近年街のいたるところで見かける“家系ラーメン”。海苔、チャーシュー、ほうれん草がのった豚骨醤油ラーメンは、濃厚ゆえ手がのびない人もいるでしょう。しかし、最近洗練されたものが登場しています。そんな“おとなの家系”をご紹介し…
画像ギャラリー近年街のいたるところで見かける“家系ラーメン”。海苔、チャーシュー、ほうれん草がのった豚骨醤油ラーメンは、濃厚ゆえ手がのびない人もいるでしょう。しかし、最近洗練されたものが登場しています。そんな“おとなの家系”をご紹介します。
『こいけのいえけい』 @巣鴨
おとな世代も納得!家系小池スタイルは品良く軽やかな旨さ
湯気の立つスープを口へ運べば、すっと舌に溶け込むような、そのなめらかさに目を見張った。こちらは淡麗系煮干しで人気の『らぁめん小池』が不定期に出していた限定の味を引っさげ立ち上げた新ブランドだ。
豚骨醤油ラーメン(並) 850円(味玉+110円)
豚のゲンコツや背ガラ、鶏ガラを4日間炊いて寝かせたスープに、同系列の『キング製麺』で作るあえて切り口を粗くした麺がしっかりと絡み合う。“家系”からイメージする味の濃さやワイルド感は残しつつも品良くまとめ上げた1杯だ。「麺少なめ+半ネギチャーご飯」(1000円)のセットは我々おとな世代にもありがたい。
【ココがおとな!】丹念な“濾し”で生まれるなめらかさ
スープのなめらかな舌あたりの秘訣、それは仕上げの“濾し”にあり!できあがったスープは目の細かいザルに通しザラつきの元となる細かなガラも徹底的に排除。このひと手間が味わいに大きな違いを生んでいる。
[住所]東京都文京区千石4-25-6 夏野マンション102
[電話]非公開
[営業時間]11時〜15時、17時半〜21時
[休日]不定休
[交通]JR山手線ほか巣鴨駅南口から徒歩6分
『家系ラーメン 革新家 TOKYO』 @東京駅
厳選食材で作る やさしく、穏やかな革新的な家系
ヴィーガンやグルテンフリーなど業界に新風を巻き起こす『ソラノイロ』が今度は「家系ラーメンに革新を起こす!」をテーマに東京駅に出店した。
ふわりと豚骨の香り漂うスープは、家系らしい力強さはありつつも、熊本産の天草大王をはじめとした国産鶏ガラの軽やかさも加わったやさしい味わい。
革新家スペシャル 1380円
「春よ恋」、「ゆめちから」と2種類の小麦粉をブレンドした平打ち麺をすすればプリッとした弾力から、おだやかな甘みが返ってきた。燻香をまとったチャーシューに歯触りのよい江戸菜など名脇役がその完成度をさらに高めている。
【ココがおとな!】アオサ入りの高級海苔 その存在感は主役級!?
スープに浸して麺やご飯を巻いて食す海苔は家系になくてはならないトッピングだ。こちらはしっかりと厚みもあるアオサ入りをチョイス。磯の風味も満点で、スープにも麺にも負けない存在感を放っている!
[住所]東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅一番街地下1階
[電話]03-3214-0181
[営業時間]10時半〜23時(22時半LO)
[休日]無休
[交通]JR山手線ほか東京駅八重洲地下中央口改札から徒歩1分
『銀座 嚆矢(こうし)』 @銀座
黒豚豚骨スープの甘みに麺が寄り添う家系の一級品
キリリと白衣を着込んだ職人に、木の温もりを感じるカウンター席。割烹さながらの風情に背筋も伸びる。鶏白湯の行列店『銀座 篝(かがり)』が次に注目したのが、この鹿児島県産黒豚の豚骨スープなのだ。霧島山系から流れてくる地下軟水でじっくり煮込んだそれは、豚骨特有のクセがなく甘みもまろやか。
黒豚豚骨醤油ラーメン 1300円
数種類をブレンドし醤油の風味を立たせたカエシが後から追いかけ舌を引き締める。味の染みた国産豚チャーシューに、北海道産「きたほなみ」100%で打つ端正なコシのオリジナル麺。素材をつき詰め、丼の中で緻密に重ね合わせたその出来映えに拍手!
