東京路線バスグルメ

ガンダムを訪ねて“アニメのまち”へ 幸せの頂きへ導く香り深い醤油ラーメン 東京路線バスグルメ・アニメ聖地巡礼編(5)

上井草駅前にあるガンダムのブロンズ像

現在のサンライズがある「荻窪」へ到着 さぁミュージアムを満喫したらバス停に戻り、いよいよ荻窪へ。青梅街道を都心方面に走り、荻窪駅前のロータリーに右折して終点、でした。 ここの線路を潜る地下道に、ガンダムのポスターが貼り出…

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小説『バスを待つ男』などの著作がある作家の西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。西村さんが執筆する「おとなの週末Web」の好評連載「東京路線バスグルメ」の新シリーズ。名店に巡り合った第1弾、そして商店街編、武蔵野編に続く第4弾は「アニメ聖地巡礼編」です。日本アニメ史に名を刻む傑作にゆかりのある街を歩きます。

「上井草」ガンダムはこの場所で生まれた

バスグルメ「アニメの聖地巡り」編もいよいよこれで最終回。最後のテーマは、『機動戦士ガンダム』です。

宇宙がメインのSFなのに聖地なんてあるの、って? あるんですねぇ、それが。

てなわけでやって来ました、西武新宿線の上井草駅(東京都杉並区)。アニメ制作会社「日本サンライズ」はここにあったんです。まぁその後、色々あって現在ではバンダイナムコフィルムワークスのアニメ制作ブランド「サンライズ」になってるけど。最初のガンダムを制作した頃は、ここにあったのは間違いない。

上井草駅でホームに降りると、列車の発車サイン音としてテレビ版『ガンダム』の主題曲が流れる。それも下りはサビの部分、上りは出だし、と使い分けられてる。これ、第1回の西武池袋線・大泉学園駅(練馬区)や第4回の京王線・聖蹟桜ヶ丘駅(多摩市)と同様ですね。鉄道会社、やるなぁ。これだけで「聖地感」、湧き湧きになってくれる。

この駅に降りるの初めてで、来てみて分かったんだけど駅の構造は「相対式ホーム」。上りと下りホームにそれぞれ改札が付いていて、互いに行き来ができない。なので曲がちゃんと使い分けられているか、向かいのホームの方に耳を澄まして確認しましたよ。

次の上り便が来るのを待つ間、ホームをぶらぶらしてたら壁に「アニメのまち上井草」ってポスターが貼ってあるのを発見。待った恩恵でした。

アニメのまち上井草

駅改札の目の前に、ガンダムのブロンズ像

曲を確認して改札を出たら、いきなり目の前にはガンダムのブロンズ像が立ってた。実物大ガンダムを見るため東京お台場、横浜、静岡、福岡と回ってきた私だけど、ブロンズ像は全国でもここだけじゃないかなぁ? もうこれで「聖地感」、最高潮ですね。

上井草駅前にあるガンダムのブロンズ像

いい気分で上井草商店街に入ると、いきなり右手のクリーニング店に『ガンダムSEED DESTINY』のポスターが貼ってあった。第2回『あしたのジョー』の時もイラストが貼ってあったのは、クリーニング店でしたよね。クリーニング屋さん、ってアニメを応援する何か動機でもあるんでしょうか? ただし残念なことに、閉店してるみたいですけども。

クリーニング店のシャッターに描かれたガンダム

ここでサンライズ、初代本社時代の住所をあらかじめ調べてあったので、地図で検索してみる。そしたら何と、このクリーニング店の隣のビルでしたよ! 2代目本社に移ったのは1996年10月だから、最初のガンダムが作られた時(1979年)はここ、だったことになる。いやぁあの名作が生まれた地、と思うと感慨もひとしおですなぁ。聖地に来てみる意味とはこういうところにあるんですよ。

サンライズの初代本社のあった場所

続いて2代目本社のあった場所に行ってみる。実はここから歩いてすぐ。どころか、ほんの1ブロック離れただけのところでした。

サンライズの2代目本社のあった場所

こっちが2代目本社の入っていたビル。斜め前のお店のシャッターには、ガンダムのイラストが描かれた。

2代目本社が入っていたビル斜め前のお店のシャッターに描かれていたガンダム

途中下車して「杉並アニメーションミュージアム」を訪問

例によって「バスグルメ」と言いながら、また全然バスに乗ってないじゃん、って? いえいえ乗るんです、これから。実はサンライズ、2代目本社から更に引越し。2021年に荻窪(杉並区)に移ってるんです。だからそこまで、バスに乗って移動しようというわけ。

