「日本最高レベルでラーメンを食べているみんなで選んだ!」 審査員が激賞した“一杯”の魅力とは【TRYラーメン大賞25周年】 

TRYラーメン大賞受賞式で記念撮影におさまる受賞者と審査員  撮影/田中秀典(C)TRYラーメン大賞

迎えた「TRYラーメン大賞」(通称「TRY(トライ)」)。日本のラーメンシーンで最も歴史と権威ある賞として親しまれている。第25回『TRY』はMOOK・電子版共に2024年10月23日に発売。賞の審査員たちに今年の「TRY」で入賞した店について、さらにラーメンの魅力などを聞いた。

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2024年で25周年を迎えた「TRYラーメン大賞」(通称「TRY(トライ)」)。日本のラーメンシーンで歴史があり、最も権威ある賞として親しまれている。記念すべき第25回の受賞店などを網羅したムック『第25回 業界最高権威 TRYラーメン大賞2024-2025』(講談社ビーシー/講談社)は10月23日に発売。ガチのラーメンフリークでもあり、賞の審査員としてレギュラーで活躍する皆さんに今年の「TRY」で入賞した店とラーメンの魅力などを聞いた。

“ラーメン界最高”の審査員は計9人

2024年の「TRY大賞」は『ラーメン屋 トイ・ボックス』(東京・三ノ輪)、「TRY新店大賞」には『奈つやの中華そば』(東京・下丸子)が輝いた。

「奈つやの中華そば」950円。煮干しと節の存在感とバランスの良さが見事な一杯 撮影/近藤誠
『トイ・ボックス』の「醤油ラーメン」1200円。コクと香りが豊かなスープにしなやかな細麺が寄り添う極上の一杯 撮影/近藤誠

首都圏はもちろん、全国のラーメン店を食べ歩くエキスパートの「TRY」審査員たち。今年2人が初参加し、新店審査員・名店審査員を合わせ、合計9人が務めている。

このうちTRY審査員は、青木誠さん、レイラさん、しらす(斉藤光輝)さん、田中一明さん、尾瀬さんの計5人。新店審査員はいけ麺さんとしらけんさん、名店審査員は星野能宏さんと、かずまさんだ。

授賞式で審査員たちと記念撮影する『トイ・ボックス』店主の山上貴典さん(後列右から3人目)、『奈つやの中華そば』店主の平林利幸さんと女将の奈津子さん(後列右から4人目と5人目)

元祖“ラーメンクイーン”レイラさん

「TRY」の審査員歴18年を誇るレイラさんは、ベリーダンスのインストラクターとして活躍する傍ら、全国のラーメンを食べ歩く元祖“ラーメンクイーン”だ。

強靭な胃袋を持ち、2〜3杯の連食を得意とするレイラさん

●『奈つやの中華そば』について

「今年は本当に誰もが納得する結果だったと思います。期待を裏切らない美味しさ、接客も素晴らしく、話題性もあり、ずば抜けた存在でした。麺がもちもちとしていますが、自家製ワンタンの皮の弾力がさらにもっちもちで素晴らしいんです。スープは煮干しが利いていて、とてもほっこりとする味わいです」

●『トイ・ボックス』について

「毎回行くたびにブラッシュアップを重ねていて、驚きがあり、何を食べても美味しいです。今、職人としていちばん脂が乗っていて、これまでで最も美味しいです。しょう油、みそ、しおとそれぞれが入賞していますが、ここでしか食べられない一杯で、引き出しの多さを感じます。みそは今年1位になりましたが、創作系でスパイシーな味わいで受賞したというのが注目ポイントだと思います」

●「TRY」について

「『TRY』の審査員は選りすぐりのガチ勢といいますか、本当にラーメンオタクの審査員が本気で食べた一杯を選んでいます。流行っているとか見栄えがいいとかではなく、食べ込んでいる人たちが作り手の裏の裏まで読んで、他にはない視点で選んでいると思いますね。これがラーメン本の決定版だと自負しています」