【ココがおとな!】生産者と向き合う黒豚スープ
実はこのスープ、SDGsにも貢献している。全国に流通される肉とは異なり、多くが廃棄されていた黒豚の骨を利用できないかと生産者から相談を受け開発がスタート。フードロス問題解決の一助にもなっている。
[住所]東京都中央区銀座6-4-13 浅黄ビル1階
[電話]非公開
[営業時間]11時〜15時LO、17時〜21時LO
[休日]日
[交通]地下鉄丸ノ内線ほか銀座駅C2出口から徒歩3分
『ラーメン家 がんくろ』 @武蔵小山
とろりなめらか 濃厚スープに浮かぶモチモチ麺の存在感
「今の自分が一番食べたい家系をかたちにしました」とは『せたが屋』などを手がけるMr.ラーメン前島さん。前日に豚ゲンコツを炊き、翌日ロース骨(背骨)と鶏ガラのダシを重ね合わせたスープに、醤油のキレを持たせたカエシを合わせれば、濃厚なのにライトな飲み心地でレンゲを運ぶ手が止まらなくなる。
ラーメン 850円
さらに麺だ。やや太めに仕上げた自家製麺はモチモチとしたコシから小麦の風味が膨らんで、スープに負けない存在感。ちなみに店名は、コロナ禍の赤字を“がん”ばって“くろ”字にする、という意味も込められているんだとか。
【ココがおとな!】旨さを引き出す低温のオーブン焼き
家系では吊るし焼きして燻香をまとったチャーシューが主流だが、こちらはあえてオーブンで豚肉の味をストレートに表現。タレに2晩漬け込み、低温でじっくりロースト。豚バラと肩ロースの2種類をのせている。
[住所]東京都品川区荏原3-3-20
[電話]03-6426-4410
[営業時間]11時〜21時LO
[休日]火
[交通]東急目黒線武蔵小山駅東口から徒歩4分
人気店が独自に解釈 ライトな家系が美味
みなさん、家系ラーメン好きですか?本誌「おとなの週末」のメイン読者である、私周辺の中高年層にインタビューしたところ、「もうムリ。ちょっとヘビーだよね」ってな意見が大半だった。
でも最近、そんな家系にムーブメントが起きていた!それが、既存のラーメン店が独自解釈の家系を立ち上げるパターンなのだ。ガチの家系とは味わいもちょっと異なりライト寄り。
「2〜3年前から、家系ラーメンの盛り上がりを感じていました」と話すのは『せたが屋』はじめ、いつくもの業態を手がけてきた前島さん。一昨年、オープンさせたのが『がんくろ』だ。
店内で炊くスープは時間経過と共に味が変わり、開店直後は軽やかでフレッシュ。徐々に濃厚へと変化するので、さっぱりを求める人は11時頃か、再仕込み後の17時半頃を狙ってみては?
見た目にも洗練された一杯を出すのが『こいけのいえけい』。チャーシューはしっとり低温調理の薄切りだし、王道のクタクタほうれん草も、この店では色鮮やかな小松菜だ。クリーミーなスープは重すぎず、でもしっかり家系らしさも感じられる絶妙のバランスだ。
素材をとことん追求したのが次の2軒。まず『銀座 嚆矢』は、スープの要となる豚骨を鹿児島の黒豚に限定している。さすが黒豚は骨まで旨い。いわゆる豚骨臭ってものがほとんどない上に甘みとコクはしっかり。トッピングや麺まで国産食材に限定している。
もう1軒が『革新家』。スープやチャーシューに厳選素材を使うのはむろん、海苔までもラーメンに合わせて選んだ一級品。スープに浸して麺やご飯を巻いて食べてみてくださいって。飛ぶぞ。
胃腸の弱りを実感する世代にも、おいしく食べられる家系ラーメンは確かにあった。ここぞとばかりに、ご飯と一緒にがっついちゃって!
撮影/小島昇(こいけのいえけい、革新家 TOKYO)、西崎進也(嚆矢、がんくろ)、取材/菜々山いく子
※2024年2月号発売時点の情報です。
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