文化財に囲まれて朝風呂、注目の高温サウナでリフレッシュ 京都は“銭湯王国” 暮らすように楽しむ京都(2)

凛とした空気が心地よく、人の流れも心なしか緩やかな冬の京都は、忙しい日常を送るわたしたちが自分と向き合い、心身をととのえ、新しい境地を得られる大切な時間を与えてくれます。もっと身近に体感する「暮らすように楽しむ京都」をコ…

凛とした空気が心地よく、人の流れも心なしか緩やかな冬の京都は、忙しい日常を送るわたしたちが自分と向き合い、心身をととのえ、新しい境地を得られる大切な時間を与えてくれます。もっと身近に体感する「暮らすように楽しむ京都」をコンセプトに、3回にわたって、京都での体験を紹介します。第2回は、“銭湯王国”ならではの趣向を凝らしたお風呂の話題です。

府内に100軒が営業中 戦前からの老舗も現存

京都の街を歩いていると、路地裏に趣のある「〇〇湯」と掲げた看板が目につきます。そう、京都は知る人ぞ知る、全国屈指の銭湯の多い街でもあります。京都府浴場組合によると、府内では約100軒の銭湯が営業中とのこと。そのほとんどが京都市内にあります。また、戦火を逃れたため、戦前から営業を続けている老舗も多く、個性的なお風呂が楽しめるのが特徴だとか。

大正・昭和の趣を残す「船岡温泉」の豪華絢爛な造り すべてが芸術品で迫力満点!

中でも国の登録有形文化財に指定されている「船岡温泉」(京都市北区)は、1923(大正12)年に料理旅館「船岡楼」の付属浴場として創業したことに始まります。こちらでは日曜日のみ、午前8時から朝風呂を楽しむことができます。

まちなかにある「船岡温泉」の堂々とした佇まいは、ひときわ異彩を放っている=京都市北区

落ち着いた街並みにひときわ目をひく唐破風(からはふ)造の佇まい。心踊らされ、暖簾をくぐると、その豪華絢爛な空間に思わず眼が大きく開きます。漆塗りの格(ごう)天井の中央に鞍馬天狗と弁慶の彫刻が施され、迫力満点。男女の脱衣所を仕切る壁の欄間は細やかな透かし彫りとなっており、贅沢な雰囲気を醸しています。内装には明治末期から普及した、あざやかなマジョリカタイルが何種類も使われています。えもいわれぬ美しさに包まれて、朝から至福の時を過ごせました。

鞍馬天狗と牛若丸が描かれた華やかな格天井(中島幸恵撮影)

船岡温泉は、西陣織の職人街にあり、派手好きの若旦那衆によって発展したと言われています。おっと、つい芸術性の高さに見とれて、お風呂に入るのを忘れてしまいそうです。

脱衣所の欄間には透かし彫りが施され、豪華絢爛な造りとなっている(中島幸恵撮影)

450円で日本初の電気風呂、露天風呂まで… 

こちらのお風呂、レトロな内装とは対照的に近代的な設備を施しています。日本で初めて導入された電気風呂のほか、銭湯には珍しいひのき風呂、薬草湯やジェットバス、サウナや露天風呂まで楽します。京都の銭湯の入浴料はおとなが450円。この金額ですべてを楽しめるのは、なんともお得です。

カラフルなマジョリカタイルに囲まれて、なんとも幸せな気分に(中島幸恵撮影)

ちなみに「温泉」とはいうものの、天然温泉ではなく、豊富な地下水を汲み上げてわかしています。「当時は温泉の出なかった京都でなんとか『温泉』の許可が取りたいと考えた2代目が、1933年(昭和8年)に日本で初めて電気風呂を導入し『特殊船岡温泉』として許可を受けました」(船岡温泉のホームページより)ということです。

露天風呂はひのき風呂となっており、日本庭園を眺めながら、ゆったり入ることができる(中島幸恵撮影)

文化財に囲まれ心ゆくまで朝風呂を堪能すれば、体中の巡りが良くなり、身も心も軽くなった分、活力がみなぎってきます。まさに「早起きは三文の得」、京都ならではの優雅な楽しみのひとつと言えるでしょう。

高温サウナが人気 地元民にも観光客にも愛される「白山湯」

さて、京都の銭湯は夜遅くまで地元住民を中心に賑わっています。大通りから入った路地裏に並ぶ町家の明かりに京都らしさを感じながら、「白山湯 高辻店」(京都市下京区)へ。暖簾をくぐると、既に午後10時を回っているものの、男湯からは楽しそうに、笑い声が聞こえてきました。地元の人達の憩いの場となっているのでしょう。

女湯も化粧品を入れたお風呂セットを持った近所の女性たちが次々と入ってきて、銭湯が地元民に愛され、日常生活のなに欠かせない習慣になっているのがわかります。お互いすっぴんで湯船に入れば、地元の方々と裸のおつきあい…とは言えないまでも、ちょっと距離感が縮む気がするのも銭湯ならではの良さです。

薬草湯、ジェットバス、電気風呂…開放感あふれる空間でさまざまな内風呂も存分に楽しめる=「白山湯 高辻店」(京都市下京区)

最高100度以上にも!天然名水のお湯は、つるつるなめらかな肌ざわり

こちらの銭湯、100度以上にもなる高温サウナが人気だとか。最近のサウナブームもあり、全国からサウナ愛好者が訪れる巡礼スポットになっているようです。では、いざ、サウナ室へ。坐禅の境地を思い出し、腰を下ろしていると、ふわっと体が軽くなって、心身の疲れがじんわりと汗と一緒に吹き出していくよう。

最高100度以上にもなる高温サウナに注目!サウナの後は水風呂でさっぱり!=「白山湯 高辻店」(京都市下京区)

お次は、きれいな紫色につられ、日替わり風呂に。紫色は、紫根(しこん)という薬草から抽出しているそうで珍しく、高貴な気分になります。天然名水を使ったお湯は、なめらかな肌ざわりで湯冷めしにくいのも、冬場は特にうれしいですね。つるつるお肌にご満悦で白山湯を後にしました。

禅宗では、日常の行いすべてが修行であると考えられており、身体の汚れを落とす入浴は、修行に欠かせない大切な役割を持っていると言われています。凝り固まった心身をほぐし、清める行為は、京都で銭湯に入ると、格別な意味を持つように感じました。銭湯巡礼、また、京都での楽しみがひとつ増えました。

船岡温泉
【住所】京都市北区紫野南舟岡町82‐1
【営業時間】月曜~土曜15時~23時半
      日曜8時~23時半
【定休日】無休
【料金】450円
【電話】075‐441‐3735

白山湯 高辻店
【住所】京都市下京区東中筋通松原上ル舟屋町665
【営業時間】月曜~金曜15時~24時
      日曜7時~24時
【定休日】土曜
【料金】450円
【電話】075‐351‐3648

文/中島幸恵

JR東海が主催する京都の旅「そうだ 京都、行こう。」では2022年冬、『禅と湯 ととのう京都』をテーマに、各種プランを多数ご用意しています。京都府浴場組合加盟店の入浴券(いずれか1箇所)やオリジナルタオルなどが入った「ととのうセット」も発売中。

※新型ウイルス感染拡大に伴い、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請など最新の情報をご確認ください。

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