが、心の負担も軽くなり、最初の一歩を踏み出しやすくなります。
たとえば、「読書感想文を書く」という宿題が出たとします。そこで、真っ白い紙1枚を渡されて、「自由に書いてみてごらん」と伝えられても、何をどうしたらよいのか困惑してしまうでしょう。そんなときは、「まずは、ここまでやってみよう」という「切れ目」を入れてあげてください。
「まず3行だけでも」チャレンジさせる
文章を書くなら、原稿用紙のように書くスペースを枠で区切ってあるほうが、取りかかりやすいでしょう。そして紙を前にしたら、「まずはタイトルをつけてみよう」とうながします。
それから、最初の数行で、「本のあらすじを書いてみよう」。その後、「印象に残った部分はどこか?」「それに対する自分の感想はどんなだったか?」など、書く内容をこまかく区切るようアドバイスしてみましょう。
1枚の原稿用紙をいきなり「全部埋めて」と言うよりも、「まず3行だけでも書いてみて」とチャレンジさせるほうが、はるかに書きやすくなります。3行書いたら、また3行書くというように少しずつ進めていくと、いつのまにか1枚が終わっているものです。
最初の階段の1段目は、やさしいことから
このように、やるべきことをこまかく刻んでいくことを「チャンクダウン」といいます。チャンクとは「塊」のこと。やるべきことが細分化されると、頭の中が整理されてぐっと行動しやすくなります。
何も区切られていない状態から、いきなり全部、「やってみて」と言われても、作業を進められないことが多いものです。ですから、最初の階段の1段目を、赤ちゃんが上れるくらいの高さに設定するのです。これを「ベイビーステップ(スモールステップ)」といいます。簡単にできそうなやさしいことから、少しずつ取り組ませることで、負担が大きいと感じる作業を気軽に進めることができます。
誰でもスタートするということが、いちばんむずかしいものです。子どもが「大変だからやりたくない」「面倒くさい」と思っていることに対しては、内容を細分化するのがいちばんです。「それくらいならできるかも」と思わせることで、手をつけやすくなるはずです。
「とりあえず5分」と時間で区切るのも有効
また、内容ではなく、時間で区切ることも有効です。「とりあえず5分だけやってみて」という言い方をすれば、行動するまでの心理的負担が少なくなり、腰が軽くなります。
いきなり、「1キロをランニングしなさい」と言われても、大変そうで踏み出すには勇気がいるでしょう。最初は「とりあえずランニングシューズを履いてみて」「とりあえず10メートル走ってみて」と小さく区切りを設けてあげることで、子どもに「できそう」と思わせることが大切です。
マンガと文/杉山奈津子(すぎやまなつこ)
杉山塾代表。1982年、静岡県静岡市に生まれる。静岡雙葉高校3年時の実力模試は「偏差値29」だったが、独学勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。2006年、東京大学薬学部を卒業後は、作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活動。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、小学生~高校生の学習塾代表として活動中。近著に『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー/講談社)がある。