【テイクアウトできる正統派&アレンジいなり】 『だしいなり海木』 @日本橋 じゅんわりダシのお揚げにほっと一息 福岡の日本料理屋『海木』から生まれたのがこちらの「だしいなり」。コース料理の最後に出す一品だったものをそのま…
画像ギャラリーおにぎりに次ぐ庶民の軽食、いなり寿司。関東では甘じょっぱい味付けが一般的だが昨今のいなり寿司はそれだけじゃない!寿司屋やテイクアウト店で見つけた三ツ星のいなり寿司をご紹介します。
【寿司屋のいなり】
『寿司 高はし』 @駒込 ※「高」は正しくははしごだか
ふんわりシャリから香り立つ、ごまと柚子
ぷっくり膨らんだきつね色の衣にかぶりつく。ほろりと崩れた酢飯からごまの香りが広がって、その芳醇さを噛み締めれば、柚子が清らかに駆け抜ける。
ごま入りのいなり寿司はかつて店主の母がお弁当に持たせてくれたものだった。母の味を磨き上げ生まれたのが、『高はし』のいなり寿司だ。
特製いなり寿司 216円
シャリはあえて新米を使うことでふんわりと。酢を穏やかに効かせているから米自体の甘みもお揚げの風味も引き立つ。くるりと折り込まれたお揚げの端っこの食感もいい。
美は細部に宿る。いなり寿司なのに、この言葉が似合ってしまうのは職人が作るからこそなのだろう。
[住所]東京都豊島区駒込1-42-2 102
[電話]03-3947-5125
[営業時間]12時〜20時半、木は12時半〜20時半
[休日]火・水
[交通]JR駒込駅南口から徒歩2分
『秀徳本店 恵』 @築地
二色のお揚げにごろっ入った贅沢具材
白と黒。2色のいなり寿司の中には、それぞれ車エビと子持ち昆布、煮穴子と実山椒がイン。なんて贅沢なんだろう!
なんでもコロナ禍でいつも通りの営業ができなくなった折に持ち帰りメニューとして「原価は考えずに特別ないなり寿司を」と社長命令で作られたのだそう。
助六いなり 一人前半 2200円
白いなりは子持ち昆布がぷちっ、蓮根がシャキッ。黒いなりは煮穴子がしっとり、枝豆がほくっ。バラエティに富んだ食感と味わいが楽しい。いやはや、太っ腹な社長の計らいに感謝だ。
[住所]東京都中央区築地6-26-7
[電話]03-6278-8544
[営業時間]11時〜15時(14時半LO)、17時〜22時半(21時半LO)
[休日]なし
[交通]地下鉄日比谷線築地駅1番出口から徒歩6分
『おつな寿司』 @六本木
裏返しのお揚げが舌に伝える煮汁の味
明治8年。六本木におつなさんという女性が茶店を開いた。そこで名物となったのが柚子風味のシャリを裏返しのお揚げで包んだいなり寿司だった。後に江戸前握りも出すようになり現在に至るが、今でも『おつな寿司』の名物といえばいなり寿司だ。
のり巻いなり 1130円
大きめに刻まれた柚子皮はほろ苦く喉の奥でふわっと香る。裏返したお揚げはざらっと舌に触れて染み込んだ煮汁の味を伝えてくれる。甘みとコク、後味の爽やかさが絶妙だから食べ疲れナシ。握りの〆にいただきたい。
[住所]東京都港区六本木7-14-4
[電話]03-3401-9953
[営業時間]11時半〜14時、17時〜22時
[休日]不定休
[交通]地下鉄日比谷線ほか六本木駅7番出口から徒歩1分
【テイクアウトできる正統派&アレンジいなり】
『だしいなり海木』 @日本橋
じゅんわりダシのお揚げにほっと一息
福岡の日本料理屋『海木』から生まれたのがこちらの「だしいなり」。コース料理の最後に出す一品だったものをそのままに日本橋でも提供している。
いつでも出来立てのいなり寿司は鰹ダシを吸った柔らかなお揚げが特徴で、食べればダシがじゅわっと口に広がる。この和の風味とやさしい甘さに、気づけばほっと息をついてしまう。
だしいなり(4個入) 1490円
[住所]東京都中央区日本橋室町3-2-1 コレド室町テラス1階
[電話]03-6262-7824
[営業時間]11時〜19時
[休日]不定休
[交通]地下鉄銀座線三越前駅A8出口から直結
『いなし寿司 味吟』 @押上
老舗の味は秘伝のタレと手間暇が肝心
創業50年になる老舗いなり寿司店。こちらも出来立てを提供してくれる。
蓮根や人参入りの五目ご飯はふかふかでお揚げは薄めなのにジューシー。継ぎ足して使う秘伝のタレでじっくりお揚げを煮込み、お米は人の手でやさしく包む。仕込みも全て手作業という手間暇がこの味を作っているのだ。
いなり寿司( いなり、のり巻各4個入) 850円
[住所]東京都墨田区業平2-14-6
[電話]03-3623-3950
[営業時間]8時半〜15時 ※売り切れ次第終了
[休日]月・火
[交通]地下鉄半蔵門線ほか押上駅A2出口から徒歩2分
『YUKIYAMESHI』 @中目黒
旬の食材を使い目に麗しく舌においしい
料理家の寺井幸也氏が手がけるケータリング店のいなり寿司は見た目以上に料理としての完成度が高い!
