我が青春のラーメンはコレだ!バブル期にすすった“熱い一杯”東京11軒

『赤のれん』 @西麻布 西麻布界隈で遊ぶ人々を癒し続ける老舗 1978年オープンという、東京における博多とんこつラーメンの草分け。餃子はラーメン店では珍しく、名物の「水餃子」400円のみ らぁめん 800円 [住所]東京…

画像ギャラリー

20世紀にはバブル期があった。そしてラーメンバブルもあった。そんな時に食べた、あの熱い一杯。『おとなの週末』ライター・カーツさとうが、時を経て今、ひさかたに味わえば…ああ蘇る、あの時代、あの喧騒。ラーメンは時代の記憶も蘇らせる。

ラーメンの香りはプルーストのように

昔はよく喰ったなぁ、朝まで呑んで最後に食べる『締めのラーメン』ってヤツ。“昔”っつっても、自分ではつい数年前のことだと思ってたんだけど、還暦直前のオレが20代だったバブル時代の話なんで、おいおいもう40年近くも前の話じゃないかよ!

その頃よく行ったラーメン屋さんにも、そういやとんと行ってない。ここはひとつ、還暦前に昔を懐かしんで、バブル期にすすったラーメンを今一度我が胃袋に!!と食べ歩いてみた。

バブル期前夜の80年代初頭。出版業界で仕事をし始めたオレが、年長の編集者と呑んだラストに「最後にラーメンでも行く?」と朝の6時頃に誘われ、「こんな時間にやってんのか?」と驚きつつ、初めて朝の締めラーメンを食べた店が千駄ヶ谷の『ホープ軒』だった。

その店に30年ぶりくらいで入った。入った瞬間、「そうそうこの匂い!!」と、あのイイ意味で獣感あるスープの香りというより匂いを久しぶりに嗅いだ瞬間、昔のことが今のように思い出された。それはまるで、プルーストの『失われた時を求めて』で、マドレーヌを食べた主人公に昔の記憶が蘇るかのような体験。実は最近、食べ物で昔の記憶が蘇ることがたまにあるのだ。

そして今回のラーメン店歴訪では、『ホープ軒』に限らずそんな記憶の蘇りが続けざまに頻発!!『ホープ軒』で思い出したのは、にんにくと豆板醤が、業務用のボトルのままカウンターに置かれている光景。大胆だなァ〜と思いつつも最初は遠慮して使ってたが、そのうち使用量がエスカレート。豆板醤はある程度入れても旨いが、調子に乗ってレンゲに山盛り3杯入れると味がわからなくなることを学んだ。

そして店から出ると、いつも旧国立競技場越しの朝日が黄色く見えて眩しかった。バブルの絶頂期には、六本木の『香妃園』の「鶏煮込みそば」でもよく締めた。その頃、確か新聞で立川談志が「『香妃園』の鶏煮込みそばが好きだ」と言っている記事を読んだ記憶が蘇ってきた。

ただ記事はまだ続き、談志師匠曰く「だがあの煮込みそばは家でも似た味を作れる。サッポロ一番塩ラーメンにスープと共に鶏肉と青菜も入れて15分煮る。それが立川流鶏煮込みそばだ」だそうで、真似したら本当に似ていた。それを知ってから今回まで食べてなかったわ、この店で。

同じ六本木でよく行ったのが『天鳳』。店内メニューの“ビールは一人1本まで”の文言を見て、思い出した。知人がビールの2本目を頼んで断られた。「このケチ」と捨てセリフを残して店を出た知人。出たとたんに踵を返してまた入店。「新客だ、ビールくれ!!」と注文して、店主と喧嘩になってたなあ。

20代の頃、毎晩のように遊んでいたのは西麻布だった。『ピカソ』や『トゥールズバー』といったクラブで踊った後、元祖カフェバーの『レッドシューズ』で朝まで呑む定番コースの合間に、『かおたん・らーめん』にも何度が行ったことがある。

