名古屋人による名古屋人のための居酒屋『やぶ屋』のアレンジ系名古屋めし/名古屋エリア限定グルメ情報(7)
『カレーハウスCoCo壱番屋』や『コメダ珈琲店』、『木曽路』など名古屋発の外食チェーンは意外と多い。 とはいえ、どのチェーンも用意している名古屋めしは万民ウケを狙ったものばかり。全国展開するにあたって、過度な名古屋らしさは不要なのだろう。 しかし、名古屋人オーナーが名古屋人のために名古屋めしを食べさせてくれる居酒屋チェーンがある。1994年に今池で創業した『やぶ屋』がそれだ。 最近、私はここの味と安さにズブズブにハマっている(笑)。
大須商店街の外れにある『やぶ屋 大須店』は、2002年にオープン。昼12時(水曜のみ17時)から営業しているので、大須へ買い物に来たついでに昼飲みも楽しめる。
客の大半が注文するのが、豆味噌をベースとした甘辛い味噌ダレに絡めて七輪で焼き上げる名物の「味噌とんちゃん」(並盛・600円)。
味噌の焦げる香りが食欲をそそられる。全体的にほどよく焦げ目がついたころが食べ時。 ハフハフしながら口へ運ぶと、味噌のコクと脂の甘みが一つになって、ジュワッと広がる! お酒のアテにもイイが、オン・ザ・ライスで食べたい衝動に駆られる。
味噌とんちゃんは、名古屋で昔から食べられてた、いわばソウルフード。しかし、なぜか名古屋めしの一つに数えられることがなく、昔ながらの専門店は後継者がいなくて廃業する店も多いらしい。
「このままでは味噌とんちゃんそのものがなくなってしまうと思って、メニューに採り入れたんです。ウチの味噌とんちゃんは、三河豚の小腸や大腸、胃、小袋などミックスになりますから、さまざまな味と食感が楽しめます」と、話すのは、やぶ屋グループ・社長の横瀬武夫さん。 このように、外食チェーンではあるものの、社長が視線を向けているのは、全国よりも地元なのだ。
ここの名古屋めしは。ど真ん中の王道メニューではなく、ややヒネリが入ったものが多い。 たとえば、この「名古屋あんかけトンカツ卵よせ鉄板焼」(630円)。 味付けは「あんかけスパ」に使うピリ辛のソース。これがフワフワの卵とトンカツにやたらとよく合う。 「僕の行きつけのあんかけスパ屋さんに卵でとじたトンカツをのせた『卵よせ』というメニューがあるんです。ここから麺を抜いたら、お酒に合うだろうなと思って(笑)。熱々の鉄板で提供することで、より名古屋らしくしました」(横瀬さん)
お酒の〆にオススメなのは、「台湾まぜそば」をアレンジした「台湾まぜきしめん」(690円)。 栄にある人気ラーメン店『ちょもらん麺』と共同開発したコラボメニューだ。それだけに、巷の居酒屋で食べる〆麺とはレベルが違いすぎる。 中華麺よりもむしろ幅広のきしめんの方がピリ辛の台湾ミンチがよく絡むのだ。これは名古屋めしを食べ慣れた地元の人も唸るほどの旨さ! 『やぶ屋』は、県内に13店舗展開するほか、2003年には東京にも進出。 現在は港区赤坂の溜池山王店と港区六本木の六本木6丁目店の2店舗ある。関東在住の方もぜひ足を運び、名古屋めしの奥深さを感じてほしい。
永谷正樹(ながや・まさき) 1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。
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