巷に数多ある自動販売機。大抵は飲料ですが、たまに「ん?」と2度見するような自販機があります。最近その現象に陥ったのが、大田区の住宅街にある冷凍ラーメンの自販機。2021年3月の設置以来、近隣住民をはじめ、街に欠かせない存在になっているということで取材しました。
画像ギャラリーコロナ禍が生んだ自動販売機
2021年3月23日、大田区上池台の住宅街に一台の自動販売機が設置されました。「ヌードルツアーズ」と書かれたその自販機。筐体の左上には「冷凍ラーメンの自動販売機!」と書かれています。
これはなんとも珍しい。しかも全国の有名ラーメン店の味が買えるというではないですか! 設置したのは、自動販売機からすぐの場所に工場兼オフィスを構える「丸山製麺」。創業63年、中華麺・うどん・そば・餃子の皮などを扱う、業務用の製麺会社です。
製麺技能士の管理のもと、年中安定して製品を提供。取引先は関東を中心に3000ヶ所以上に渡ります。しかし2020年、新型ウィルスの影響で飲食店等へ卸せる量が減少。新たな取り組みとして、月に一度の工場直売、オンラインショップのリニューアルと、この自動販売機の設置が行われました。
「業務用の生麺を自宅でも食べたいという要望が多かったことが大きい」と語るのは、取締役の丸山晃司さん。2020年2月に販売開始された冷凍食品用の自動販売機の存在を知り、オンラインショップで取り扱っている冷凍ラーメンを販売しよう! とプロジェクトを進めました。
こうして設置された「ヌードルツアーズ」のメンバーに選ばれたのは、二郎系、鯛塩、煮干し、担担麺の4種類のラーメンと、餃子1種類。
スープは店で仕込んだものを冷凍。お店そのままの味が楽しめるのが大きな魅力。スープには多少の具材が入っていて、ラーメンによってはチャーシュー・メンマが別袋になっているものもあります。しかも、麺の量はお店と同じ!
学研通りから路地を入ってすぐ、丸山製麺の先に自販機はあります。
24時間運用しているので、夜はここだけが光り輝き、それはそれは目立つそう。その光に吸い込まれるように、夜中に買う人もいるんだとか。夜遅くまで店がやっていない状況下、店の味が楽しめるのは貴重です。近隣の人にとって、非常にありがたい存在であることは間違いありません。
日中は昼ごはんに買われる人が多く、ファミリーで来て「私はコレ、僕はコレ」とフードコートのように楽しみながら買う姿が見られるそう。なんとも微笑ましい光景だ。
ほかにも学生や近隣で働く人も訪れていて、早くも街に溶け込んでいる様子。取材中も丸山製麺に来た業者さんが大量買いしているのを目撃しました。
【購入】大量買いする人に共感
さて、自分もラーメンを買ってみます。
機械はタッチパネル式。ほしい商品の番号を押したら、「かう」または「カートに入れる」ボタンをタッチ。ひとつだけの購入であれば「かう」でOKだが、複数買いたい場合はカートに入れて、また別の番号を押していく。
「カートに入れる」があることで、まとめ買いが簡単にできるのは便利。その反面、カートに入れられる気軽さが、Amazonで買うかの如く、ついついたくさん買ってしまう。
ホントはラーメン2種と餃子1種を買うつもりが、もう1種買ってしまったのだからこの考察は間違っていないはず。
ちなみに現在は現金のみの対応(1000円しか入れられないので注意!)だが、今後はキャッシュレスにも対応するとのこと。そうなると、もっとたくさん買ってしまいそうだ……。
さて、「かう」を押すとガチャンと1回目に押したラーメンが降臨。
パックに入ったラーメンはずっしり重く、パックも大きめ。それゆえ、家に持ち帰ったお父さんが冷凍庫にガシガシ入れたところを奥様に見つかって怒られたという人もいたとか。
それ以来、その方はまとめ買いではなく、家で食べる分だけ買うようになったという。家の冷凍庫使いとしても真価を発揮する「ヌードルツアーズ」恐るべし。
【実食】湯煎で簡単に完成! その実力の程は!?