たとえば柔らかいローストビーフと菜の花。これが白米、玄米、黒米など7種をミックスしたシャリ、お揚げと三位一体を奏でる。月替わりで種類が変わるのも季節感を楽しめてうれしい。
幸也稲荷(5個入) 2700円 ※価格は毎月変動します
[住所]東京都目黒区青葉台1-18-7 カスタリア中目黒1階
[電話]03-5422-3518
[営業時間]10時〜17時 ※売り切れ次第終了
[休日]土日・不定休
[交通]東急東横線ほか中目黒駅南改札から徒歩7分
『福寿家』 @浅草
シャキッと野菜とお揚げの甘みがマッチ
紫キャベツ、パプリカ、キュウリなどをいなり寿司で巻いた「伊奈利ロール」は実は大正11年創業の老舗から生まれた一品。先代が亡くなり一時廃業した後に再開し、若年層にもいなり寿司を知ってもらおうと作ったそう。
ポイントは口当たりを考えて切られた野菜たちと自家製のごまダレ。野菜がこんなにいなり寿司に合うとは!
伊奈利ロール(6個入) 1050円
[住所]東京都台東区花川戸2-18-6
[電話]03-5828-3787
[営業時間]10時〜18時 ※売り切れ次第終了
[休日]不定休
[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅8番出口から徒歩8分
いなり寿司と狐のおいしい関係
江戸時代後期、いなり寿司は屋台で買える庶民の味だった。一方で、稲荷神へのお供物もあったそうな。「おいしいから神様にもおすそわけしよう!」と捧げるようになったわけではない。いなり寿司と狐には深ーい関係がある。
いなり寿司は、油揚げに米を詰めて稲荷神に捧げたのが始まりだ。そこから“いなり”の名を冠するようになった……というわけだが、そもそもなんで油揚げだったのかといえば稲荷神の使いである狐の好物が油揚げと考えられてきたから。
たぶん某キツネ村に油揚げを持っていっても見向きもされないだろうが、民話では油揚げを持って夜道を歩いていると狐に身ぐるみ剥がされる、なんて話もある。
濡れ衣狐のために弁解すると、実際の好物は小動物。害獣を退治してくれる狐に感謝して狐の巣穴に小動物の素揚げを供えていたところ、「仏教的にやっぱり殺生はいかん」ということで代わりに油揚げになったらしい。
もしかしたらこの偶然がなければいなり寿司は小動物の中に米を詰めた料理になってたのかも。それはそれで参鶏湯っぽくておいしそうだが……。
そんな能書きは置いといて、正統派とアレンジの両方で磨き上げられてきたいなり寿司たちをとにかく食べて欲しい!
『海木』の「だしいなり」はもっちり柔らかいお揚げから溢れるダシが味わい深く、『味吟』のは軽やかなシャリに甘辛いお揚げのバランスがイイ。『YUKIYAMESHI』のオープンタイプのいなりは旬の食材を使っていて目からも舌からも季節を感じられるし、食べ応えたっぷりだ。『福寿家』の野菜をロールしたいなりは考え尽くされたシャキッと食感と野菜といなりのマッチ具合に驚かされる。
テイクアウトしたら近場の公園まで足を伸ばすのが断然おすすめ。春の陽を浴びながら口福に包まれよう。
撮影/竹崎恵美子(高はし、秀徳本店 恵)、西崎進也(おつな寿司)、鵜澤昭彦(海木、味吟、YUKIYAMESHI、福寿家)、取材/藤沢緑彩
※2024年4月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。