食感が心地よい「ぎばさそば」
ぎばさ。
なにか怪獣の名前のようだが、海藻のことである。
海藻のアカモクを、秋田の人はこう呼び、愛しているのだという。
秋田の駅弁屋、『関根屋』が展開する駅そばの店『しらかみ庵』には、「ぎばさそば」がある。これはどうあっても頼まなくてはいけない。
そこで温かい「ぎばさそば」を頼んだ。
まずツユをひと口飲む。甘めのツユである。
次にぎばさと蕎麦をひとすすりする。ぎばさのぬるぬるが蕎麦と一体になって口元に登ってくる。
ぬるぬる、ずるずる、とろんとろん。
ぎばさの粘りが、唇、歯、上顎、舌、喉を通過していく。その中を細い蕎麦が通り抜ける。
この食感が、心地よい。
最近、人間は粘るものに対して、おいしいと感じるセンサーがあると発表されたらしいが、まさにそのセンサーを刺激しているではないか。
ぬるぬる、ずるずる、とろんにハマり、一気に食べ終えた。しかし丼の底には、食べ逃したぎばさと蕎麦の破片が残っている。
これを最後にずるると飲む。するとまたあの心地よい粘りが口を満たし、笑ってしまうのだった。