本誌『おとなの週末』の連載『往復書簡』でもおなじみ、タベアルキスト・マッキー牧元さんの「立ち食いそば」連載。第6回は秋田駅の駅そば店へ。地元民でなければ、馴染みがない? 「ぎばさそば」を食べました。
画像ギャラリー食感が心地よい「ぎばさそば」
ぎばさ。
なにか怪獣の名前のようだが、海藻のことである。
海藻のアカモクを、秋田の人はこう呼び、愛しているのだという。
秋田の駅弁屋、『関根屋』が展開する駅そばの店『しらかみ庵』には、「ぎばさそば」がある。これはどうあっても頼まなくてはいけない。
そこで温かい「ぎばさそば」を頼んだ。
まずツユをひと口飲む。甘めのツユである。
次にぎばさと蕎麦をひとすすりする。ぎばさのぬるぬるが蕎麦と一体になって口元に登ってくる。
ぬるぬる、ずるずる、とろんとろん。
ぎばさの粘りが、唇、歯、上顎、舌、喉を通過していく。その中を細い蕎麦が通り抜ける。
この食感が、心地よい。
最近、人間は粘るものに対して、おいしいと感じるセンサーがあると発表されたらしいが、まさにそのセンサーを刺激しているではないか。
ぬるぬる、ずるずる、とろんにハマり、一気に食べ終えた。しかし丼の底には、食べ逃したぎばさと蕎麦の破片が残っている。
これを最後にずるると飲む。するとまたあの心地よい粘りが口を満たし、笑ってしまうのだった。
『しらかみ庵』もうひとつの名物を食す
実はこの『しらかみ庵』もうひとつの名物があった。
「生稲庭うどん」である。
秋田名物の稲庭うどんを出す店は、市内に多くあるが、そのほとんどが乾麺で。生を出す店は珍しい。900円は、駅そばにしては高価だが、頼んでみた。
白く輝くうどんが、ザルに盛られている。濃いつけ汁におろし生姜とネギを落として味を締め、うどんをつけて食べる。
つるるる。
生稲庭うどんは、唇にやさしい。
ふんわりと触れながら口の中に入ってきて、10回ほど噛めば、消えていく。
うっすらと、麺自体に甘みがある。
時折硬い麺がいて、20回ほど噛むこともあるのが、生うどんらしい。
これもその食感を楽しみながら、一気に食べ終えた。
■『駅そば しらかみ庵』
[住所]秋田県秋田市中通7-1-2 秋田駅2階
[電話番号]018-825-9540
[営業時間]7時〜20時(19時45分LO)
[休み]無休
[交通]JR秋田駅中央改札口前
取材・撮影/マッキー牧元
画像ギャラリー