東京 旨い&高コスパの焼き鳥店11選

牛もいい。豚も好きだ。でも、炭火でじっくり焼き上げられたそれを口に含めば、香ばしさと旨みがジュワッとにじみ出す。焼鳥はやっぱり格別に旨い。てなわけで、旨い! はもちろんのこと、高コスパの秀逸な焼鳥店を探し出してきました。

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『志そ鳥』@西荻窪

冴え渡った王道を行く焼きのセンスと技 旨さの本命ここにあり

焼き上がったばかりの串を見た瞬間、直感的に旨さを確信した。皮目は余分な脂を落として張りがあり、その下にひそむ身はパンパンに膨らんでいる。

かぷりとやれば、サクッと音がなるほど心地良い食感から、熱々の肉汁が弾けるように飛び出してきた。なんとも惚れ惚れする火入れだ。

6串コース2000円

6串コース2000円
この日は、皮はパリッ身はしっとりのムネ肉に、肉汁あふれるモモのねぎま、半熟でタレを染み込ませたウズラの卵、砂肝、つくね。野菜串はジャンボマッシュルーム「六甲シャンピニオン」だ。

さらに店主の志津さんは香りにも細やかに気を配る。表面が真っ白に完全燃焼した紀州備長炭の上で炙ることで、立ち上る煙をできるだけ抑え、串にまとわせる燻香はあくまで穏やかに。鶏が持つ風味をストレートに表現しているのだ。

奥久慈軍鶏や水郷赤鶏といった力のある素材もさることながら、焼き手の技と感性が抜きん出る。王道をまっすぐに突き進む骨太な旨さの虜になる。

『志そ鳥』

[住所]東京都杉並区西荻北3-14-4
[電話]03-5311-5077
[営業時間]18時~23時
[休日]日
[交通]JR中央線ほか西荻窪駅北口から徒歩3分

『ヨシモリ』@東銀座

味わいの緩急が楽しい 洗練されたコース仕立て

東銀座の路地。真っ白い暖簾が真摯な姿勢を表すかのように清々しくはためいている。端っこに小さく「ヨシモリ」。と、ここでピンときた人はさすが焼鳥好き。そう、惜しまれつつ閉店した名店「たて森」の味を受け継ぐ店である。

コース仕立てで供するスタイルは今も変わらず。タレや調味料など要の部分は「たて森」の精神を守りつつ、現大将の技を随所に散りばめている。

大事にするのはひと串をひとつの料理とイメージして仕上げること。肉の水分を閉じ込めるよう表面を鶏油でコーティングしたり、内臓系は香辛料入りの酒を塗ってクセを和らげたり。

お任せセット〈 焼き物七種 〉5400円(内容は随時変わる)

お任せセット〈 焼き物七種 〉5400円(内容は随時変わる)より、手前からハツ、うずら玉子、もも、レバー
うずら玉子は半熟とろとろで、仕込みにも焼きにも繊細な配慮が必要。レバーは濃厚な旨み。タレは「たて森」の味を継ぎ足しで守っている

串の合間に旬の小鉢を織り交ぜる洗練された構成の緩急にもため息。わかってくれてるよなあ。最後まで唸るばかりだ。

『ヨシモリ』

[住所]東京都中央区銀座2-14-8伊藤ビル1階
[電話]03-6278-7759
[営業時間]18時~22時(21時LO)※政府の要請で変更あり 
[休日]日・月
[交通]地下鉄日比谷線ほか東銀座駅3番出口から徒歩5分

『新田裏 とり辰』@新宿

黄金色の美しい焼き色と絶妙な火入れ納得の旨さに唸る

棚からボタ餅じゃないけれど素通りしそうなビルの2階でイイ店みっけ。和食出身の店主がここ新田裏に店を構えて12年、知る人ぞ知る名店だ。

焼き鳥各350円

焼き鳥各350円、左から、皮、せせり、もも、ひざ、手羽先

何が違うって焼きの技。団扇で勢いよく仰ぎながら強火を操る店も多いが、こちらはあえてそれを封印。ガンガンに火を熾さず、静か~な火力でじっくりと火入れする。

なぜかと聞けば「焦がさないよう均一に焼くため」なんだそう。仕上がりを見て納得、味わえば驚愕。外側はパリリと香ばしいのに、いわゆる低温調理的な効果があるのか中はふっくら、旨みの密度がハンパない。

