紀州鉄道のディーゼルカーと、沿線でみつけた“せち焼き”/2007~2019年
前回は日本一短いローカル線“紀州鉄道”と“なれ寿し”のお話でした。
今回は、紀州鉄道で出会ったディーゼルカーと沿線で食べた“せち焼き”(レシピ付き)です。
2007年と2019年の2回の訪問で出会ったディーゼルカーは全部で5両ありました。
この5両はいずれも別のローカル線で活躍して、路線の廃止や新型車両の導入で余剰になった車両がこの鉄道に移籍されています。
だいぶ年式も古くなって、普通ならば廃止になっていてもおかしくない年式ですが、走行距離が短いことが幸いしたのでしょうか、紀州鉄道でのんびりとした余生を送っていました。
2007年に撮影した車両はキハ600形。
遠く大分県の大分交通耶馬渓線が廃止になり、使われなくなった車両が移籍してきました。
この線が廃止になったのは1975年のこと、さすがに大分交通現役当時は撮影していませんでした。
残念ながら2009年に廃止になりました。
大分県から移籍してきたキハ600形(2007年撮影)
走るところは見られなかったのですが、現在も「休止」の札を付けたまま紀伊御坊駅に止めてあるのがキテツ2号です。
普通の電車などは2軸の台車(車輪が2組4個のこと)が1両に二つ付いているのが一般的ですが、この車両は車のように両側に1軸づつ配置され、バスの部品も使っていることからレールバスと呼ばれた車両です。
兵庫県の第3セクター鉄道北条鉄道からやってきました。
北条鉄道時代に撮影したことがあるのですが、車輪が2組しかないので直進安定性が悪く、正面から走っているのを見ると左右に揺れているのがよくわかります。
小さなボディで、かわいい動きをする車両でした。
北条鉄道から来たキテツ2(2019年撮影)
そして現在走っているのは滋賀県の第3セクター鉄道、信楽高原鐵道から来たKR301とKR205です。
これはローカル線用に作られた軽快気動車と呼ばれるタイプで、信楽高原鐵道に新型車両が入ったために余剰になった車両が移籍してきました。
この車両は信楽高原鐵道で撮影したときと、ほとんど同じカラーリングで走っています。
最初に見たときには、なんとも懐かしい気分になりました。
だいたい、平日は角ばったKR205が。
休日には丸いKR301が、それぞれ終日走っているようです。
現在走っているディーゼルカー(2019年撮影)
現在でも紀州鉄道に行けば、運転している2両、休止で置いてある車両が1両、保存されている車両が1両の合計4両を見ることができます。
和歌山に出かけるときには、ぜひ立ち寄ってみてください。
「せち焼き」とは、はたしてどんなものなのか……?
さて、紀州鉄道を撮影していて、沿道に気になった看板がありました。
「せち焼き」です。
私はまったく聞いたことがありませんでした。
せち焼きと聞いて、焼き物なのか、食べ物なのか?
食べ物だとしても、はたして、どんなものなのか?
御坊駅前の名産品店で聞いてみました。
どうやら焼きそば系の食べ物で、御坊市内の1軒のお店が始めたものが広まったようです。
名産品店で当日開いているお店を伺って向かいました。
学校のすぐ近くにあるとのことで、見つけてみれば想像通りの店構え。
店の前にテーブルもあり、ここで食べられそうです。
せち焼きのお店、
せちごぉて屋 (2019年撮影)
右側の窓から声をかけてミックスを注文、作る工程の写真を撮らせていただきました。
ざく切りキャベツとイカ、エビ、豚肉を
ヘラで食べやすい大きさに切りながら
鉄板で焼き、焼きそばを投入(2019年撮影)
焼きそばソースとネギ、
そして焼きそばをほぐす水をかけるのですが、
この水から出汁の良い香りがしてきます。
この水は……?
企業秘密だそうです/笑(2019年撮影)
ここまでは、ほとんど焼きそば。
でも、ここからが違います。
小麦粉などの粉は使いません。
焼きそばができあがったところで
多めの玉子投入。
この時点で焼きそばは
少し短めに刻んである(2019年撮影)
あとはタマゴをツナギに
カッコよく成型します(2019年撮影)
写真を撮り終えて、ベンチに座ろうとしたところ、「お店のほうで食べて」と言われて入ったのが……。
ディープなバー……。
直射日光の中から入るとギャップがすごい。
思いもしない展開です。
店に入るとこんな感じ(2019年撮影)
そして出てきたせち焼きは、なんともおしゃれに変身していました。
もちろんノンアルコールビールを追加です(車なもので)。
隣で食べていたお父さんも、農作業中の昼食に、せち焼き&ノンアルコールビールでした。
出てきたせち焼きとノンアルビール(2019年撮影)
食べてみれば、ふわっとした食感でちょこちょこと現れる焼きそば麺の感じも良く、ソースにも負けない出汁が香ります。
これ好き!
かなりの量に見えたのですが、軽い感じでいくらでも入ります。
お昼でも、おやつでも、もちろんお酒の友でも大丈夫ですね。
ディープなお店でライトなせち焼き、なかなかの昼食になりました。
後日、お酒の友に食べたくなって、自宅で作ってみました。
キャベツ、イカ、エビ、
豚肉を炒める(2019年撮影)
麺と出汁と焼きそばソース、
出汁の風味を増すために
オリジナルで鰹節も投入(2019年撮影)
卵を入れて……(2019年撮影)
成形して……(2019年撮影)
お皿にもって完成。ネギを買い忘れたので、一応青のり(2019年撮影)
んんっ……。
まぁまぁ……です。
でも、青のりのせいか焼きそばっぽさが強い。
あんまりふわっとしていない。
鰹節の香りいっぱいで、お酒の友としては及第点ですが、“せち焼き風”までも、もう一息。
やっぱり御坊市で食べたいです。
(でも、自作も作り続けます!)
おまけに、紀州鉄道のお土産です。
紀州鉄道「学門駅」の入場券。
学業成就のお守りとして人気がある。
……学問……
そこは心を広く持って!(2019年撮影)
紀州鉄道車両型のようかん。
おいしいしかわいい(2019年撮影)
佐々倉実(ささくら みのる)
鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。
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