だがツマミで呑んだことは思い出しても、なぜかラーメンの記憶は蘇らなかった。そうだ! あの頃はラーメンと言えば『レッドシューズ』の「海苔らーめん」を食べて締めていたのだ。懐かしい……。

『ホープ軒 千駄ヶ谷店』 @千駄ヶ谷

24時間営業という天下無敵

昔は1階の立ち食いスペースだけだったが、現在は2、3階にテーブル席も構える巨大店舗に。入れ放題のネギのカットも大胆

ラーメン 950円

『ホープ軒 千駄ヶ谷店』ラーメン 950円
『ホープ軒 千駄ヶ谷店』

[住所]東京都渋谷区千駄ヶ谷2-33-9
[営業時間]24時間営業
[休日]無休
[交通]都営大江戸線国立競技場駅A2出口から徒歩5分、JR総武線千駄ヶ谷駅から徒歩10分

『香妃園』 @六本木

六本木深夜族を今も支え続ける

博多の鶏の水炊きを中国風にしたかのような味わいのスープ。ソフトな麺は深夜の胃にもやさしい。「肉春巻き」は2本で600円

特製とり煮込みそば 1500円

『香妃園』特製とり煮込みそば 1500円
『香妃園』

[住所]東京都港区3-8-15 瀬里奈ビレッジ2階
[営業時間]11時45分〜翌4時
[休日]日
[交通]地下鉄日比谷線六本木駅B5出口から徒歩2分

『天鳳』 @六本木

店舗前のドラム缶に引き寄せられる

“麺硬く・油こく・しょっぱく”を意味する「1・3・5」を呪文のように唱えて注文する客が多いのは昔のまま。現在深夜営業なし

ラーメン 900円

『天鳳』ラーメン 900円
『天鳳』

[住所]東京都港区六本木7-8-5 ロック&ロックビル1階
[営業時間]11時〜21時
[休日]日
[交通]地下鉄六本木駅7番出口から徒歩3分
※店内撮影禁止だがラーメンのみの撮影はOKとのこと

『かおたん・らーめん(エントツ屋)』 @西麻布

林立する煙突 本物もあるのか?

こっくりとした醤油味のラーメンは、看板に寄れば中国福建省のスープ。ラーメン以外にも料理やお酒も豊富。「餃子6ヶ」640円。

ラーメン 800円(+味付玉子 120円)

『かおたん・らーめん(エントツ屋)』ラーメン 800円(+味付玉子 120円)
『かおたん・らーめん(エントツ屋)』

[住所]東京都港区南青山2-34-30
[営業時間]11時半〜翌5時(金・土は〜翌6時)
[休日]日
[交通]地下鉄千代田線乃木坂駅5番出口から徒歩5分

ラーメン食べつつ喧嘩する 愛の行く末

西麻布『赤のれん』は実は行ったことがない。『おとなの週末』編集・武内が昔よく行っていたらしく、今回、初めてふたりして行ってみることに。この店が提供するラーメン……九州の豚骨ラーメンを初めて見たのは40年前。渋谷の東急ハンズの横に、たしか『ふくちゃん』という店がオープンしたのだ。

驚愕した。だってラーメンのスープが白いんだもん。東京生まれの人間は、当時そんなラーメンを見たことがないからね。どんな味?と思ってスープをすすれば、初めて味わうまろやかな濃厚さに二度目の驚愕。放射状に仕切られた円形の薬味入れがあり、辛子明太子が入れ放題で三度目の驚愕もしたのだった。

バブル期の行列ラーメンとして忘れちゃならないのが恵比寿の『香月』!カウンターに並んだ客全員の麺の硬さなど細かいオーダーも全部覚える店員さんが有名だったが、バブル以前は、明治通り沿いの恵比寿と渋谷の間辺りに店舗があって、初めて食べたのはそっちのお店だったな。

オレと先輩ライター、そしてその先輩の彼女の3人で食べたのだが、なぜかその先輩と彼女が店内で大喧嘩を始め、おしぼりを投げ合いだした。しかし、食べ終わるとふたり仲良く帰っていった。ラーメンも恋も熱い時代だった。

