ニッポン“チャーラー”の旅

チャーラー不毛の地? 宮崎の超こってり豚骨ラーメンとシンプルチャーハン/ニッポン“チャーラー”の旅 第8回

チャーラー不毛の地? 宮崎で超こってり豚骨ラーメンとシンプルチャーハンを喰らう/ニッポン“チャーラー”の旅 第8回

チャーラー不毛の地? 宮崎で超こってり豚骨ラーメンとシンプルチャーハンを喰らう/ニッポン“チャーラー”の旅 第8回

チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回は宮崎県へ。しかし、チャーラーがない! 現地の友人に聞き、たどり着いたチャーラーとは。宮崎ラーメン事情とともにお届けします。

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先日、宮崎県へ行ってきた。同じ九州でも福岡はわりと頻繁に訪れているので、宮崎や大分、鹿児島への出張は心が踊る。とはいえ、チキン南蛮や宮崎地鶏の炭火焼き、宮崎牛のステーキなど宮崎の名物はこれまでに何度も食べた。と、なると、やはりチャーラーしかない。

中央卸売市場内にあるチャーハン専門店

ところが、グルメ情報サイトでチャーラーを検索しても、なかなかヒットしない。中華料理店もあるにはあるが、今ひとつソソられないし、ラーメン店でチャーハンをサイドメニューに出している店も少ないのだ。

そんな中、面白い店を見つけた。この日は昼過ぎから取材。ランチをどこで摂ろうか探していたときにヒットしたのだ。

『チャーハン専門店 焱(えん)』。中央卸売市場内にあるからなのか、営業時間は10時〜14時

それが宮崎の中央卸売市場内にある『チャーハン専門店 焱(えん)』。その名の通り、メニューはチャーハンしか置いていない。入り口近くの券売機で「ハムととり」、「ぶた」、「えび」、「地鶏」、「かに」の中から好みの具材と、S、M、Lと量を選ぶシステムのようだ。

私が選んだのは、「かにチャーハンM」。宮崎ならではの地鶏を使ったチャーハンにしようかと迷ったが、カニはチャーハンの具材として最高峰。しかも、たったの650円で食べられるのが決め手となった。

客席から厨房は見えないが、中華鍋を振る音は聞こえる。チャーハンの自動調理器の音ではないし、オーダーごとに作っているようだ。まぁ、専門店を名乗るのなら当たり前の話だ。

「かにチャーハン」(650円)。Mサイズながらたっぷりのボリューム

5分ほど待ったところで目の前に運ばれたのがこれ。量こそ少ないものの、しっかりとカニの身が入っているではないか! しかも、スープも付く。ここだけの話、値段が値段だけにカニカマでも仕方がないと思っていただけにちょっと感激。では、熱々のうちにいただきます!

うん、食感はパラパラ系。お米はややかために炊き上げていて、ちょうどよい塩梅。噛みしめるごとに油でコーティングされたご飯の甘みが広がる。味付けは塩ベース。やや濃い目に感じたのは、市場で働く人たちに合わせているからだろう。

そもそも宮崎ラーメンとは

『チャーハン専門店 焱(えん)』の「かにチャーハンM」は、間違いなく巷の中華料理店のチャーハンよりも美味しかった。が、この連載は「チャーハンの旅」ではなく「チャーラーの旅」。せっかく宮崎まで来たのに収穫ゼロでは名古屋へ帰れない。

そんな中、出張一日目の夜に食事をした宮崎県在住の友人、ウチムラ君から

「サイドメニューにチャーハンを出すラーメン屋があるのを思い出した!」と連絡をもらった。しかし、名古屋への飛行機の出発時間は14時。チャーラーを食べて空港へ向かうにはギリギリだ。そこで、11時の開店と同時に入店して12時に店を出ることにした。ありがたいことにウチムラ君も同行してくれるという。

