「面白そう」で始まった芸人人生 私は、芸人という極めて不安定な仕事に従事している人間なので、当然ながら“やりたいこと”という街道をまっしぐらに進んでいる人間。 芸人をやっている間、その選択をしたせいで多くの不自由を感じて…
画像ギャラリー「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げて始まった、「ティモンディ前田裕太の“おとな”入門」。自身の経験や見聞きしたエピソードから思考を広げてきた「コラム形式」から、次のステップへと進みます!
その内容は、「お悩み相談」です。これまで約1年半のコラム連載を通して、食・あそび・勉強・旅…と、様々なテーマで「(理想の)大人とは?」について考え、目指してきた (そしてこれからも目指していく)前田さん。その経験を生かした視点で、皆さんから寄せられたお悩み相談に答えていきますよ◎第21回の今回は、安定した生活を捨て、「やりたいこと」に挑戦するか悩む…というご相談です。
[今回のお悩み]
「安定した会社員としての生活を捨て、憧れだったフラワーアレンジの仕事に専念するか悩んでいます」
前田さん、こんにちは。
相談者さんに寄り添い、時に厳しくありながら愛のある回答、いつも楽しみに拝読させていただいております。今後の進むべき道について前田さんの意見を伺いたいです。
私は、平日は会社員として働いていますが、休日はフラワーアレンジの教室(月に3,4回)をしています。
子供が成長し、子育ての終了が見えて来た頃、何か打ち込めるものが欲しいとフラワーアレンジを習い始めました。小さい頃からお花が大好きだったので、花に触れる時間は楽しく、すぐに夢中になりました。
資格を取得し、友人や知り合いにアレンジを頼まれるようになり、一生懸命作ったものが喜んでもらえるとただ嬉しくて、もっと頑張りたいという気持ちが強くなっていきました。
私が師事した先生はとても尊敬できる素晴らしい方で、生徒さんは、「この時間が癒しです。」とみなさん笑顔でレッスンを楽しんでいて、私もレッスンに行くのがとても楽しみでした。
憧れの先生のようになれたら。会社員の仕事は続けながら、週末だけですが思い切って自宅教室をはじめ4年ほど経過しました。
最初の1,2年は自宅教室とは名ばかりで、レッスンに来てくれるのは知り合いばかり。
そんな状況でしたが、少しでもいいレッスンを提供したいと自分自身の学びも深めつつ、続ける事が大事だよね。と細々続きてきたら、最近は有難いことに少しずつ通ってきてくれる生徒さんが増えてきました。
仕事を辞めて、お花の方に比重をかけ本格的に教室をやっていきたい気持ちと、いやいや教室運営なんて甘いものじゃなし、安定した会社員の収入は維持したまま趣味として教室を続け、定年してから教室に専念すればいい。という思いで揺れています。
一歩踏み出して夢を追うべきか、現実を見て今の仕事は辞めずに趣味として教室をやっていくか。迷っている時点で覚悟が足りなく答えが出ているような気もしますが。
厳しい意見でもいいので、前田さんのご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
(群馬・50代・女性・会社員)
「やりたいことをやる」という経験は何物にも代えがたい
私達人類は“なりたい自分でいる”という命題に、延々と頭を悩ませている。
主語が大き過ぎましたね。理想の自分になりたいという欲求は誰でも持つということです。
そして、そう思う人は“やりたいこと”と“生きるために必要なこと”の間で揺れる瞬間が幾度となくあることでしょう。
それは社会で生きている人間にとってごく普通の悩みであるということです。
相談者の方は、フラワーアレンジの先生という仕事一本でやりたいのが本心で、その先生をやっている自分に理想の自分があるのでしょう。
やりたいことが見つからない人が多い中、挑戦してみたいことがあるのは幸せなことですね。
今の生活や安定を捨ててまで、夢を追う一歩が出ない?それは誰だってそうですよ。満足に生活できているのであれば、それを失うかもしれないリスクが大きくなりますからね。
選択をする際に「それをすると後悔するぞ」という内なる声は、社会で上手く生きていくための知恵の集積。これはこれで大切にすべき声だと思う。生活が立ち行かなくなる可能性だってある訳ですからね。
けれど“なりたい自分”になるための選択って、本来は損することもなければ、得をする、という概念もないんです。やってみたいから、やってみる。という事象に、咎める要素なんて1つもないですから。
なりたい自分になるための選択によって被る不利益があったとしても、なりたい自分、やりたかったことをしている自分、というものは何にも代えられないものなんです。
「面白そう」で始まった芸人人生
私は、芸人という極めて不安定な仕事に従事している人間なので、当然ながら“やりたいこと”という街道をまっしぐらに進んでいる人間。
芸人をやっている間、その選択をしたせいで多くの不自由を感じていました。家のガスや水道、電気のライフラインは全て止まった時期も長くありました。
けれど、何もそこには後悔はありませんでした。何故なら、やりたいと思っていることをやっているから。
働くという行為は、生きるという目的の手段であって、如何なる手段でもいいのであれば、自分がやっていて楽しいことだったり、やっている自分が好きな方法で、生きるという目的を達成している人生の方がいいじゃないですか。
だからそこでの生活が貧しくても、幸せだと思えていました。
「あなたには、貧しくなってもやりたい!という強い覚悟があったからでしょう。」と思う人もいるでしょう。
でも私が芸人を選択した時は“芸人をやる人生って面白そう”という軽い気持ちだったし“やってみたい”という軽微な動機でした。
「この仕事で死ぬまで金を稼いで生きていく」だなんて気負ったことは一度もない。やってみてダメだったら辞めりゃいいし、一生死ぬまで続けなければならない訳などない。
当然、やるからには本気で頑張るけれど、大事なのは、それに付随する成功や失敗ではないのだ。
自分が挑戦した先に、生活が満足にできる保証なんて何もない。けれど、満足できる生活が手に入らなかったとしても、手元にはやったからこそ得られる経験がある。お金がなかった時の自分に聞いても、きっと「やった方がいい」と答えたでしょう。
もちろん、嫌なことも辛いことも沢山あったので、その選択の先に後悔が一切ないかと言われたら否ですが。
私自身であれば、やる一択でしょうね。無責任になるので、推奨はできませんが。
より楽しく人生を過ごせる道を選択ができることを祈っています。
「やりたいことがある」のは、それだけですごい!~担当編集者からのひとこと~
転職はなかなかデリケートなことでもあるので、周囲の人にこそ相談しにくかったりしますよね。とはいえ、私の周囲でも転職する人が増えているように感じたので、少し調べてみました。
日本では、2020年以降3年連続で転職者が増えている(※1)そうですが、2022年の転職者が転職活動を始めた理由は、給与や待遇、人間関係などへの「不満」が上位を占めており、「新しいことに取り組みたかった」という人は、わずか4.1%(※2)。
「やりたいことがある」って、幸せで、それだけですごいことなんですね。転職という大きな決断をした人の中にすら、約4%しか「やりたいことがある」人はいないのですから。
前田さんのおっしゃる通り、ひとつの仕事を一生やり続けなければいけないなんていうルールなどないのですから、せっかくやりたいことがあるなら、一生のうちに一度くらい、「それに全振りする時期」があっても良いのかもしれませんね。
(出典)
※1:https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230324_46906/
マイナビキャリアリサーチLab 『転職動向調査2023年版(2022年実績)』(2023年3月24日公開)【図1】より
※2:https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230324_46906/
マイナビキャリアリサーチLab 『転職動向調査2023年版(2022年実績)』(2023年3月24日公開)【図2】より
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前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。
ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約28万人。