本誌をちら読み

小説に描かれた居酒屋たち

本誌をちら読み by 本郷明美/2014年8月20日

この店に行ってみたい!
小説に描かれた居酒屋たち

 本誌『おとなの週末』9月号の特集「この夏 旨安酒場でホッピング!」のコラム「この店に行ってみたい! 小説に描かれた居酒屋たち」をチラッとお見せします。

酒場で生まれる物語の数々

左・『センセイの鞄』(川上弘美/文春文庫)、右・『居酒屋兆治』(山口瞳/新潮文庫)

 酒場が舞台であったり、酒場が登場する小説は数多い。それだけ人と人が出会い、物語が生まれやすい場だからであろう。そして、思わず食べたり、飲みたくなってしまう描写にゴクリとさせられ……。

『センセイの鞄』(川上弘美)の主人公ツキコとセンセイの再会の場は「駅前の一杯飲み屋」だった。偶然隣に座った2人がほぼ同時に頼んだのは、共に「まぐろ納豆。蓮根のきんぴら。塩らっきょう」。ツキコは「趣味の似たひとだと眺め」、高校時代の教師と教え子という関係から、次第に親密になっていく。
 2人が「サトルさんの店」と呼ぶこの飲み屋は、野球中継が流れるようなごく素朴な店だ。枝豆、湯どうふや塩ウニといった、奇をてらわないアテをきちっと出してくれる。寒くなると黒板に「鍋ものあります」。「アルミニウムのでこぼこした一人使いの鍋」で、鱈チリなどが食べられるのだ。こんな店、近所にあってほしいなあ。

 物騒な店名にぎょっとさせられるのが、『居酒屋ぼったくり』(秋川滝美)だ。両親亡きあと姉妹2人が切り盛りするこの店は、中身は店名と真逆。野菜や肉、魚など仕入れたものはあまさず使い、安く料理を出す、かなり良心的な店なのである。例えば、「卵の黄身の味噌漬け」を作った日、分けた白身はおでんの「きんちゃく」の具に混ぜる。大根の葉は菜めしに、手羽元を煮込んでできた煮こごりは小鉢で。食材を大事にいただくことを、教えてくれる。

<次ページへ続く>

行ってみたくなる実在の店

左・『書店ガール2』(碧野圭/PHP学芸文庫)※シリーズ1〜3あり、右・『居酒屋ぼったくり』(秋川滝美/アルファポリス)

 実在の飲み屋が登場し、ガイド的にも使えるのが『書店ガール』(碧野圭)。吉祥寺の書店に勤務する主人公・理子は酒に強く、気持ちよさそうに実によく飲む。作品中には、吉祥寺を中心に、いい店が頻繁に登場する。「もも吉」は、骨付き鶏もも焼が名物の居酒屋。職場の近くにあり、理子の送別会がここで開かれた。『書店ガール2』では「安くて食べ物もうまい」という「居酒屋カヤシマ」が登場する。ある日理子が、「カヤシマに行きましょうか。久しぶりに金ホッピーでも飲みましょう」と仕事仲間を誘う。「金ホッピー」とは!? ぜひ飲みに行かなくては。
 飯田橋の沖縄料理「島」では、「ここのミミガー、おいしいのよね。ぷりぷりして歯ごたえがいいの」と、泡盛を飲みながら部下の男性に語る理子。男前である。

 映画化もされた、山口瞳の『居酒屋兆治』。モデルになったのは、山口氏が通ったモツ焼の名店『文蔵』だと言われている。
 丁寧にモツを仕込む兆治。ナンコツを串に指すのは大仕事で、時々自分の指を刺してしまう。モツ焼以外のメニューは、「煮込み、鮟肝、自家製塩辛、楽京(らっきょう)、豚足、珍味鮑(ちんみあわび)」など、「短冊が壁に貼られている」。
 1日2万円の売り上げがあればいい、と決めて、その金額を超えると店を片付け始めてしまう。きちんと仕事をし、過分なもうけは持たない。まだ日の残る夕方、早々と風呂に入り、ふらりと『居酒屋兆治』へ。兆治さんの焼くモツをかじって飲んでみたかった。
『文蔵』は、惜しまれながら2006年に店を閉じたという。


どれも訪れたくなるような雰囲気のある居酒屋ですね。本誌9月号では、この他にも小説を2冊取り上げています。気になる方はチェックしてみてください。

『おとなの週末』9月号の目次はこちら

<次ページへ続く>

1 2 3 4 5

関連書籍

  • 個室で大切な人と“おもてなし”レストラン
  • 最後の築地
  • ひと味違う 中華街&横浜
  • 大東京23区散歩
  • とっておきの銀座
  • 口福三昧
  • 最強の麺 219軒
  • お値打ちの三ツ星店
  • 移民の宴
  • 綾小路きみまろ公式ファンブック
更新情報
2019/03/14
「最新号の目次」を3月15日発売の4月号に更新しました!
2019/02/23
3月号P36の「ほりうち」の「おとなの週末を見た!」で半熟玉子無料は「納豆らぁめん」注文時に対象となります。
2019/02/14
「最新号の目次」を2月15日発売の3月号に更新しました!
おとなの週末 Select

人気の特集だけを、
電子版限定でセレクトしました

おとなの週末公式アカウントはこちら
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE