矛盾した言葉は、子どもに強いストレスとなる このようにふたつの矛盾した言葉で、相手を混乱させてしまうことを、「ダブルバインド」といいます。イギリス出身でアメリカの文化人類学者であるグレゴリー・ベイトソン氏が発見したコミュ…
画像ギャラリーかつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、新学期へ向けて集中連載でお届けします。
値段を見たら高かったので、前言撤回。ありがちだが……
スーパーで、「好きなお菓子を買っていいよ」と言ったときのやりとりです。子どもがウキウキしながらお菓子を選んできても、値段を見たら高かったので、「あ、これはダメ! 別のにして」とダメ出しをしてしまったことはありませんか。
子どもにすれば、最初、なんでも好きなお菓子を買っていいと言われたから選んだのに、自分の好きなものを持ってきたら、否定されてしまったわけです。親は、「なんでも選んでいい」に近い発言をしましたが、実はその中に、「親が認めたものならばいい」という異なるメッセージを、暗に含んでいたわけです。
矛盾した言葉は、子どもに強いストレスとなる
このようにふたつの矛盾した言葉で、相手を混乱させてしまうことを、「ダブルバインド」といいます。イギリス出身でアメリカの文化人類学者であるグレゴリー・ベイトソン氏が発見したコミュニケーションの形で、「二重拘束」とも呼ばれます。
ほかにも、「早く勉強しなさい」と言ったそのあとすぐに、「そこの散らかした物を片づけなさい」などというのも、ダブルバインドです。同時にふたつのことをやるなんて不可能なわけですから、子どもはどう行動すればいいのかわからなくなり、精神的に強いストレスを感じてしまいます。
私たちは日頃から、意外と頻繁にダブルバインドを使ってしまっているものです。「わからないことがあったら聞きなさい」と言いつつ、実際に聞かれたら、「すぐに人に聞かないで、自分でもよく考えてみなさい」なんてことを言ってはいないでしょうか。
または、「怒らないから言ってみて」と言いつつ、正直に話したら、「どうしてそんなことをしたの」と、しかってしまった経験はありませんか?
評価された子どもは、「そうなのか」と思い、「今後もできるかもしれない」という気持ちになるはずです。
マンガと文/杉山奈津子(すぎやまなつこ)
杉山塾代表。1982年、静岡県静岡市に生まれる。静岡雙葉高校3年時の実力模試は「偏差値29」だったが、独学勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。2006年、東京大学薬学部を卒業後は、作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活動。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、小学生~高校生の学習塾代表として活動中。近著に『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー/講談社)がある。