山手線の西側って、鉄路が放射状に延びていてその間を、バス路線がアミダくじの横棒のように繋いでる。だからこういう場合、バスを利用して移動するのが最適なわけです。

「荻14」系統に乗車

まるでスペースコロニー「サイド7」から、地球に帰還する宇宙戦艦ホワイトベースみたいですなぁ。すると上井草がサイド7で荻窪が地球、これから乗る西武バス「荻14」系統がホワイトベースってこと? そう思うとワクワク感がより、高まる高まる。

上井草と荻窪を結ぶ路線バスは他にも、「荻15」系統とかあるんだけど、そっちに乗ってはいけない。それでは「荻窪警察前」を通らないからだ。そう、今回はここで途中下車。「杉並アニメーションミュージアム」があるからなんです。

杉並アニメーションミュージアム

ここは東京工芸大学が運営してる施設で、アニメの歴史から現状、将来像までアニメ全般に亘って展示・紹介されている。説明によるとアニメ制作関連会社は全国に811社あって、その内149社が杉並区にある(2020年の調査より)んだって。もちろん市区町村として日本一。だからここにアニメ博物館がある意味は充分ある、ってわけです。

すぐ近く、青梅街道沿いの「八丁通り商店街」には、ガンダムを始めとするアニメフラッグが街灯ごとに掲げられてましたよ。いやぁ文字通り「アニメの町」!

八丁通り商店街

ミュージアムの目の前には旧上荻窪村の総鎮守、荻窪八幡神社が鎮座している。旅の成功を祈念してお参りしてからいざ、施設内へ。エレベーターで3階に上がると目の前が受付。右手に『NARUTO』のポスター、左手にガンダム、斜め前には『ハクション大魔王』がお出迎えしてくれてました。これまたテンション、上がる上がる。

荻窪八幡神社

特別展示は間もなく映画最新作が上映されるということで、「ドラえもん展」をやってました。受付や、アニメの歴史など常設展示のある3階から階段を上って、中4階へ。そこには2体のドラえもんと、映画の歴代ポスターをまとめたポスターがドーンと貼り出されてた。1980年からほぼ毎年製作されていて、今回でシリーズ42作目なんだって。スゴいね!! 連載開始が1969年で、私も小学校1年から小学館の各学年雑誌でずっと読んでたものなぁ。歴史の重みを感じます。

現在のサンライズがある「荻窪」へ到着

さぁミュージアムを満喫したらバス停に戻り、いよいよ荻窪へ。青梅街道を都心方面に走り、荻窪駅前のロータリーに右折して終点、でした。

荻窪駅で降車

ここの線路を潜る地下道に、ガンダムのポスターが貼り出してある、とネットに書かれてた。荻窪は何度も来てるので、あの地下道だな、と見当がつく。

ところが行ってみたら、貼り出されてたのはドラえもんでした。まぁミュージアムでもそうだったけど、映画の最新作公開間近ですものね。それにここ、サンライズのみならず、バンダイナムコフィルムワークス全体の本拠地にもなってる。バンダイはドラえもんの番組スポンサーを何度も務めてるので、ガンダムから貼り替えられたのも自然な流れだったんですね。

荻窪の地下道

さぁ線路のこっち側に来たら、ここに来なきゃ。あの『東池袋大勝軒』も傘下の「丸長のれん会」。その総本山『丸長』本店がここなのです。荻窪ラーメンの象徴の一つですな。

丸長

写真に撮ってから、本題に戻る。サンライズ3代目の本社はどこかぃな、と住所を地図検索したら、何と『丸長』の横に立つビルでした(笑)。これも縁、なんでしょうか?