『一心ラーメン』。昔は今の店舗と外苑東通りを挟んだ反対側にあった気がする。当時、看板にある麺が“日本一細い”ってことについて「他の店も細い麺を出し始めると、負けじとどんどん細くなる。最終的には裸の王様みたいに、麺がまったくない丼を出して『これが一番細い麺です』ってことになる」と語っていたのは、いとうせいこう氏であった。

世田谷代田の伝説の繁盛店『なんでんかんでん』は紆余曲折を経て今、西新宿にある。そこでラーメンを食べ、世田谷の店に取材で伺った時のことを思い出した。

白ブリーフ一丁でラーメンを食べる『ラーメン男爵』とかいうヒドいキャラクターに無理矢理仮装させられて入店した。すでに時の人だった川原社長も在店していたが、そんなとんでもない格好のオレに、あんな有名人が快く接してくれて、あ〜この人は器がデカいと心底思ったなァ〜。

90年代初頭。バブル景気は崩壊した。しかしその後、ラーメンブーム的なものがあり、ラーメンバブルがやって来た。すでに港区で遊ぶことが少なくなったオレは、中目黒でよく呑むように。その締めに行ったのが『百麺』だった。

そういえばもう一軒、中目黒でよく行ったラーメン屋があった。東横線のガード下にあった、今は陰も形もない『夕焼けラーメン』という店。友人は、そこでラーメンを食べると「哀しい気分になってくる」と言っていた。理由は「店名が『夕焼け』だから…」だと。彼の幼少期に一体何があったのだろう…。

恵比寿の『ちょろり』も今回初入店。こちらも編集武内が昔よく行ったという。気付いたのは、炒飯を食べる人がやけに多いのね。それもラーメンとセットで食べてる。自分も若い頃は、そのくらい食べられたかもしれないが、今は完全に無理。このラーメンの食べ歩きも終盤に差しかかり、老化というものをも痛感しだしてきた。

『九十九ラーメン』は、出てくるラーメン自体がいまだバブルっぽい。なにしろ粉チーズが山盛りかかってんだもん。この店に初めて行った時は、知り合いの編プロの社長と一緒だった。その社長はフィリピンパブの女の子ふたりを引き連れてやって来ていた。チーズが溶けトロッとなったラーメンの意外な旨さに感嘆しつつ、バブルが残ってる人はまだいるんだ…と思った。

そして!今回食べたラーメン店も、今だに残ってる。かつてのように行列がなくともいい感じで店は回ってる。還暦過ぎてもあと少々生きる!!細いが切れないラーメンの麺を見て、そう自分に誓うのだった。

『赤のれん』 @西麻布

西麻布界隈で遊ぶ人々を癒し続ける老舗

1978年オープンという、東京における博多とんこつラーメンの草分け。餃子はラーメン店では珍しく、名物の「水餃子」400円のみ

らぁめん 800円

『赤のれん』らぁめん 800円
『赤のれん』

[住所]東京都港区西麻布3-21-24
[営業時間]11時〜翌5時
[休日]日
[交通]地下鉄日比谷線ほか六本木駅1c出口から徒歩10分

『らーめん香月 池尻大橋本店』 @池尻大橋

豚背脂が浮くもクッキリした輪郭

一時期は姿を消していたが2016年に復活。現在は本店以外に代々木公園、沖縄県の宮古島と名護にも。「ザーサイの浅漬け」300円

醤油らーめん 900円

『らーめん香月 池尻大橋本店』醤油らーめん 900円
『らーめん香月 池尻大橋本店』

[住所]東京都目黒区大橋1-2-5 新村ビル1階
[営業時間]11時〜23時
[休日]不定休
[交通]東急田園都市線池尻大橋駅南口から徒歩7分

『一心らーめん』 @四谷3丁目

あのトカゲ以上に続いてるブーム!