では、購入した3種の冷凍ラーメンと餃子1種類を食べるとしましょう。パックを開けると麺、スープ、種類によっては具材がギッシリとおさまっています。
スープは湯煎。沸騰したお湯が入った鍋でだいたい10〜12分程。麺も同じ。こちらはほぐしてから1分15〜30秒、種類によっては5〜6分ほど茹でます。あとは丼に入れていくだけなので非常に簡単です。
『鯛塩そば 灯花』の愛媛宇和島鯛塩塩らぁ麺
940円
ひとつ目。曙橋に本店を構える実力店の一杯。透き通った黄金スープは、日本一の産地・愛媛県宇和島市から直送した真鯛からダシをとっています。
チャーシューとメンマが入ったスープを丼に注いだ瞬間から、真鯛の芳醇な香りがふわっ。おぉ、こりゃすごい。
飲むと真鯛の旨みが喉を通り抜ける。店で作って冷凍しているから当たり前だけど「お店の味だぁ」と思わず口を衝く。
この繊細なスープは、チルドの袋麺では難しいと思う。つるっとした細麺がよく絡み、140gの麺がするするっと胃袋に消えていった。
『菜香新館 匠Jang』の「麻辣担担麺」
900円
スープを丼に注ぐと同時に広がるゴマと花椒の香りに、食欲がそそられます。スープを飲むと、ゴマよりも花椒が利いていて、食べ進めていくうちにシビレがどんどんやってくる、好きなタイプの担担麺。
麺は灯花より少し細い印象。具材はたっぷりの挽き肉を言わずもがな、細くカットされたザーサイが食感のアクセントになっていて、すごくいい。
おうちなら、残った挽き肉をご飯にのっけたり、スープ自体をかけたり、1杯で2度楽しい食べ方だってできちゃいます。“プチ背徳メシ”をお楽しみあれ。
『らーめんバリ男』の「らーめんセット」
940円
ラーメンのラストを飾るのは、“二郎系”。厳選の豚骨を大量にじっくりと煮込んだ濃厚スープが特徴で、醤油と背脂の風味・旨みが合わさった一杯です。
食べてみたいけどお店には行くのは抵抗がある、ファミリーだとなかなか行けないという人にとって、自販機で買えるのはうってつけでしょう。おうちで作るのも難しいラーメンだけに、ヌードルツアーズで一番売れているのも納得です。
やはり豚骨の香りが強く、室内に充満します。換気を十分に行った上で調理することをおすすめします。
背脂やにんにくは入っていない分、スープ自体はマイルド。にんにくがダメな人も、二郎とはなんぞやを知る“入門編的”に食べるのもいいでしょう。特製唐辛子が同封されているので、辛みを加えて味変もできます。
麺はお店と同じ300g。そのため他よりも茹で5〜6分と他よりも時間が長いです。このセットのために作られた麺で、某店と同じ強力粉のオーションを100%使用。極太でわしわしとした食感は食べ応え十分。
開店から継ぎ足している特製ダレに漬け込んだチャーシューが3枚入り、満足度が高いです。
失礼ながら、バリ男ってこんなに美味しいんだ! と驚きました。お店にも行かなきゃと思わせるほど。ジロリアンには物足りないかもしれませんが、おうちで食べているわけですから、どれだけマシマシしてもOK。好みの味にできるのは“家ラーメン”の醍醐味でしょう。
『雷神』の雷神餃子(25個入り)
1000円
最後は、千葉県市川市の『油そば 雷神』の名物『雷神ぎょうざ」。
植物性タンパク質は一切不使用。背脂を餃子の皮に練り込み、その背脂は国産のA脂を毎日4時間煮込んでいるという手間のかけようです。
鮮度のいい豚肉の旨み、背脂のコクに、キャベツ・ニラの食感。すべてがうまく口中で絡み合う絶妙のバランスの良さ。サイズもちょうどよくパクパクいけます。醤油いらずでそのまま食べられるのもいいです。
茹で餃子にすることもできるので、冬は鍋の具材に入れてもよさそうです。
【総括】おうちでお店の味が気軽に味わえるのは素直にスゴい!
食べてみた率直な感想は、湯煎だけでこのクオリティのラーメンが味わえるのは素晴らしいということ。
お昼どうしようかなぁ、夜食にほしいなぁ、家呑みの〆に食べたいなぁ……そんなときにサッと買えて、もしくは冷凍庫に入れておけばすぐに作れるというのは相当便利。また湯煎でできるという面では、非常食としての役割も果たせると思います。
900円台という価格だけ見れば高いと感じるでしょう。また、お店で食べるのとほぼ同じ値段ではありますが、自販機なら24時間買えますし、もともとはオンラインショップで販売していた商品ですから送料を考えるとむしろお得です。
あとは読者のみなさんもそう思うでしょうけども、自分ん家の近所に自販機が設置されれば! です。住宅街における新しい提案として丸山さんは考えているので、今後は設置場所の拡大を検討していました。みなさん、我が街へ来い! と丸山製麺さんに念を送りましょう。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
画像ギャラリー