さすが板前歴30年、料亭仕込みのつまみも抜群だ。通って常連になりたいな。

『新田裏 とり辰』

[住所]東京都新宿区新宿6-27-17カノープス新宿2階
[電話]03-3202-8999
[営業時間]17時半~22時(21時半LO)※政府の要請で変更あり
[休日]日・祝
[交通]地下鉄副都心線ほか新宿三丁目駅E1出口から徒歩3分

『晩鶏』@西麻布

身も心も胃袋までも跪く 名物団子の圧巻の旨み

何しろ私は焼鳥が好きなもんで、職人の美学が詰まったその1本をもはや神の如く崇める人間だ。

だってですよ、『晩鶏』の場合。選んだ銘柄はしっかりした肉質の千葉・水郷赤鶏。食べ応えや食感を計算した串打ちは焼く前から美しく、例えばレバーはほどよいレアの中心部からグラデーションになるよう施す絶妙な火入れ……それら技の結集が目の前に現れたら、そりゃあもう拝む訳です。

晩鶏六本コース2310円

晩鶏六本コース2310円より、左上から時計回りに、野菜串一種、もも、団子、手羽、ささみ、レバー
均一に焼くため厚みなどフラットになるよう串打ち。ササミはほんのりレアでやさしい味わい。団子は名物のひとつで、主に使うのは骨周りの肉。マグロに例えると中落ちの部位で奥深い旨み。炭の配置で作る火力の強弱を使い分け熟練の技で焼く。希少部位も揃う

とりわけ団子が圧巻だ。丸鶏を捌く際にこそげ取る骨周りの肉など7種の部位を使うそれは、むちむちっ、コリッ、じゅわ~と味わいの三段活用。頬張るや神々しい旨み破裂。そんな美味の神々、西麻布で会えます。

『晩鶏』

[住所]東京都港区西麻布1-14-2疋田ビル1階
[電話]03-6804-1759
[営業時間]17時~23時(22時LO)※政府の要請で変更あり
[休日]日
[交通]地下鉄千代田線乃木坂駅6番出口から徒歩7分

『鳥のかけ橋』@神田

“薪焼き”で身にまとわせた深い香りとオリジナルの創作串

今、焼鳥業界に巻き起こりつつあるトレンドがある。それは薪焼きだ。炭ではなく木材をくべて串を炙るスタイルで、生みの親がこちらの店主· 高橋さん。

炭焼きとの違いは食べればより明確に。まるで燻製にかけたようなぐっと深い香りをまとい、噛むほどに水郷赤鶏をメインとした上質な鶏の旨みを膨らませる。

5本セット1430円

5本セット1430円
この日はワサビと磯海苔をあしらったササミ、ちょうちんのカラスミを乗せた、だきみ(ムネ肉)、粒マスタードを添えた合鴨、プチッと弾けトロリと広がるちょうちん、火入れの技を感じる水郷赤鶏のモモ肉

むろん、炭の焼き物だって負けてはいない。部位ごとに見極めたギリギリの火入れの妙が生きている。加えて鶏のちょうちんから作るカラスミを乗せた「だきみ(ムネ肉)」や、リーキ葱をソリ(腰肉)で巻いた「ソリーキ」などの創作串も面白い。

次はどんな串がやってくるか待ち遠しくなる。

『鳥のかけ橋』

[住所]東京都千代田区鍛冶町2-11-19神田日新ビル1階
[電話]03-6874-9399
[営業時間]17時~23時半(22時半LO)
[休日]月に1度ほど不定休
[交通]JR山手線ほか神田駅東口から徒歩3分

『やきとり母家』@池袋

タレの旨さを再発見させてくれた唯一無二の老舗の味に感動

セットやコースはなく、注文はお好みで2本ずつ。店内は小上がりの座敷に年代物の椅子とテーブルが並んでいる。そうそう昔の焼鳥屋ってこんな感じだったっけ。今年で46年目を迎え、店内はどこもかしこもセピア色に変わったが、色褪せないのが焼鳥の旨さだ。

レバ264円、皮264円
いわいどりのねぎま385円、手羽462円、ササミ286円

【手前の皿】左から、レバ264円、皮264円 【奥の皿】手前から、いわいどりのねぎま385円、手羽462円、ササミ286円
(手前)3度つけ焼きにして艶やかなテリをまとったレバ、皮は脂の甘みをすっきりとしたタレが引き立てる(奥)おだやかに利かせた塩が素材の味を上品に引き立てる

特にタレ焼きはハズせない。初代が全国を巡って研究したという創業以来継ぎ足すそれは、酒との合わせに狙いを定めたすっきりとした辛口。クセのない「レバ」や、パリッと焼かれた「皮」に絡まれば、素材の滋味が倍加する。