テレビ出演など多方面で活躍するしらすさん

2008年「しらすのラーメン日記」でYahoo!ラーメンブログ王を受賞した、しらす(斉藤光輝)さん。『マツコの知らない世界』(TBS系)への出演など、活躍ぶりは多岐に渡る。

しらすさん

●『奈つやの中華そば』について

「集客力と味作りとおもてなしの総合力で圧勝だったと思います。最近、整理券や予約システムを取り入れるお店が増え、ラーメン店がレストラン化している中で、そのシステムを取り入れてしてしまうと地元の人たちが来られなくなると、昔ながらのスタイルを取られています。集客の部分で近所から苦情がきかねないレベルまできていますが、そこはどう乗り越えていくかに注目したいです。スープは素材をかなり贅沢に使っていると思います。出汁の味がめちゃくちゃ濃いんです。穏やかそうに見えてかなり攻めた味で、ここから新しい、自分たちが描いたものをゼロから作っていると感じます」

●『トイ・ボックス』について

「熱狂がここにあると感じます。みんな必ず一人で1杯をちゃんと3種類食べていますが、毎年全部味が違うんです。私はみそがいちばん変わっていなかったように感じましたが、最も刺さりました。
味がいちばん変わったしおは、これまで『トイ・ボックス』の『塩ラーメン』を食べたことがない人でもとても美味しいと思います。一口目で広がるものがありますが、まだ店主は納得していないんじゃないかなと感じるので今後も楽しみです」

●「TRY」について

「日本最高レベルでラーメンを食べているみんなで選んでいるというのが、『TRY』のおもしろさです。正直なところ、結果に納得したことは17年やっていて1回もありませんが、ラーメンの好みはそれぞれだからこそ、この結果です。今の審査員たちは25年やっていて最強の仲間たちだと思います」

「ラーメン官僚かずあっきぃ」こと田中一明さん

通称「ラーメン官僚かずあっきぃ」として、さまざまなメディアでラーメン情報を発信している田中一明さん。食べ歩きのペースは年間700杯以上、今年はこれまで食べたラーメン2万500杯を突破。全国各地のラーメン店にも精通している。

田中一明さん

●『奈つやの中華そば』について

「どのお店にも似ていないラーメンを出していて素晴らしいと思います。これってすごく大事なことであり、とても貴重なことなのです。今はどれだけ美味しいラーメンと言っても、やはりどこかの店の系統の味と紐付いてきますが、『奈つや』さんの味は、修業先とも全然違いますし、どのメニューを食べてもここでしか食べられない唯一無二のもの。この味をどう開発・構築されたのかということも気になりますし、このご夫妻の絆が新店大賞に輝いた理由の一つだと感じています。『奈つや』さんのスープは煮干しを使っていますが、旨みの出し方が特徴的で多段階で変化するんです。口の中に入ってきた時、舌の上で転がした時、飲み干す時の印象がそれぞれ変わってくるので、毎回口にするたびに『これこれ』となり、飽きることなく飲み進められるのが、ここの美味しさの秘訣なのだと思います」

●『トイ・ボックス』について

「トッピング類はもちろん美味しいのですが、今年から導入された『かけラーメン』が非常に美味しかったんです。麺を際立たせるスープが最強に素晴らしく、いちばん好きです。本当に美味しいラーメンは『かけ』なのだと『トイ・ボックス』で学びました」

●ラーメンの魅力について

「日本のラーメンは食べ物として、行き着くところまでいっている(完成された料理だ)と思います。ですからあとは、他の食べ物と横並びにした時に一歩前に出られるかどうか、というところでの勝負になっているでしょう。それを牽引してくれる存在が『トイ・ボックス』だったり、『奈つやの中華そば』なのだろうと思います」

