日清食品の『カップヌードル』(税込254円)は、言わずと知れたカップラーメンの定番だ。「お湯を入れて3分で出来上がり」といえば、まずカップヌードルが思い出されるほど。しかし、疲れ切った状況ではお湯を沸かすのも億劫になる。いっそ水を入れて電子レンジでチンしたくなるが、これはやってはいけないことなのだ。その理由と、あえて「レンチン」で作ってみた味をレポートしよう。
画像ギャラリー日清食品の『カップヌードル』(税込254円)は、言わずと知れたカップラーメンの定番だ。「お湯を入れて3分で出来上がり」といえば、まずカップヌードルが思い出されるほど。しかし、疲れ切った状況ではお湯を沸かすのも億劫になる。いっそ水を入れて電子レンジでチンしたくなるが、これはやってはいけないことなのだ。その理由と、あえて「レンチン」で作ってみた味をレポートしよう。
カップヌードルを「レンチン」してはいけない理由は、パッケージにあり!
カップヌードル(税込254円)を作るのにはお湯が必要だ。
あまりにも当たり前の湯沸かしだが、この「沸かして・入れて・待つ」という工程すらも面倒に思えてくることがある。どのみち沸かした湯をカップの中に入れるのだから、最初からカップの中で沸かせば手間が省けるのではないか……と、深夜の給湯室で割り箸を手にカップヌードルの出来上がりを待ちながら、疲れ切った脳みそで考えた人も少なくないはずだ。
だが、その答えは日清食品のホームページにシンプルに明記されている。「電子レンジ対応の製品以外は、そのままの容器で電子レンジにかけないでください」というものだ。
カップ麺の蓋の裏側にはアルミニウムが蒸着されている。品質保持のためのコーティングだが、これが電子レンジにかけられることを妨げる。金属を電子レンジにかけるのは危険な行為だ。火花が散り、火災の火種にもなりかねない。
そして発泡スチロール製のカップも、電子レンジとの相性はよろしくない。過熱・変形して火傷の原因になる。メーカーが警告しているのだから、素直に受け止めるのが吉というものだ。
裏を返せば、中身を電子レンジに対応した容器に移せば、これらの問題は回避できる。障害となるのはパッケージだけなのだ。どんぶりとラップがあれば、カップ麺を電子レンジで作ることは可能になる。
レンチン・カップヌードルには意外な落とし穴があった!
では実際に、耐熱どんぶりとラップを用意して、電子レンジでカップヌードルを作ってみることにしよう。
いつものようにカップヌードルのパッケージを破り、いつもと違って蓋を剥ぎ取った。からっぽの鍋に伏せて、中身を取り出す。
と、ここで最初のトラブルが生じた。麺が出てこない。
カップヌードルの乾麺は底に空洞が生じるように整形されており、この空洞のおかげで湯を入れれば上下からムラなく麺が戻されるのだが、乾麺のまま取り出そうとするとすこぶる都合が悪い。正位置に置かれたカップヌードルの乾麺は、ワインのコルク栓のようにカップに食い込んで、逆さに置かれたくらいではびくともしない。鍋底に叩きつけるようにしてようやく取り出すことができた。
次に、どんぶりに入れてラップをかける段になって、第2の障害にでくわした。どんぶりの高さが足りない。考えてみれば、カップヌードルの形に相似した食器など一般家庭で見ることはない。あるとしたら、巨大なタンブラーか大ジョッキだろう。あれば、の話だが。
仕方がないので、水を多めに入れたうえで、ラップをテント状に張って電子レンジに入れた。水の上に乾麺が1cmほど頭を出している。試食はこの部分を除いて行うことにしよう。500ワットで4分の加熱を行った。
正規の作り方に遜色ない味。中身はレンチンにもこのまま対応可能!
ラップを取ると、見慣れないタイプの中華スープの中に、見慣れたカップヌードルの麺が鎮座する光景が目の前に現れた。露出していた部分も蒸されて戻っていて、硬めではあるが食べられる。スープは火傷しそうに熱い。
底の方を箸で選んで食べると、ちょうどいい柔らかさだ。お湯で作ったカップヌードルに遜色ない。しかし、後述のどん兵衛のようにコシが出るということもない。お湯で作るのに対して、メリットも無ければデメリットも無い。
そして水を多めにされたスープも違和感がない。カップヌードル本来の味がちょっと濃すぎる人には、むしろこちらのほうがしっくりくるかもしれない。ほぐしながら食べていると、露出部分の麺も湯を吸って、すぐに他と変わらぬ食感に変わった。
つまり、「お湯を注いで作るのとほとんど変わりません」という結果なので、この調理法はアリだ。どん兵衛のように、隠れていた魅力が引き出されることはないが、残念なところもない。普通の調理法と変わらない味と評価できる。
米国では「レンチン対応版」パッケージに変更済み!
