『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。「小雪」の23回目。白菜漬けを手作りし…
画像ギャラリー『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。「小雪」の23回目。白菜漬けを手作りしてみました。
穏やかな冬晴れの日は「白菜干しびより」
二十四節気の一つ、小雪(しょうせつ)は、その年、野山に雪が初めて降る頃とされます。11月22日からの2週間ほどの時期を示しますが、東北や北海道の雪だよりを耳にすると、いよいよ冬の到来を感じます。
東京では北風が落ち葉を落とす時期でもありますが、晴れ渡り、風も穏やかな冬晴れの日もあります。そんな日、オイラはたまらなく白菜を干したくなります。まさに「白菜干しびより」。白菜漬けを手作りするためです。
冬場に旬を迎える白菜は、鍋には欠かせなない野菜ですが、オイラにとっては「白菜=白菜漬けを漬けるための野菜」なのです。したがいまして、冬場でなくても年がら年じゅう漬けております。ただし、冬場以外は、少量の白菜を、漬け物器で漬けております。酒も進みますし、混ぜ込んでおにぎりにしても格別のおいしさです。
おいしく漬けるコツは、もちろん塩加減にありますが、その手前には、白菜を天日のもとで干して、白菜自体に風の味(風味)をつけることです。
白菜は大きなものだと、一つ丸ごとで3~4kgにもなる大物野菜です。その重さの9割は水分ということですので、どっしり重い白菜なら2~3リットルほどの水を蓄えている野の恵みなのです。
この水分が、半日ほど天日干しすることでほどよく飛ぶのです。白菜はぎゅっと締まり、甘みもグンとます気がします。さらには、まだまだ蓄えている白菜の水分を塩で引き出し、重石でさらに追い出すなかで、白菜漬けの独特の風味が生まれます。
オイラは昆布をたくさん入れ、赤唐辛子とゆずをきかせた味にしていますが、基本的に使うのは塩だけです。しかし、こんな単純なものがなんともうまいのです。血圧高めのジジイとしては好ましくないことですが、自家製の白菜漬けはほどよい塩加減で、いくらでも食べられます。それほどにあとの引く漬け物なのです。
白菜漬けは漬け物らしい「くささ」が魅力
市販の白菜漬けも食べることはありますが、あれは漬け物とはまったく別物と思っています。否定こそしませんが、「味付け白菜」といった感じではないでしょうか。実際、スーパーなどで売られている白菜漬け商品の使用材料を見てみると、塩だけで漬けられているものはとても少なく、添加物が多用されているものもあります。
いい悪いではなく、本来、塩だけでおいしく仕上がるはずなのに、なぜいろいろな添加物を使うのかといえば、おそらくは商品としての日持ちを長くするためでしょう。白菜漬けは、塩をきつめにしても、そう長くは持ちません。オイラの経験では漬けて2週間がおいしさの限界です。
加えて、スーパーなどの白菜漬けは「におわない」ものばかりです。白菜漬け独特の風味がまったく感じられないのです。
オイラは漬け上がった白菜漬けを冷蔵庫で保存しますが、ジップロックに入れ空気を抜いて密閉し、そのうえで密閉容器の中に入れ保存しています。それでも、わが妻からは、冷蔵庫が「白菜漬けくさい」と、いちゃもんをつけられます。
それほどに白菜漬けは「くさい漬け物」なのです。オイラにしてみれば、このくささこそが白菜漬けの風味。そんな格別なおいしさを求めて手作りしているのです。
もっとも、白菜を何日も漬けていると、乳酸発酵したり、古漬け特有の酸っぱいにおいが出てくる場合もあります。オイラのいう「におい」は、この手のものではなく、あくまでおいしい白菜漬けとしての風味ですので、この点はお間違いなく。
カット白菜を一度漬けで味わう
本格的な白菜漬けの漬け方には、(1)白菜を塩漬けにする(下漬け)。(2)塩漬けの白菜を取り出して味をつける(本漬け)という「二度漬け」のものもありますが、オイラのやり方は、塩漬けの際に味つけもしてしまう「一度漬け」です。しかも、丸ごとの白菜からではなく、スーパーで売られている4分の1にカットされた白菜を使います。
それほどの長期保存もしませんし、漬ける場合も白菜1~2個ですので、やや手抜きの漬け方かもしれません。それでも、昆布とゆずをこれでもかと使うことで、白菜の漬け物らしい、どっしりとした旬の風味が満喫できます。オイラの漬け方をご紹介いたします。
●白菜漬けの漬け方(下準備編=白菜2個分での漬け方)
1)丸ごとの白菜2個分(カット白菜8個)が収まる容器と、重石(おもし)を準備する。重石は干したあとの白菜の重さの2倍以上のものを用意する。※オイラはホウロウ製の10リットル容器を使っています。
2)白菜は4分の1に切り分けられたものを、8個(丸ごとの2個分)用意する。※買う時には、その日にカットされたものかを必ず尋ね、その日にカットされたものだけを求めましょう。丸ごとの白菜の場合は4分の1に切り分けますが、かなり長めの包丁が必要となります。
3)白菜はよく水洗いする。
4)水洗いした白菜はザルなどにのせ、半日ほど天日干しする。※したがって、白菜を買い求めるのは、晴れた日の朝とするのがベストです。天日干しの際は、1~2時間おきに面を返し、まんべんなく日が当たるようにしましょう。
●白菜漬けの漬け方(漬け込み編)
1)白菜漬けに使う塩は、干したあとの白菜の重さに対して、2.5%ほどの粗塩を準備する。※今回は4分の1にカットされたやや小ぶりの白菜8個分で、重さは合計3326g。用意した粗塩は84gです。
2)天日干しした白菜から、大きめの外葉2~3枚をはずし、それぞれの葉の間に粗塩をすり込んでいく。
3)粗塩をあらかたすりこんだら、葉の間に洗った板昆布(幅5cm×長さ10cmくらい)を差し込み、同様に赤唐辛子を2本ずつはさみ込む。
4)用意した容器の底に軽く粗塩をふり、その上に粗塩をすり込んだ白菜を入れ、重ねていく。最後にはずしておいた外葉で白菜全体を覆うようにのせる。※10リットル容器なら、カット白菜を2個ずつ並べ、4段重ねで8個が収まります。
5)白菜を容器に収めたら、風通しのよい場所に置き、白菜の重さの2倍強の重石をのせる。※今回は白菜3326kgでしたので、7kgほどの重石が理想です。
6)漬け込み後、1~2日で白菜から水が上がってくるので、輪切りしにしたゆず2個分を白菜の間に入れていく。※ゆずを最初から加えないのは、白菜に塩を十分にいきわたせるためです。
7)漬け込み後3~4日目くらいで重石をはずし、白菜がしんなりしていたら漬け込み完了、白菜漬けの出来上がり。軽くしぼってから、食べやすく刻み、細切りにした昆布、赤唐辛子、ゆずを添える。
8)漬け上がり後の白菜は、昆布などが入った状態でジプロックなどの保存袋に入れ、冷蔵庫で保存する。※経験上、2週間以内に食べきりましょう。保存袋に入れる際は、できるだけ空気を抜くようにしましょう。
文・写真/沢田 浩
さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社
画像ギャラリー