現在のサンライズがあるビル

昭和6年創業、ラーメンの街の老舗中の老舗

さぁ目的を果たしたらいよいよグルメに移りましょう。ガンダムとは何の関係もないけど、やっぱり荻窪と言えばラーメンでしょう。

青梅街道沿いの『春木屋』。常に行列の絶えない人気店として、さっきの『丸長』と並ぶ荻窪ラーメンの代表ですが、今回は違うとこに行きます。青梅街道から北へ路地をちょっと入ったところにある、『春木家本店』。何と昭和6年創業という、銀座の『萬福』(昭和4年創業)と並ぶ現存する東京最古級のラーメン店なのですよ。実は『春木屋』とは親戚筋なのだという。

春木屋
春木家本店

中は小ぢんまりながら清潔な店内で、メニューもラーメンに限らず蕎麦や饂飩(うどん)に、酒のつまみも豊富。と、言うより元々は蕎麦屋で、そこがラーメンも供し始めたということなんでしょう。表の看板にもラーメンと並んで、せいろ蕎麦がドーンと写ってましたし、ね。

実は、ちょっと迷った。さすがにラーメンではガンダムとは関係がなさ過ぎる。サンライズにちなんで「月見そば」なんてのもアリか(まぁ日と月の違いはあるけれど)、なぁんて考えてたのだ。

ところがメニューを見てみると、「玉子とじ」はあっても「月見」はないみたい。もうこうなったらこれしかない、と「中華そば」(720円)を注文しました。そうしたら出てきたのが、これですよ。もう見るからにあっさり。魚介ダシの香りがほわ〜ん、と漂う東京醤油ラーメン。

春木家本店の「中華そば」

海苔が三角に切ってあるのは何でなんでしょうねぇ(笑)。『萬福』も何故か三角に切った薄焼き卵が載ってるし。東京ラーメンの老舗って、三角にこだわりでもあるのでしょうか? まぁさっきのクリーニング屋さん同様、答えの出ない疑問ですけど。

考えてみたら『丸長』も、長野出身の蕎麦職人が始めたものだった。魚介ダシが荻窪ラーメンの特徴なのは、ルーツが蕎麦屋というところに理由があるのだ。ここもまたそう、ということ。

それに今日、最初はガンダム尽くしだったけど後半、次々と巡り会ったのはドラえもんだった。藤子不二雄センセの漫画と言えば名物キャラが、いっつもラーメン食べてる「小池さん」ですものね。ほぅら結局、テーマと食べ物がこんなところで結びついちゃったじゃないですか。
細目の麺を啜(すす)ると、深い香りのスープが絡んで口に飛び込んでくる。幸せの頂きへと導いてくれる味。ひたすら美味に没頭してる内に、最後の一滴まで飲み干してしまってました。あぁ、極楽。ご馳走様でしたっ!!

「アニメの聖地巡り」をテーマにした短期連載は、これにて終了。また新たなテーマを定めて、「東京路線バスグルメ」は帰ってきます。

それまで気長にお待ち下さい。さぁ、次のテーマは何にしようかなぁ??

2月13日に85歳で亡くなった漫画家・松本零士さんのこと

この聖地巡りの後、2023年2月20日に“我が神”松本零士御大の訃報が伝わってきました。連載第1回で「一日でも早く、またお元気になられたお姿を拝見したいものです」と記したばかりだったのに……。いつか、時の環の彼方でお目に掛かれる日を、静かに待つことに致します。

【『機動戦士ガンダム』のストーリー】
スペースコロニーへの宇宙移民が開始されて半世紀が経った、未来。地球から最も離れたコロニー「サイド3」は「ジオン公国」を自称し、地球連邦に独立戦争を仕掛けてきた。使われる兵器は人間が乗り込む巨大ロボット、モビルスーツ。

地球連邦は最新モビルスーツ「ガンダム」を極秘製造するが、その現場「サイド7」もジオン軍の襲撃を受ける。主人公の少年アムロ・レイは偶然、ガンダムに乗り込みマニュアルを見ながら、何とか敵の攻撃を躱(かわ)す。だがこの攻撃で連邦軍も痛手を負っており、新鋭宇宙戦艦ホワイトベースは新任士官を艦長代理として、避難民を受け入れ、地球を目指すことを余儀なくされる。

ガンダムを調査したいジオン軍は、執拗に攻撃を仕掛けてくる。アムロを始めとする少年達が、モビルスーツを駆って必死に反撃するが、果たして彼らはこの戦闘の中で、生き延びることができるか……。

『春木家本店』の店舗情報

[住所]杉並区天沼2-5-24
[電話]03-3391-4220
[営業時間]11時〜15時、17時〜21時
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]木曜
[交通]JR荻窪駅北口から徒歩約6分

西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。2023年1月下旬、人気シリーズ最新作『バスに集う人々』(実業之日本社)を刊行。

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