2023年のダイハツに始まり、その後トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキでも明らかになった認証不正問題。2024年7月31日、国土交通省は新たにトヨタの7車種で不正が見つかったことを明らかにしている。これは、自動車購入にどのような影響があるのだろうか?
画像ギャラリー2023年のダイハツに始まり、その後トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキでも明らかになった認証不正問題。2024年7月31日、国土交通省は新たにトヨタの7車種で不正が見つかったことを明らかにしている。これは、自動車購入にどのような影響があるのだろうか?
2024年上半期の国内販売台数が激減
認証不正問題で、各メーカーの出荷停止が続いている。2023年にダイハツが出荷を止めた後、国土交通省が各メーカーに認証に関する不正問題がないか社内調査を指示したところ、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキなどでも不適切な事案が見つかった。
認証不正問題が発生すると、クルマの販売に大きな影響を与える。例えばダイハツについては、認証不正問題を受けて、大半の車種が出荷を停止させた。そのために2024年上半期(1~6月)におけるダイハツの国内販売台数は、前年の同期に比べて61%減った。ほかのメーカーも、出荷停止などを実施している。
認証不正問題では、ブレーキが利かなくなるとか、ホイールが脱落するなどの交通事故に至るトラブルは発生していない。車両を使い続けて問題はないが、誤った方法で認証を受けたことは事実だ。
つまりは不正であり、メーカーのブランドイメージが下がることは避けられない。そうなれば今後のクルマの販売にも影響を与える。使っている車両が老朽化した時は必然的に乗り替えるが、積極的に新車を買いたい気分にはなりにくい。
2023年に発表されるはずだった新型ダイハツムーヴ
今後登場する新車の認証も取得しにくくなった。出荷停止になったメーカーの開発者は以下のように述べる。
「既に販売されていて、出荷停止になった車種は、国土交通省が道路運送車両法に適合するか改めて確認作業を進める。それが済めば出荷を再開できるが、これから将来に向けて発売される新型車は分からない」。
国内で新たに認証を取得する新型車の発売が延期されると、当然に国内販売にも大きな影響を与える。
顕著な例がダイハツの次期ムーヴだ。次期ムーヴは2023年、つまり昨年の5月中旬から販売店では価格を明らかにして予約受注を開始した。正式発表は2023年6月19日で、7月には生産と納車も開始する予定だった。それが認証に関する不正問題で延期され、予約受注によってユーザーから預かった予約金も返金している。
あれから1年以上を経過したが、次期ムーヴは発売されていない。ダイハツでは「延期している間に生じた法規の変更にも改めて対応する必要があり、価格も見直さねばならない。手間と時間が必要で、次期ムーヴの発売時期は公表できない」としている。
認証不正問題を受けて、以前に比べると開発スケジュールにも時間的な余裕を持たせているから、同じ作業でも以前のように迅速には行えないようだ。
大幅に遅れている新型車の発売
それでも次期ムーヴの開発は基本的に終了しており、ダイハツの基幹車種でもある。販売店では「次期ムーヴの発売時期について、メーカーから詳細な話は聞いていないが、遅くとも2024年度中(2025年3月まで)にはフルモデルチェンジできると思う」としている。
このほかダイハツでは、ロッキー&ライズと同様のエンジンやプラットフォームを使った次期トール/ルーミー/ジャスティ、スズキやトヨタと共同開発した軽商用車規格の電気自動車、軽自動車のeスマートハイブリッド搭載車なども開発を進めている。これらがすべて、現時点では発売されていない。
さらに他社でも、本来なら既に発売されているハズのトヨタクラウンエステートやマツダCX-80などの発売が先送りされている。これだけでも国内販売に与える影響は大きい。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/Adobe Stock(アイキャッチ画像:dobok@Adobe Stock)