となれば日本酒だ。揃えは秋田清酒のボトルに限定し、中でも「刈穂 母家」は同店の焼鳥に合わせて醸されたオリジナル。他では真似のできぬ組み合わせに老舗の底力を見せつけられた。

『やきとり母家』

[住所]東京都豊島区南池袋1-12-6
[電話]03-5950-0377
[営業時間]11時半~13時半LO、17時~23時(22時半LO、土・祝16時~)
[休日]土・祝の昼、日
[交通]JR山手線ほか池袋駅東口から徒歩5分

『やきとりshira(シラ)』@梅が丘

厳選した地鶏と軍鶏 納得の旨さにワインも進む

各駅停車しか止まらない駅に焼鳥好きが通うのは訳がある。そこに『shira』があるから。な~んてカッコつけたけど早い話が旨いってこと。

鶏肉は正肉も内臓系も滋賀の淡海地鶏と静岡の天城軍鶏しか使わないのがこだわりだ。前者は脂のりが良くて旨みが濃厚、後者は歯応えが力強い雄を選択。

おまかせ5本コース1650円

おまかせ5本コース1650円 (コース内容は変更あり) 【手前の皿】奥から、ネギマ、もも、つくね、レバー、手羽先【奥の皿】レバーパテ
ネギマはムネ肉を使用。くるんと中に包んだネギが風味豊か。「本来は旨みが一番強い部位」と店主が言うようにコク強い味わいに驚く。つくねは淡海地鶏と天城軍鶏の両方の数種の部位を店で挽いて使う。コースに入るレバーパテは濃厚な旨み。マスタードがピリッとアクセント

さあ、まずはおまかせ5本を含むコースから始めよう。必ず出るのがつくね。主にモモ筋を配合しており、肉々しく弾む食感は凄みさえ感じる。このつくねをはじめ、部位によって仕上げに黒胡椒を振るのも特徴だ。これがまあ小粋なパンチで。全体の味をグググッと引き締めて掛け算の旨さ。ブラボ~!

『やきとりshira(シラ)』

[住所]東京都世田谷区梅ヶ丘1-22-1 y’sステート地下1階
[電話]03-5450-8808
[営業時間]17時~24時※政府の要請で変更あり
[休日]日
[交通]小田急線梅が丘駅南口から徒歩1分

『上野広小路 鳥恵』@上野広小路

気迫みなぎる職人技の串を小粋なコースで楽しく、美味しく

店主・小澤さんは大塚の名店「蒼天」の創成期を支え、自身の店を構えてから13年を迎えた。端正な串打ちに、銘柄や個体によっても異なる火入れの見極めに、それぞれの部位を引き立てる塩振りに、揺るぎない職人の技と気迫が伝わってくるようだ。

焼ものお任せ7本(コース5500円より)

焼ものお任せ7本(コース5500円より)ササミ、サガリ、銀杏、せせり、ソリのねぎま、レバー、つくねの7串。塩は舌への当たりが柔らかいベトナム産の海塩をチョイス。タレはあっさりと上品な味わいで旨みを引き立てる

使うのは味わいが濃くさらりとした脂が乗った淡海地鶏に、比内地鶏や大山どりを部位ごとに織り交ぜる。コースはそんな串7本に、箸休めのサラダや小粋な一品料理を差し込んで、緩急つけた楽しき構成だ。

さらにデザートのプリンは卵の風味濃厚なパティスリー顔負けの逸品!お腹に余裕があれば〆の「そぼろ丼」(500円)をぜひ追加して。

『上野広小路 鳥恵』@上野広小路

[住所]東京都文京区湯島3-40-8 栗田ビル1階
[電話]03-3836-0211
[営業時間]17時~22時半(22時LO)※土は16時半~
[休日]日(月・水不定休あり)
[交通]地下鉄銀座線上野広小路駅A4出口から徒歩1分

『鳥おき』@学芸大学

店主の真摯な姿勢と技が 味と居心地に反映される

1本筋が通った技も味も接客も、すべてがチキンと、いやキチンとしてる店は何とも気持ちがいい。この店がまさにそれで、店主の姿勢が細部まで宿る。

串はおまかせでも単品でも。素材の良さは当然だが、味に直結するのは塩振りだと店主は言う。鶏に対して縦に落ちるよう振ると均一に行き渡っていい塩梅となる。

さび焼330円、銀杏440円、ぼん220円、砂肝220円、手羽先440円
つくね330円、かしわ330円、いかだ220円、ししとう220円、ちょうちん440円

【奥の皿】かやく440円【中央の皿】左から、さび焼330円、銀杏440円、ぼん220円、砂肝220円、手羽先440円【手前の皿】左から、つくね330円、かしわ330円、いかだ220円、ししとう220円、ちょうちん440円
使うのは脂と旨みのバランスがいい三重「伊勢赤どり」

