チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第42回の今回は、チェーン専門店『喜多方ラーメン 坂内』。全国に数あれど東海地方では数少ないという同店で、チェーン店のスゴさに気づかれたようです。
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第42回の今回は、チェーン専門店『喜多方ラーメン 坂内』。全国に数あれど東海地方では数少ないという同店で、チェーン店のスゴさに気づかれたようです。
幅広い年齢層に愛されるのがチェーン店の良いところ
日本三大ご当地ラーメンといえば、北海道の札幌ラーメンと福岡県の博多ラーメン、福島県の喜多方ラーメン。とはいえ、筆者が暮らす愛知県では、札幌ラーメンと博多ラーメンの店は多いものの、喜多方ラーメンの店となると極端に少ない。
そもそも喜多方ラーメンの定義は、平打ちで太めの多加水麺と、豚骨や鶏ガラ、煮干しでとったあっさりと澄んだ醤油味のスープということになる。それをインスパイアした店はあるかもしれない。しかし、明確に喜多方ラーメンを謳う店は数えるくらいしかないのだ。愛知県で喜多方ラーメンを食べたいと思ったら、名古屋市守山区にあるチェーン店の『喜多方ラーメン 坂内』の一択しかない。
所用で京都へ行った帰り、三重県にある日帰り温泉へ立ち寄ろうと車を走らせていたが、お腹が空いていたので、どこかで夕飯を済ませてから向かうことにした。日帰り温泉の周辺にある店をネットで調べていたら、三重県四日市市に『喜多方ラーメン 坂内』があった!
しかも、「半チャーハンセット」(※)まである!ということで、喜多方チャーラーをレポートしようではないか。
※「半チャーハンセット」の販売は一部店舗のみになります
店に着いたのは夜7時頃。この日は土曜日だったこともあり、店内はほぼ満員。何とかテーブル席へ滑り込むことができた。周りの席を見渡すと、おひとりさまやカップル、夫婦、家族がラーメンをおいしそうに食べていた。
この客層の幅広さはチェーン店ならでは。よくよく考えてみると、老若男女問わず幅広い客層に愛されるのはかなり難しい。それをサラッとできるのはスゴイことだと思う。
喜多方ラーメンが圧巻の美しさ
さて、注文したのは、もちろん「半チャーハンセット」(1260円)。喜多方ラーメンに半チャーハンと味付玉子が付いて、単品で注文するよりも100円割引となる。
喜多方ラーメン以外のラーメンに変更することもできるが、その場合はラーメンの価格+410円。丼一面をチャーシューが覆い尽くした「焼豚ラーメン」(1190円)や細切りねぎがたっぷりのったピリ辛の「ねぎラーメン」(960円)もかなりソソられたが、ここはデフォルトの喜多方ラーメンにした。
15分ほど待って、目の前に運ばれたのがこれ。むちゃくちゃ旨そう♪ でも、添えられた味付玉子に違和感を抱かないといえばウソになる。チャーラーならさっぱりとしたサラダか漬物の方が口の中をリセットできるのではないか。
おそらく、店側の言い分としては、ロスが出るような食材は扱いたくないのだろう。その点、トッピングメニューでもある味付玉子なら問題ない。ラーメンにのせてもよいし、箸休めにしてもよいだろう。
では、喜多方ラーメンからチェックしてみよう。まずはこの盛りつけの美しさ! 丼を彩るのは、デフォルトのラーメンでありながら5枚ものるチャーシューだろう。中央にちょこんと盛られたネギやメンマの配置も実によく考えられていて、スタッフの教育が行き届いていることが伝わってくる。って、私はスーパーバイザーか(笑)。
たっぷりのチャーシューでチャーハンをカスタマイズ! これが……
まずはスープをひと口。うん。動物系の旨みがしっかり。チェーン店特有のセントラルキッチン臭がしない。それもそのはず。『喜多方ラーメン 坂内』のHPによると、スープは毎日店で仕込んでいるという。ベースとなるのは豚骨とのことだが、澄みきったスープに仕上げるには弱火でじっくりと煮込まねばならない。実に手がかかっているのだ。
麺は喜多方ラーメンならではの平打ち熟成多加水麺。ふわっとした食感を生み出し、スープにもよく絡むように茹でる前にしっかりと手で揉んでいるのも特徴だ。この麺のモチモチ感とのど越しがスープとよく合う。
特筆すべきは、やはりチャーシューだ。麺をチャーシューで巻いて食らうと、トロトロの脂の口溶けとともに肉の旨みがじんわり。こりゃたまらん!
口の中で続いている味の余韻を楽しみつつ、チャーハンを食す。おっ、これもチャーシューがゴロゴロ入っているだけでなく、チャーシューの旨みもしっかり。チェーン店でここまで完成度の高いチャーハンを出されては個人経営の店にとっては脅威だろうなぁ。
チェーン店の良いところは味のブレが少ないこと。訪れるたびにチャーハンの味が違う町中華もあるもんね。まぁ、それも味わいといえば味わいではあるんだけど。
いつもはチャーシューを残してチャーハンと一緒に食べて締めくくることにしているが、何しろ5枚も入っているので、2枚をチャーハンにのせて「チャーシューチャーハン」にしてみた。
これがもう、悶絶するくらい旨い! 次回はチャーシューたっぷりの「焼豚ラーメン」の「半チャーハンセット」にして、最初から炒飯の上に敷き詰めてやろう。
いやー、筆者が喜多方ラーメンを食べ慣れていないことを差し引いても『喜多方ラーメン 坂内』はレベルが高いと思った。筆者の中ではラーメンチェーンのナンバーワンかもしれない。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。