巣籠生活をリッチに「見蘭牛ビーフカレー」がうまいワケ

天然記念物の「見島牛(みしまうし)」の血統を受け継ぐ「見蘭牛(けんらんぎゅう)」を使ったレトルトのビーフカレーがあります。通常のレトルトよりはお値段高めのいわゆる“ご当地カレー”ですが、希少なブランド牛の旨味が詰まった納得の美味しさです。

画像ギャラリー

天然記念物の「見島牛」から誕生したオリジナルブランド牛

ご当地カレーの「見蘭牛ビーフカレー」は、地元で食肉の生産加工販売や牧場、レストランを営む「みどりや」の人気商品です。見蘭牛とは、この見島牛の父親とオランダ原産のホルスタインの母親から生まれたみどりやのオジリナルブランド牛。萩特産の牛肉です。

山口・萩のご当地カレー「見蘭牛ビーフカレー」

見島牛は、西洋種の影響を受けていない純粋な和種として知られています。生息地は、萩市の北西約45キロの日本海にある見島。1928(昭和3)年9月20日には「見島ウシ産地」が、国の天然記念物に指定されています。この離島に生息していたことなどから、西洋種との交配を免れることができました。

ただ、見島牛は農耕に使われていたことから、農機具の機械化が影響し、戦後の高度成長期には減少の一途をたどります。萩市によると、50(昭和25)年には574頭の記録が残っています。それが55(昭和30)年に501頭、60(昭和35)年に318頭、65(昭和40)年に166頭、70(昭和45)年には61頭となり、76(51)年には33頭にまで激減してしまいます。その後は、行政の支援もあって頭数は徐々に増え、現在では100頭近くが島内の農家5戸でつくる「見島牛保存会」によって飼われています。

見蘭牛は、この見島牛の種の保存と利用を目的として誕生しました。73(昭和48)年に、みどりやと名古屋大学によるプロジェクトチームが発足。第1号が生まれたのは79(昭和54)年のことでした。萩市内にあるみどりや直営の「萩見蘭牧場」では現在、約300頭の見蘭牛が肥育されています。見島牛は繁殖に関係しない牛の出荷は許されており、この牧場内でも数十頭が育っています。

口の中でほどける「やわらか牛角煮」

見蘭牛の肉の特徴は「見島牛のきめ細かな霜降りと濃厚な赤身の肉質を色濃く引き継いでいます」(みどりやのホームページより)。このブランド牛を使い、見蘭牛ビーフカレーは十数年前に商品化されました。みどりやによると、そもそも食材の見蘭牛が少ないため、製造量がもともとあまり多くない“レア”な商品とのことです。「じっくり煮込んだ見蘭牛の角煮がたくさん入っています。牛肉の旨味がしっかり感じられるカレーです」(担当者)

見蘭牛の旨味が凝縮された濃厚な味わい

その自慢の一品を、試してみます。電子レンジでも大丈夫ですが、説明書きにあるように、袋を熱湯に入れて5~6分間「コトコト煮込むように」温めます。封を切ると、カレーのスパイシーで甘い匂いが鼻孔をくすぐりました。まずはルーを一口。辛さは「中辛」といったところでしょうか。野菜や果物がしっかり溶け込んでいて、やさしい甘さを感じます。コクがあって、マイルド。しばらくすると、スパイスの余韻が舌の奥に漂います。とても美味しいルーです。

そして、肝心の見蘭牛の角煮を味わいます。ごろごろした大きな肉が、たしかにたくさん入っています。角煮はやわらかく、かむと口の中でほどけていきます。濃厚な肉の旨味がぎゅっとつまっています。よく煮込まれたトロトロの食感も味覚を刺激します。うん、うまい!!

赤ワインが肉の旨味を引き立てます

これだけ食べ応えのある牛角煮が入っていると、赤ワインを試したくなります。軽くなめらかな味わいのピノ・ノワール品種のカリフォルニアワインを合わせてみましたが、肉の旨味が引き立ち、一層贅沢な味わいに進化しました

歴史に彩られたご当地カレーで食卓が豊かになる

「おいでませ山口館」は緊急事態宣言で、臨時休館中

見蘭牛ビーフカレーは、東京・日本橋にある山口県のアンテナショップ「おいでませ山口館」で開催中の「山口うまいものフェア」で紹介(4月16日~5月15日)されていました。普段は店内に置いていないので、買えるのはフェア期間中のみ。ただ、東京、大阪など4都府県に緊急事態宣言(4月25日~5月11日)が出されたことで、おいでませ山口館は臨時休館中です

しかし、見蘭牛ビーフカレーは地元の直売店などのほか、ネット通販でも購入が可能です。みどりやオンラインショップでの価格は1個税込み702円。スーパーでよく見る一般のレトルトカレーに比べると、かなり高価ですが、食べれば納得の味です。食事を作るのが面倒な時でも、このレトルトカレーならリッチな気分が味わえます。見蘭牛の角煮を味わうと、地域の歴史と携わった人たちの情熱が伝わってきます。巣籠生活を彩るご当地カレーの逸品です

「みどりや」の企業情報

1956(昭和31)年創業で、食肉の生産加工販売に加えレストランや牧場を経営。本社併設直売店のみどりや本店では、特産牛肉の「見島牛」や「見蘭牛」に加え、オリジナルの自家製ハム・ソーセージ、コロッケやメンチカツなどの手作りの惣菜や弁当なども販売しています。牧場直送の新鮮な肉を使った本物の味が楽しめます。

[住所]山口県萩市堀内89
[電話] 0838-25-1232

撮影・文/堀晃和

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

神戸から届いた熱々のトロけるチーズケーキとは?女優・大野いとのお取り寄せ実食リポート

名古屋の人気店『和牛熟成肉 まるはち』自慢の熟成肉ハンバーグ これはご飯がすすむ!

母の日に贈りたい!ベスト10を発表 定番のスイーツを抑えて1位に輝いた逸品

広島の“愛され”ご当地グルメ「桐葉菓」 冷凍しても“モッチモチ”の四角い“焼き饅頭”

おすすめ記事

築地を52年間支えてきた『長生庵』は築地ならでは「海鮮10色丼」が大人気 「二八」に近い蕎麦は“伸びにくく”“のど越しよし”

浅田次郎が、日本国民として、自衛隊OBである小説家として、市ヶ谷台の戦争遺産を壊そうとする政府に激怒した理由

【全室露天風呂付き】おこもりにも◎な、赤湯・磐梯山麓・磐梯熱海のおすすめ温泉宿3選 

築地は海鮮だけじゃない!実は由緒ある建築物が並ぶ「歴史の街」である理由とは?

六本木スタイル“もんじゃ” ジャンボホタテがどどんとのった『六本木もんじゃ4RO』

『七一飯店』の“頭”だけ「ルーローハン」が酒に合う!! 50度以上の「白酒」も「サワー」で飲みやすい 

最新刊

「おとなの週末」2024年5月号は4月15日発売!大特集は「銀座のハナレ」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。4月15日発売の5月号では、銀座の奥にあり、銀…