“日本一細麺”と輝く看板に大きく書かれた麺の細さに納得し、エリマキらーめんの海苔の数に喜ぶ、スッキリした醤油味ラーメン

エリマキらーめん 950円

『一心らーめん』エリマキらーめん 950円
『一心らーめん』

[住所]東京都新宿区荒木町9-24
[営業時間]18〜23時半
[休日]日・祝
[交通]地下鉄丸ノ内線四谷3丁目駅4番出口から徒歩4分

『なんでんかんでん』 @西新宿

あの伝説の店 新宿にカンバック

時代を虜にしたラーメンの味は変わらぬが、九州屋台料理や本格焼酎などラーメン以外の選択肢激増。「博多丸天」は300円

ネギばかラーメン 1000円

『なんでんかんでん』ネギばかラーメン 1000円
『なんでんかんでん』

[住所]東京都新宿区西新宿7-9-15 1階
[営業時間]11時〜22時半LO
[休日]無休
[交通]都営大江戸線新宿西口駅D5出口から徒歩2分

『百麺』 @中目黒

醤油豚骨&太麺 迫力の味は健在

横浜家系ラーメンにも似たスタイルだが、細麺なども選べる。ランチタイムには、餃子3個とミニ飯を250円で付けられる

らーめん(太麺) 780円

『百麺』らーめん(太麺) 780円
『百麺』

[住所]東京都目黒区青葉台1-30-6
[営業時間]11時半〜24時
[休日]無休
[交通]地下鉄日比谷線中目黒駅東口から徒歩3分

『ちょろり』 @恵比寿

駅から歩くが なぜか通ってしまう

ラーメン以上に「炒飯」850円が人気なのは本文でも触れたが、「腸詰」550円などのつまみで酒を呑んで過ごす客も多し

ラーメン 650円

『ちょろり』ラーメン 650円
『ちょろり』

[住所]東京都渋谷区恵比寿4-22-11
[営業時間]11時〜23時(売り切れ次第終了)
[休日]日
[交通]JR山手線ほか恵比寿駅東口から徒歩7分

『九十九ラーメン』 @恵比寿

チーズ+ラーメン 七不思議的に旨し

トマトチーズラーメンは、もはやラーメンを越えた域で完成した料理。「手作りパリパリ餃子」3個320円も完成した味でした

○究トマトチーズラーメン 1200円

『九十九ラーメン』○究トマトチーズラーメン 1200円
『九十九ラーメン』

[住所]東京都渋谷区広尾1-1-36
[営業時間]10時〜翌3時
[休日]無休
[交通]JR山手線ほか恵比寿駅西口から徒歩7分

写真・文/カーツさとう

※2023年2月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

『マツコの知らない世界』で「おにぎりの世界」特集 『おとなの週末』おススメの「絶品おにぎり」情報をご紹介!

具材の旨みたっぷり!とろ~りあったかな「あんかけラーメン」のオススメ8選

濃厚なのに食べやすい!? 進化した「おとなの家系」ラーメン4軒

第3次ブーム到来!おとなの週末厳選「今食べるべき」つけ麺4選

おすすめ記事

神戸から届いた熱々のトロけるチーズケーキとは?女優・大野いとのお取り寄せ実食リポート

「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」で“ネオ酒場”巡り 昼飲みにおすすめの3軒

ひと口食べれば「コンソメパンチ」ならぬ「エビ旨みパンチ」炸裂!! 『元祖海老出汁もんじゃのえびせん 渋谷ストリーム店』

この食材の名前は? お雑煮には欠かせないけど旬は春

東京駅ナカでクラフトビールを飲み比べ!『BEER HOUSE 森卯』自慢の溶岩石グリルは個性派ビールと相性抜群◎

「松任谷由実」初のベスト盤『ノイエ・ムジーク』 松任谷正隆の“ミリ単位”までこだわったアレンジがすばらしい【休日に聴きたい名盤】

最新刊

「おとなの週末」2024年5月号は4月15日発売!大特集は「銀座のハナレ」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。4月15日発売の5月号では、銀座の奥にあり、銀…