涼を運ぶ“つけ麺”が胃袋で踊る、下北沢『一龍』 福井の名店の味をルーツとする「中華麺」がこの店の大看板だが、季節限定でお目見えするのが「冷やし中華つけ麺」。夏はこれしか食べない常連客もいる隠れた人気メニューだ。 親鶏の胴…
画像ギャラリー夏以外には食べられないことが多い特別な麺。それが「冷やし中華」だ。「冷やし中華、はじめました」の札が出ると、ああ、今年も夏がきたなと感じる方も多いだろう。
金糸たまごにハム、紅しょうが、きゅうりなどがたっぷり盛られた王道のものから、最近ではつけ汁にこだわったもの、具材にこだわったものまで、ミレニアムの冷やし中華は進化が止まらない…!
そんな「見ても食べても涼を運ぶ」冷やし中華を『おとなの週末』の覆o面調査隊がリポートする。
(お店の情報は<店舗情報:夏にぴったり「うどん」「蕎麦」「冷やし中華」「冷麺」が食べられるお店>をご参照ください)
最後の一滴まで飲みほしたい銀座『羽衣』
こちらは銀座のビル地下にある夏のスター。冷たいスープに泳ぐ特注の細い麺、別盛りでお行儀よく並んだ具が上品だ。
その見た目と味わいから、ほとんどの人が「胡麻ダレ味?」と思うそうだが、実は胡麻は一切使っていない。レシピの秘密を小松店長に問いただすも「醤油ベースにレモンと酢と……後は内緒(笑)」とはぐらかされた!
でもひと口啜れば旨さに陶酔、そんなことはどうでもよくなる。まろやかな酸味とミルキーなコク、アレが入ってるのかなあ、なんて考察するのもまた楽しいじゃないですか。
さて具だが、これが豚ロースの自家製チャーシューや注文を受けて揚げる天ぷら風のエビなど逸品揃い。まずは前菜として具を楽しむもよし、麺とスープにダイブさせて混ぜ混ぜするもよし。
銀座のスターは味わい方もフリーダム!
暑い夏ほど食べたくなる、宝町『菊凰』の明峰
銀座の片隅の小さな町中華に、奥ゆかしくも麗しい美味の名峰あり。
その雄姿は富士山を模しているそうで、なだらかな山肌を彩るハム、キュウリ、トマト、春雨……そして頂には錦糸卵とプリプリのエビ、裾野には醤油ベースのタレが悠々と広がる。
言わば「富士詣で」ならぬ、夏の「菊凰冷しそば詣で」。眺めてうっとり、食べれば母なる偉大さを感じる正しき昭和の味だ。
シンプルで王道。だがどこか品格漂うのは素材の繊細な切り方や味の組み合わせなどひとつひとつの丁寧な仕込みが伝わってくるからだろう。
「万人に愛される味を」と絶妙な甘酢味になるよう調味料のバランスを大事にしているとか。写真の他にもクラゲやチャーシューなどが入る「五目冷し」や「海老冷し」、「カニ冷し」の名峰も。
この夏、いくつの山に挑もうかな。
潔い美しさが佇む、牛込神楽坂『梅香』
ナスよ、あなたが主役です。と真正面から主張してくるビジュアルの潔さ。
味の要に大抜擢され、心なしか誇らしげに輝いて見えるのは私だけ? だってこれほどナスという素材に真っすぐ向き合い、魅力を生かしながら、涼し気に、大胆かつ繊細に仕立てられた麺が他にあります?
「普通の食材や料理を誠実においしく作ること」を信条とする伊藤シェフならではの味だ。
発想は四川料理で定番の蒸しナスの前菜から。つるつるとのど越しのいい細麺と合わせ、食欲が落ちる夏でも負担なくさっぱり味わえるようアレンジした。
ひんやり冷たい蒸しナスは口に含めばとろりと甘く、生姜、鶏ガラスープ、黒酢などを加えた醤油味のソースはクリアな旨みと豊かな香り。茗荷とカイワレも爽やかな名脇役。ふう、暑い夏も乗り切れそうだ。
涼を運ぶ“つけ麺”が胃袋で踊る、下北沢『一龍』
福井の名店の味をルーツとする「中華麺」がこの店の大看板だが、季節限定でお目見えするのが「冷やし中華つけ麺」。夏はこれしか食べない常連客もいる隠れた人気メニューだ。
親鶏の胴ガラを長時間煮込んだ黄金スープが特徴の看板麺に対し、こちらはカツオダシを使った和風醤油味のあっさりとしたつけダレで味わうスタイル。
あえて酢は使わず、レモン果汁で味を調えたフレッシュな酸味が何とも爽快だ。
冷水でキリッと締めて胡麻油を絡めた風味豊かな中太麺と、チャーシューやモヤシ、メンマなどの具をたっぷり絡めて味わえば……ややウェーブがかった麺と具が口の中でちゅるんっ。
踊るように旨さが弾み、胃袋に涼風が吹く。夢中で箸を動かしていると、時折、麺の下に忍ばせている氷がカラン。やっぱ夏の味っていいなあ。
つづく<>では、冷麺()
……つづく<覆面で探した、本当にうまい《韓国料理店の冷麺》具から「汁じゅわ〜」「つるシコ」の麺でさっぱり食べられる4名店>でも、猛暑にぴったりのつめたい麺を紹介します。
『おとなの週末』2024年8月号より
(本記事の情報は発売号時点のものです)
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