ラーメンの食べ歩きがライフワークの尾瀬さん

「尾瀬のラーメン手帳」(ライブドアブログ)管理人の尾瀬さんは、ラーメンと城をこよなく愛し、歴史探訪しながら全国のラーメンを食べ歩くことがライフワーク。丁寧な論評に定評がある。

尾瀬さん

●『奈つやの中華そば』について

「美味しいというのは選ばれる最低条件ですが、楽しい体験ができるんです。お店としての努力が見えます。接客が良かったり、しっかりとした準備をしてきたのだろうと思います。もちもちのワンタンやサイドメニューが揃っているところなど、武器を持っていると感じますね」

●『トイ・ボックス』について

「『塩ラーメン』がリニューアルしたのが最近なんです。今まで使っていなかった素材を使ってガラッと変えて再構築してきました。審査の時よりも、もしかしたら今はもっと進化しているかもしれません。今回、殿堂入りしましたが、もう1年見たかったというのが正直なところです。これからも定期的に訪ねると思いますね」

●ラーメンの魅力について

「ラーメンの最大の魅力は自由度の高さだと思います。まぜそばでも、ラーメンといえばラーメンになるという幅の広さです。各地方でも自然発生的に、それぞれ魅力と特徴のあるラーメンがありますし、飽きることがないんですよね」

授賞式には、今回残念ながら審査員2人が出席できなかった。

青木誠さんは、2005年に「TVチャンピオン ラーメン王選手権」を制し8代目のラーメン王となった、審査員歴20回を誇る最古参だ。

首都圏をメインに1万軒を超えるラーメン店を訪問している「しらけんの日記」(ライブドアブログ)管理人であるしらけんさんは、新店審査員として7回目の参加だった。

青木さんとしらけんさんのコメントは本誌でご確認を。

「Tokyo Ramen of the Year」の略称

「TRY」とは、「Tokyo Ramen of the Year」の略称。「東京で一番旨いラーメンを決めようじゃないか」という呼びかけのもと、情報誌『TOKYO★1週間(現在は休刊)』(講談社)誌上で2000年よりスタートしたラーメンアワード企画だ。

授賞式会場でズラリと並んだ歴代の『TRY』

ラーメンに造詣の深い審査員たちが、1年間をかけ審査対象エリアの東京・神奈川・千葉・埼玉のラーメン専門店を食べ歩き、各ジャンルに分けて選考。評価基準は、味60、ホスピタリティ20、活躍度20からなっており、総合的に判断している。

新店と名店ごとに部門があり、それぞれに大賞が選ばれる。新店大賞にはシルバーの、名店大賞にはゴールドの特注丼トロフィーが贈呈される。

特注丼トロフィー

四半世紀に渡り、ラーメン界の歴史を見つめてきた「TRY」。人気ラーメン店の店先で受賞店に進呈されるポスターを見かけたことがある方も少なくないだろう。

12月2日に『TRY全国版』発売、11月26日~12月15日「TRY東京ラーメン大賞フェス2024」

25周年を記念して、2024年11月26日(火)〜12月15日(日)まで、東京新宿区の大久保公園で「TRY東京ラーメン大賞フェス2024」が開催される。

首都圏の旨いラーメンを発掘し続けてきた「TRY東京ラーメン大賞」受賞店が大集結する絶好の機会だ。

TRYラーメン大賞受賞式で記念撮影におさまる受賞者と審査員

また12月2日(月)には、TRYの審査員たちが選りすぐった日本各地の名店を紹介する『TRYラーメン大賞全国版』が発行予定だ。A5版のコンパクトサイズなので、カバンに忍ばせて一緒に旅に行きたくなる1冊だ。

本当に旨い一杯を巡る冒険はまだまだ続いていく。

『第25回 業界最高権威 TRYラーメン大賞2024-2025』

文・写真/市村幸妙

いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。

※トップ画像は、撮影/田中秀典(C)TRYラーメン大賞

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