郷愁そそるナポリタンを、古書の街・神保町の喫茶店で食べる……それは単なる古本探しの最中の腹ごなしなのか? 覆面で実食の結果、そこにはこの街とナポリタンの不思議な関連性が見えてくるのだった。
画像ギャラリーその偉容! 郷愁を呼ぶ麺!! 哀愁のナポリタン|さぼうる2
隣の老舗喫茶の『さぼうる』の横で営業する、食事も味わえる店がこの『さぼうる2』。
まずはその盛り付けの巨大さを見よ! その偉容は、もはやナポリタンというよりも、イタリアはナポリのシンボル・ヴェスヴィオ火山!! そして茹で置きで柔らかめの麺が醸す圧倒的な郷愁! 嗚呼ナポリ……。
[住所]東京都千代田区神田神保町1-11
[営業時間]11時~22時(ランチは~14時まで)
[休日]日
PC見ながらフォークを回す これが令和ナポリタン|カフェ グローブ
昔懐かし風情の喫茶店が似合うナポリタンではあるが、ここは今流行りのカウンターに注文するスタイルのカフェ風店舗。Wi-Fiもバッチリ使えてノートパソコンなんか開いて似合う店である。
そういうお店でもナポリタンが食べられるこの幸せ。ナポリタンはどこでも絵になる!!
[住所]東京都千代田区神田神保町1-54-4 JHVビル1階
[営業時間]10時~21時、土~20時
[休日]日・祝
ゆったりした空間でナポリタンを頬張れば、ゆっくり流れる時間|プシケ
広い店舗、ゴージャスな内装。さらには店頭の食品サンプル。まさに王道の喫茶店!
もちろんナポリタンも王道の味。炒められたケチャップの香りが漂い、そして柔らか過ぎない麺と多めの具(特にハム大量!!)が渾然一体となって「これがナポリタンだ!」と訴えかけてくる。
[住所]東京都千代田区一ツ橋2-6-2 日本教育会館1階
[営業時間]8時半~19時
[休日]無休
ナポリタンとは日本オリジナルと改めて気付く独自性|ラドリオ
特製ソース ナポリタンセット(1100円)
※サラダ、スープ、コーヒー付き。ナポリタンセットは17時まで。17時以降は単品あり
神保町を代表する老舗喫茶店の一角。
そのナポリタンは、ほんのチョッピリ辛味の利いた特製ソースで、麺をこれでもかというほどに炒めに炒めたスタイル。アルデンテとは違う、麺内の水分を蒸発させたことによる麺のコシはこの店ならでは。そのオリジナルな食感は間違いなくクセになる。
[住所]東京都千代田区神田神保町1-3
[営業時間]11時半~22時LO、土・日12時~18時半LO
[休日]祝
驚きのアルデンテ。しかし間違いなくナポリタンなのだ|珈琲館 専大前本店
全国的大手チェーンならではのクオリティが煌めくナポリタン。あえてナポリタンには求めるものではないけれど、なんとしっかりアルデンテなのだ!
なおかつ炒められた自社製ソースがノスタルジーを生むという死角のなさ。客席と隔てられた喫煙ブース(喫煙席ではない)があるのもありがたい。
[住所]東京都千代田区神田神保町3-1 日建ビル1階
[営業時間]7時~23時、土・日・祝8時~20時
[休日]無休
焼きそばなのか? ナポリタンなのか? どちらでも大満足!|東京焼き麺スタンド 神保町店
番外編として、話題の焼き麺専門店が提供するナポリタンも。
モッチモチの麺と濃厚なトマトソース。ベーコン&ソーセージのダブル肉加工品の迫力。新たなナポリタンの世界を見た。
[住所]東京都千代田区神田神保町1-5-13
[営業時間]11時~21時、土・日・祝~17時
[休日]不定休
ママとマ・マーとナポリタン!
ナポリタンと聞くと思い出す。
パスタなんて名前が一般的になる前、スパゲティ……いや、スパゲッティ、人によってはスパゲッチなんて呼ばれてた頃を。
そんな郷愁をそそる食べ物だけに、古書店街である神保町とは必然的にウマが合うのは当然の話かもしれない。
思い返せば、初めてナポリタンを食べたのは、もう50年近く前の小学校低学年の頃。
近所の食品店で、「マ・マースパゲティ」の袋に入った、茹で麺と粉末ソースがセットになったヤツを見つけ、あまりに美味しそうなんで購入し、自分でフライパンで炒めて作った時だ。
具は何も入れず、ただ麺とソースを炒めただけだったのだが、これが抜群に美味しかった!
ちなみにこの商品は、ソースこそ粉末から液体に変わっているが、今も「マ・マー ゆでスパゲッティ ナポリタン」という名前で製造販売されている!
そして初めて外食としてナポリタンを食べたのはそれから3年ほど後。
横浜・桜木町の、今は「ぴおシティ」という名前の、地下には立ち飲み屋などが軒を連ねる味のあるビルが、まだ「ゴールデンセンター」と呼ばれていた頃。母親グループ&友達グループで入った、これも地下の喫茶店でのことだった。
マ・マー以来、常に“ナポリタン=バカウマ”の概念があったので、メニューにその名を見つけると即座に注文した。
そして出てきたナポリタンの姿形は、今でも鮮明に目に焼き付いている。
ステーキ用の鉄板皿に薄焼き玉子が敷かれ、その上に、ソーセージ、玉ネギ、ピーマン、マッシュルーム(間違いなく缶詰の)と共に炒められた赤いスパゲッティ!! そして横に添えられたタバスコ(生まれて初めてタバスコを見たのもこの時!)と円筒形容器の粉チーズ!!
鉄板皿と薄焼き玉子は別としても、それを除けば、神保町で食べたナポリタンもすべて間違いなくほぼこのスタイル!
なにしろタバスコと円筒形容器の粉チーズも全部の店で添えられてたもんなァ~。
これが高級なパルミジャーノを目の前で擦られても、
「それは違うよ!」
と言いたくなるもん。
麺が柔らかい店。コシがある店。強烈に炒める店。ソースを乳化させる程度の店など、それぞれ味は千差万別なれど、フォルムは50年前も今も変わらない、これが喫茶店のナポリタン!
逆にいうと、これらの具でケチャップメインで赤く味付けたスパゲッティならば、それはすべてナポリタン!! あとはどうでもよろしい! “どうでもよろしい”っていうのは、このスタイルならば、どう自由に料理しようが、旨くなっちゃうからだ!
つまりは自由かつ完成度も高いんだなァ~ナポリタン!
ITの時代ではありますが、永遠に残るであろう紙の本を象徴する古書店街・神保町。
そしてパスタの時代になっても変わらぬ人気のナポリタン。
この共通性が、人を神保町でナポリタンに誘う。
そして! “神保町でナポリタン”とは、人間の変わらぬ本質を確認する食行為なのだ!
撮影・文/カーツさとう
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