『風来軒 加納本店』。ここ本店以外にも宮崎市内に2店舗展開している

それがJR日豊本線加納駅の近くにある『風来軒 加納本店』。15分ほど早く到着すると、店の駐車場で待っていたウチムラ君が開口一番、

「ここは宮崎ラーメンの中では新しい方だけど、ここのラーメンは中毒性があるんだよね。20代の頃は週3、多いときで週5で通うほどハマっていた」と、語った。

そういえば、私は宮崎ラーメンについて何も知らない。それどころか、博多と熊本、鹿児島、それぞれのラーメンの違いは何となくわかるものの、博多と久留米はまるで区別がつかない。生まれも育ちも宮崎のウチムラ君に聞いてみると、

「豚骨スープだけど、博多ラーメンのような濃厚さはない。基本的にあっさり系の豚骨が宮崎ラーメンの特徴かな。でも、ここ『風来軒』は超こってり。若い頃に通っていたのは、よその店にはない濃厚さを求めていたからかも」とのこと。

ほんのりと甘い豚骨スープと相性の良いチャーハン

おっと、店内からスタッフが出てきて、のれんを出した。どうやら開店したようだ。テーブル席へ案内され、私は「とんこつ」(780円)と「チャーハン」(610円)、友人は「とんこつ」よりもややあっさりした「プレハブ」(760円)を注文した。

「ちなみに『プレハブ』というメニュー名は、プレハブ小屋で営業していた創業当時の味を再現したのが由来。さっきの宮崎ラーメンの話だけど、『きむら』と『栄養軒』が昔から2大宮崎ラーメンと言われていたんだけど、こってり系の『風来軒』の登場によって、一概に宮崎ラーメン=あっさり系とは言えなくなったかもしれない」と、ウチムラ君。

さらに、彼は地元でチャーラーを食べた記憶がないという。中華料理店でもチャーラーのセットがないし、サイドメニューにチャーハンを出しているラーメン店も少ないので無理はない。宮崎ではチャーラーという文化が存在しないかもしれない。

「とんこつ」(780円)。具材は、トロトロに煮込んだチャーシューとメンマ、海苔、ネギ

そんな話をしていると、注文した「とんこつ」が運ばれた。もう、見るからにコテコテ。スープの色は、京都の『横綱ラーメン』に似ている。そういえば、私も若い頃は深夜1時とか2時に『横綱ラーメン』を食べてもまったく平気だった。正直、五十路の胃腸にはキツイが食べるしかない。

ってことで、まずはスープをひと口。あれ? たしかにこってりだけど、口当たりがマイルドでほんのりと甘い。じっくりと豚骨を煮込んでスープを抽出したことが伝わってくる。たしかにこれはクセになる味だ。

次にやや太めの麺を箸でリフトして啜ってみる。おおっ! モチモチとした食感といい、鼻から抜ける小麦の香りといい、濃厚なスープに負けていない。

年をとったこともあり、こってり系の豚骨ラーメンからすっかり遠ざかっていたが、新鮮な旨さを感じた。

「チャーハン」(610円)。このシンプルさには理由があった

おっ、今度はチャーハンが運ばれた。具材はチャーシューとネギ、ニンジン、卵とシンプル。昼の時間帯は、事前に作り置きしたチャーハンを炒め直して提供する不届きな店もあるが、ここはイチからちゃんと作っている。

味付けはチャーシューのタレや醤油ではなく、塩・コショウがメイン。しかし、このシンプルさが豚骨スープの甘さを中和させて、より美味しく食べられるのだ。うん、実によく考えられている。

今回、私はフルサイズの「チャーハン」を注文したが「ミニチャーハン」も用意している。値段は390円、と気軽に注文できる。『風来軒』はもっとチャーハンを推してもよいと思う。そして、チャーラー不毛地帯の宮崎でチャーラーを文化として根付かせてほしい。

食べ終わった後、ウチムラ君にお礼を言って宮崎空港へ向かった。

取材・撮影/永谷正樹

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