タレは基本3度付け。1回目で味付け、次に色付け、仕上げと手をかければ嫉妬さえ覚える艶やかさに。

このタレを使う親子丼は常連の切望で5年ぶりに復活したとか。ならば食べずに帰れるか。体重計を投げ捨て(心でね)掻き込めば、炭の香りをまとった鶏と卵の共演に酔いしれる。

『鳥おき』@学芸大学

[住所]東京都目黒区鷹番3-19-14
[電話]03-3714-5135
[営業時間]17時~22時半(21時半LO)
[休日]月
[交通]東急東横線学芸大学駅西口から徒歩5分

『鳥なお』@田原町

串の順序まで心を配ったコースの構成にワクワクが止まらない

焼鳥にはお好みで自由に選ぶ良さ、コースに身を委ねてしまう良さがそれぞれにあると思う。ならばこちらは後者の好例だろう。

注文は「おまかせ」の1本で、この日まずやって来たのが上品なダシを張った鶏団子のお椀。続いて春らしい新筍の炭火焼と、気分が十分盛り上がったとろで焼鳥がスタートする。

おまかせ4800円(串が8本、前菜、小鉢2品、鳥茶漬け又は鳥スープ)

おまかせ4800円(串が8本、前菜、小鉢2品、鳥茶漬け又は鳥スープ)より、左から、正肉、つくね、フリソデ、芽キャベツ
フリソデは柚子胡椒入りの大根おろしを添えている。

「食べ飽きないよう、おだやかな味わいが特徴」(店主)と選んだのが山梨の健味どり。食べ応えを重視して身をぎゅっと詰めて串打ちした正肉に、薬味でさっぱりいただくフリソデと、食感や味の強弱を考慮して串の順番にも心を配る。

前菜から〆までの流れるような構成に楽しき高揚が止まらない。

『鳥なお』

[住所]東京都台東区雷門1-5-9いさよビル1階
[電話]03-3843-5805
[営業時間]17時半~24時(23時LO)土・日・祝17時~23時(22時半LO)
[休日]月、隔週火
[交通]地下鉄銀座線田原町駅3番出口から徒歩2分

『鳥さみ』@亀有

美味しいに加えて懐かしいまでも演出する構成は見事!

都内の名店で研鑽を積んだ店主· 佐美さんが辿り着いた自身の味は、「驚きと懐かしさのある焼鳥」だ。

穏やかな旨みの銘柄鶏にはやや塩を強めにあて、旨みのたっぷりの地鶏には控えめにあてる。しかも、先端と手元では微妙に塩加減を変えるという。食べ進むほどに、同じ串でも味わいの表情が変わる様子に驚かずにはいられないのだ。

串1本200円~350円のストップ制

串1本200円~350円のストップ制、【奥の皿】椎茸【手前の皿】左から、ささみ、そり、ふりそで、つくね
しっとりふっくらと仕上げるササミの火入れに感服。椎茸(どんこを使用)のほか、野菜類は季節で変わる。この時季はししとう、なす、スナップエンドウなどを用意

タレで味付けするかしわは「下町の焼鳥屋さんをイメージ」と、やや甘めの味わいで、しっかりと焼き目をつける。その甘みと焼き目のほろ苦味に、確かに昔はこの味がご馳走だったなと思わせる。

美味しさと原風景を喚起させる構成に、ストップなんてかけられない!

『鳥さみ』@亀有

[住所]東京都葛飾区亀有3-27-15エルブランコ1階
[電話]03-3602-1192
[営業時間]17時半~23時(22時LO)
[休日]日・祝
[交通]JR常磐線亀有駅南口から徒歩2分

撮影/竹崎恵子(ヨシモリ・shira)、鵜澤昭彦(志そ鳥・母家・鳥恵)、大西尚明(とり辰・晩鶏・鳥のかけ橋・鳥おき・鳥なお)、谷内啓樹(鳥さみ)
取材/肥田木奈々(ヨシモリ・とり辰・晩鶏・鳥のかけ橋・shira・鳥おき)、菜々山いく子(志そ鳥・母家・鳥恵・鳥なお)編集部(鳥さみ)

※2022年4月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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