「独学力」向上!トレーニング受験理論

“不正解学習”が数学力を上げる!「失敗に学べ」ビル・ゲイツの言葉

「不正解から学ぶ学習」を実践している受験生は多くない 成功から学べることと失敗から学べることがあるように、数学の学習においても、「正解から学ぶ学習」と「不正解から学ぶ学習」とがあります。 前者は多くの生徒が取り組んでいる…

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「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第21回は、天才たちの言葉を引きながら「失敗」から学ぶ学習法について考えます。

間違った箇所を「消さない」

生徒が問題を解く途中で間違いを犯して行き詰まった時に、どこが間違っているかを指摘すると、「あ、そうか」と言ってすぐに間違った個所を消しゴムで消そうとします。そのとき私はあわてて「消さないように」とその手を止めます。

なぜなら、その間違った個所にこそ、問題点が潜んでいるからです。それを改善することが、問題を解けるようになるためには大事です。そのため、自分がどのような間違いをしたかをしっかり意識できるように、間違った個所は消さずに残しておく方が良いのです。教える側から見ると、間違いは課題を見つける宝庫です。

アインシュタインやエジソンも言っている「失敗の効用」

物理学者のアルバート・アインシュタイン(1879~1955年)、発明家のトーマス・エジソン(1847~1931年)、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ(1955年~)。歴史に名を刻むこの3人の天才は、次のようなことを話しています。

「一度も失敗したことがない人は、何も新しいことに挑戦してこなかった人である」
Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.
(アルバート・アインシュタイン)

アインシュタインの言葉

「私は落胆することはない。なぜなら、失敗はすべて前進のための一歩となるからだ」
I am not discouraged, because every wrong attempt discarded is another step forward.
(トーマス・エジソン)

エジソンの言葉

「成功をたたえるのは良いが、より大事なのは失敗から教訓を得ることだ」
It’s fine to celebrate success, but it is more important to heed the lessons of failure.
(ビル・ゲイツ)

ビル・ゲイツの言葉

失敗から何を学び、その後にどう活かしていくかが大事だと、多くの成功者が異口同音に唱えています。その意見に同意する人は多いことでしょう。しかし同じように成功できる人が多くないのはなぜでしょうか。その理由の一つとして、成功者ほどには失敗から多くを学んでいないことが考えられます。

ある問題について、解ける=「成功」、解けない=「失敗」だと考えると、数学の学習の場合も同様です。数学が苦手な生徒は、失敗(問題が解けない)から成功(問題が解ける)につなげることがなかなかできません。問題が解けなかったときに、そこから学ぶ力が弱いことがその一つの原因です。

「不正解から学ぶ学習」を実践している受験生は多くない

成功から学べることと失敗から学べることがあるように、数学の学習においても、「正解から学ぶ学習」と「不正解から学ぶ学習」とがあります。

前者は多くの生徒が取り組んでいる方法で、問題が解けなかったら解答を見て、解き方を頭に入れるという学習法です。その際応用力を養うためには、以下のように思考力の伴った学習をする必要があることを以前述べました。

・解答を見る前に問題と格闘する
・解けなければ、解答を少しずつ見て、解けるところはなるべく自力で解くようにする
・解答を頭に入れたら、数日後に自力で解き直しをする
・その後ある程度の間隔を置いて解き直しを何度か繰り返し、定着させる

一方、「なぜ解けなかったのか」ということに焦点を当てて、課題を見つけ出し、それを克服することで学力を上げるのが「不正解から学ぶ学習」です。こちらの学習も非常に効果的ですが、実践している生徒はそれほど多くはありません。

人はプラスを得ることには積極的ですが、マイナスを埋め合わせすることには消極的な傾向があるようです。

問題が解けない9つの原因

「不正解から学ぶ学習法」では、問題が解けなかったとき、なぜ解けなかったのか、その原因を探ります。

問題が解けないときの原因として、主に以下の9つが考えられます。

・設問の意味を理解していない、意味を取り違えている
・与えられた条件をすべて使っていない
・必要な定理・公式が頭に入っていない
・典型的な解法が身に付いていない
・解く糸口の見つけ方が分からない
・計算ミス、ケアレスミス
・誘導に気づかない(小問連続問題の場合、前の結果を使っていない)
・時間が足りなかった(テストの場合)
・考える前にすぐあきらめる

必要な定理・公式が頭に入っていなければ、その問題に関連する定理・公式を見直して身に付ける必要がありますし、計算ミスやケアレスミスが原因であれば、なぜそのミスをしたのか、そのようなミスをしないためにはどうすればよいかを考えることとなります。問題を解く糸口の見つけ方についても、さまざまな方法があります。これら一つ一つについて詳細に述べるのは控えますが、解けない原因を分析することで、どのような課題があるかが浮かび上がり、どのような勉強が必要なのかが明らかになります。

数学が出来るようになるためには、行きつくところ、解けない問題を解けるようにしていくことです。それには2つの方向性があります。「正解から学ぶ学習」は新しいものを身に付けていく学習ですが、「不正解から学ぶ学習」は、弱点や身に付いていないものを洗い出し、それを克服していく学習です。この両輪を駆使することで、より高い学習効果が得られます。

【トレーニング受験理論とは】
一流アスリートには常に優秀なトレーナーが寄り添います。近年はトレーニング理論が発達し、プロアスリートやオリンピック・メダリストはプロトレーナーから的確な指導を受けるのが常識。理論的背景のない我流のトレーニングでは、厳しい競技の世界で勝ち抜けないからです。自学自習が勉強時間の大半を占める受験も同様です。自学自習のやり方で学力に大きな差が出るのに、ほとんどが生徒自身に任されて我流で行われているのが実情です。トレーナーのように受験生の“伴走者”となり、適切な助言を与えながら、自学自習の力=独学力を高めていく学習法です。

トレーニング受験理論

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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