結論としては、電子レンジで水から熱するカップヌードルは「アリ」だ。障害はパッケージだけである。
実は、米国のカップヌードルのパッケージは、すでに電子レンジ対応版に変更されている。カップも含めたパッケージすべてが紙でできているので、問題なく水を入れて電子レンジにかけられるのだ。「水を入れてレンチン2分15秒(アメリカ日清の公称値)」でできあがるカップヌードルは、これまで以上の手軽さになる可能性がある。
日本のパッケージも電子レンジ対応に変わる可能性はあるのだろうか。少なくとも、カップヌードルの中身のほうは、特に変更することもなく対応できそうだ。
もはや定番? の『どん兵衛』で試してみた
今回試した「カップ麺の中身を耐熱容器に移してラップをかけて電子レンジで調理」という調理法は、レシピとして日清食品グループのホームページでも紹介されている手法だ。
ただしカップヌードルではなくて、即席カップうどんの『どん兵衛』(税込254円)のレシピだ。『レンチン洋風どん兵衛』というのがそれで、バターを落としてコショウを少々振ることで、いつもとは違う『どん兵衛』が楽しめるというものだ。
『レンチン洋風どん兵衛』は、より美味などん兵衛を作るためのレシピとなっているので、手間がかかる。まず耐熱容器に移した中身にお湯を入れたうえで、ラップをして電子レンジにかけるのだ。手間をかけることで、どん兵衛の味は格段に良くなる。
麺の魅力が最大限に引き出されたおかげで、生麺のようなコシと食感が楽しめるのだ。隠されていたどん兵衛の実力が存分に表現される調理法だ。
今回はカップヌードルに合わせて、味よりも簡便さを求めて、水から作ってみよう。
麺の魅力は引き出せるが、つゆが濁る「水からレンチン」どん兵衛
『どん兵衛』から取り出した麺とおあげを、耐熱のどんぶりに移すのは簡単だ。カップヌードルのように苦労することはない。頭がどんぶりからはみ出すこともない。
粉末スープを入れて、麺が隠れるまで水を入れたら、ラップをして電子レンジにかける。500ワットの電子レンジで5分にセットした。どん兵衛には関東版と関西版があるが、今回使うのは関東で手に入れた関東版だ。
結論からいえば、5分では少々煮込みすぎた。麺は普通にお湯を注ぐよりもモチモチして旨いのだが、『レンチン洋風どん兵衛』よりも輪郭があいまいだ。そのぶん、麺がつゆに溶け出して味に濁りが生じている。
4分か、あるいは4分30秒なら良かったのか。しかし、麺の中心部分はちょうどいい煮込み加減だったように感じられる。水から始めたデメリットはこのあたりに表れるのだろう。
水からの電子レンジ加熱では、麺の外部と内部とで最適な加熱時間にズレが生じる。太めの麺もこの調理法ではアダとなって、スイートスポットがあるとしても、かなり狭い範囲になりそうだ。充分に美味な仕上がりだし、普通に湯を入れる調理法とは違った感触なので、目先を変える効果はある。
しかし、どんぶりに移してラップをかける手間をかけるなら、もうひと手間、沸かした湯から始めて『レンチン洋風どん兵衛』同様の「パーフェクトな」どん兵衛に仕上げたほうが幸せが大きいだろう。
カップ麺と電子レンジの組み合わせは、他にもいろいろな可能性を見せてくれそうだ。
リンク先:日清食品グループ「よくあるご質問」,「レンチン洋風どん兵衛」,「カップヌードル(米国版)」
文・写真/深澤紳一(ふかさわ しんいち):PCゲーム雑誌から文芸誌、サブカルチャー誌まで幅広い寄稿歴をもつライター。レーシングスクールインストラクターなども務めつつ、飼犬のために日々働く愛犬家